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登りやすい山にはしない 第45回<本屋の時間>

2018年9月15日 09時00分
撮影:齋藤陽

「(本が読まれなくなったといわれるいま)辻山さんは本を読んでいない人に向けて、何かやっていることはありますか?」と聞かれることがあります。自分では毎日店を開けて、その日入ってきた本の紹介をコツコツ行うことが、回り回って本のファンを増やすことにも繋がっていると思うのでそのようにお話しすると、「でもそれは〈すでに読んでいる人〉に向けてのことですよね。普段本を読まない人に向けてやっていることをお聞きしたいのですが……」となおも聞かれます。

 わたしは〈読まない大人〉に対して、「もっと本を読みましょう」と語りかけたことはほとんどありません(もちろんそうなればよいと思っていますが)。本は人に言われて読むものではなく、いま本を読んでいない大人が、誰かに言われて読むようになることはあまりないと思っているからです。それよりは直接はそう言わなくても、本と楽しそうに関わっていれば、「何か面白そうだ」とその魅力に気がつく人も増えてくるのではないかと思います。

 読んでもらうために、簡単に読みやすくした本を見かけたことのある人は多いでしょう。名著を漫画で読み、10分でビジネス理論をわかることは、本を読みなれない人にとってはいいかもしれませんが、本の敷居をわざわざ下げて「こんなに簡単ですよ」とへりくだることが増えてくれば、何か失うものもあるように思います。

LittleBee80/iStock

 山に親しむために、ハイキングコースからはじめる人は多いと思いますが、ある程度山の魅力をわかってくれば、自然と意識はその先にある高峰に向かうようになります。

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