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“人類最後の職業”はプログラマーだ――プログラミングを学ぶ意味とは

2017年6月14日 07時00分 (2017年11月8日 16時01分 更新)

 AI時代の到来が叫ばれるようになり、“プログラミング”という言葉を耳にする機会が増えてきた。しかし、「プログラミングが重要だ」と言われても、漠然としていて何だかよく分からない、という人が多いのではないだろうか。プログラミングを学ぶことにどのような意味があるのか、カドカワ株式会社代表取締役社長の川上量生氏が解説する。
(出典: 文藝春秋オピニオン 2017年の論点100 )


■プログラマーが“人類最後の職業”に

 私はコンピューターのプログラミングを義務教育に取り入れるべきだと考えています。それは、プログラマーが〝人類最後の職業〟になりうるからです。プログラミングをマスターしていれば、世界中どこに行っても食いっぱぐれることはないという「実益」が第一の理由です。


 進駐軍の時代なら、英語ができる人間は、より有利にビジネスを進めることができました。今の時代であれば、プログラミング言語ができて有利になる世界のほうが広いでしょう。


 人工知能はどんどん進化しています。恐らく世の中にある仕事のほとんどが今後、人工知能でカバーできるようになるでしょう。それはかつて手工業で作っていた品々を機械が作るようになったのと同じようなものです。従来は機械化が難しいと思われていた熟練した職人のノウハウも人工知能が得意なものとして置き換わっていくでしょう。官僚が行っている仕事や医者による病気の診断なども人工知能がとってかわる可能性が高いです。


 ただ、税理士や会計士という職業は、生き残るかもしれません。税務申告や会計処理はルールが多く複雑なので、仕事自体は人工知能が得意とするところです。しかし、そのような仕事を職業とする場合には資格の取得が義務づけられています。人工知能がいくら発達していても、こうした法律で保護されているような職業は、なくならないのでしょう。


 究極的には人間の仕事は儀礼的なものしか残らなくなる可能性があります。ただし、過渡期においては、人間の仕事を肩代わりしてくれる人工知能に指示を出す人間が必要になります。それがプログラマーです。ですから、プログラミングは人間がおこなう最後まで残る仕事のひとつになるでしょう。もっとも、プログラミングを全ての人間が学ぶ必要があるかについて異論があるのは当然です。いくら人間にとって最後の仕事だとしても、全ての人類がプログラマーになるようなことは起こらないだろうからです。


■デジタル時代の「コミュ力」を向上させる――プログラミングを学ぶ意味

 プログラミングを学ぶ意味とは、必ずしもプログラマーになるためではなく、コンピューターとのコミュニケーション能力を向上させることにあると思います。プログラミングを覚えることで、コンピューターがどのように動作するかが理解でき、なにが得意で、なにが苦手なのか、いわばコンピューターの“気持ち”を理解して、コンピューターに的確な指示を送れるようになります。


 私たちは、ふだん他者とのコミュニケーションにおいて、常に相手の行動や思考のパターンをシミュレーションしています。それと同じことをコンピューター相手に行えるのが、これからの時代の人間に必須の能力となるでしょう。プログラミングは、デジタル時代の「コミュ力」を向上させるのです。


 プログラミングというのは万人に適性があるわけではありません。ある一定の割合で、いくら教えてもプログラミングが上手くならない、というひとは存在します。それでもプログラミングを必修科目にすべきというのは、プログラミングを学ぶことがコンピューターの動作原理を理解するのにもっとも近道だからです。私たちは、小学生のころ、乾電池と豆電球を使って、電気がどのように流れて、明かりが灯るかを学びました。しかし現在、スマートフォンやタブレットPCがどんな原理で動いているか、理解している人がどのくらいいるでしょうか。最近の電化製品は取扱説明書を見なくても、感覚的に操作できるようになっています。その製品のなかで、どういう作業が行われているのか、まったく分からなくても望んだように動かすことができます。


 しかしそれは機械に人間とコミュニケーションをしてもらっているだけで、人間が機械とコミュニケーションしているとはいえません。ですので、コンピューターの動作速度が突然遅くなったり、動かなくなったりした場合、どう対処すればいいか分からないということが起きるわけです。コンピューターの動作原理を知らないと、メモリがいっぱいになっているだけというような基本的なトラブルでも、素人には何が起きているのか想像ができません。



■プログラミングを義務教育に――コミュ力と論理的思考力を養う

 現代社会に生きる人間は、まわりに溢れているコンピューターの気持ちを理解することでより有利に生活を送ることができます。だからこそ、最低限の動作原理とプログラミング言語を小学生から学ばせるべきだと、私は考えているのです。


 あらゆる企業、あらゆる職業の面接で、コミュニケーション能力というのは、もっとも重要視される指標となっています。それはどのような仕事においても人間との関わりが仕事の中心となっていることがほとんどだからです。これからはコンピューターとの関わりも避けては通れません。コンピューターとのコミュニケーション能力が重要になっていくのです。


 もうひとつ、プログラミング教育が重要な理由は論理的思考力と相関があるからです。プログラミングを学び論理的思考力を高めることは、プログラマー以外の職業でも役に立つのです。


 プログラミングもプログラミング言語も日々進化、多様化しています。あるプログラミング言語を覚えたとしても、10年後には使われていないかもしれません。それでも一度、そのプログラミングという思考のプロセスを学べば、論理的思考力の向上に役に立つでしょう。


 子どもたちにはプログラミング言語そのものよりも、論理的思考力を身につけさせることと、コンピューターの動作原理を理解させることが大切だと思います。ただし、義務教育にするならなおのことですが、最大の問題は、プログラミングを正しく教えるスキルを持った教師の数が絶対的に不足していることでしょう。どうせ人材の育成は間に合わないので、ネットでの遠隔授業の導入しか、現実的な解決策はないように思います。


出典: 文藝春秋オピニオン 2017年の論点100


川上量生(カドカワ株式会社代表取締役社長)


(川上 量生)


注: この記事は配信日から2週間以上経過した記事です。記事内容が現在の状況と異なる場合もありますのでご了承ください。

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