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#9 うちの会社には白いワニもいる HACK#3 新人くんの社内調整<【小説】オフィスハック>

2018年5月17日 09時00分


◆9◆

 第一人事部から受け取った追跡資料をもとに、おれと三浦は社内行方不明者の捜索を続けていた。地下シャッター街からさらに下り、迷宮のような地下道網へとたどり着く。ここは地下鉄系の事業者からT社がまとめて買い取ったエリアで、この辺りに食堂街を作ろうとしていたらしいが、主導権を持っていた部署が統廃合によって消滅し、以降完全に放置されている。つまり、完全にクソだ。

 電灯や非常灯もどんどんまばらになり、等間隔に置いてあるドリンク自販機の明かりだけが救いだ。それにしてもこの会社は、なんでこんなに自販機がたくさんあるんだろうな。

「香田さん、さっきの話なんですけど」

「ん?」

「本当にワニがいたんですか?」

「地下下水道のワニの話か? 本当だよ」

 三浦が訝しむのも無理はない。あれは正気を疑うような事件だった。

「いいか、経緯はこうだ。港区のマンションで一人暮らしをするT社グループの奈良崎事業部長ってのがいた。こいつは元々連れ込みセクハラ関連で黒い噂が立ってたんだが、なかなか尻尾が掴めなかった。それで奴も、気がでかくなったんだろう。奈良崎は持て余したカネで、アルピノイリエワニの子供を何匹も自宅で飼い始めた。たぶん、連れ込んだ女性社員に自慢するためにな。最初は良かったが、そのうち飽きたのか、それとも日に日に大きくなるワニを持て余したか何かで、奈良崎は一匹ずつでかいバッグの中に入れてワニを会社に運び込み、地下下水道に放流していた。

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