タレントの松居一代さんと俳優の船越英一郎さんの泥沼の離婚騒動が話題になっています。芸能人に限らず、一般人でも離婚したい夫に対し、妻が応じないケースは多々あります。

お互いに愛情がない夫婦がなぜ離婚できないのか。今回は妻に離婚を申し出て4ヵ月間離婚に応じてもらえない54歳の男性に、あえて“偽装復縁”に取り組んでもらい、妻から離婚に応じてもらったケースを紹介しましょう。(露木行政書士事務所代表 露木幸彦、文中すべて仮名)

松居さんと船越さんの離婚騒動
一般人でも多い「離婚に応じない妻」

 酷暑の最中、私たちを悪い意味で涼しくしてくれたのはタレントの松居一代さん。夫である俳優の船越英一郎さんとの「泥沼」離婚騒動が毎日のように世間を賑わせています。最も注目を集めたのは松居さんがYouTubeに投稿した動画の数々。嫌がらせや復讐、逆恨みの数々は完全に常軌を逸しており、船越さんを全力でフルボッコする有様は傍観者の私たちですらブルブルと震えるくらいのインパクトでしたね。

 船越さんは裁判所へ離婚調停を申し立てたと報じられています。最大の関心事は、松居さんがブログやYouTube、Twitterなどで暴露している枝葉末節の話ではなく、船越さんが無事、離婚できるか否かではないでしょうか?

 離婚調停の成立には両者の同意が必要です。松居さんは船越さんが憎くて仕方がないようなので、別れたがっている船越さんには「別れない」のが最も効くでしょうから、やり直すつもりも未練もないのに、船越さんを困らせるために離婚を断固拒否する可能性は十分にあるでしょう。

娘が独り立ちして家庭内別居状態
夫の離婚の申し出に妻はノー

 ネット上の過激な言動はともかく、夫を苦しめ、困らせ、悩ませる目的で「離婚に応じない」妻は決して珍しくありません。今回は私のところの相談実例から、「気持ちの整理がつかない」と言い、8ヵ月に渡って離婚について無視し続けた妻から、ようやく離婚の同意を取り付けたケースを取り上げましょう。今回紹介するのは「偽装復縁」という、離婚を早めるテクニックです。

<登場人物>
八村進(54歳)会社員⇒年収900万円
八村明美(52歳)パートタイマー⇒年収80万円
八村みひろ(22歳)会社員

 進さんと妻は学生時代からの付き合いの末にできちゃった婚。必ずしも望んだ相手と結婚したわけではなかったとのこと。「正直なところ、娘がいなければ、とっくに離婚していましたよ」と自虐っぽく言います。妻への愛情はないけれど、何の罪もない娘が独り立ちするまではと我慢に我慢を続けてきたそうです。

 そしてようやく今年、娘が大学を卒業後就職し一人暮らしを始めたので、娘に対する親の責任を果たした今、満を持して妻へ離婚を切り出しました。しかし、進さんは勘違いしていました。

自分が妻への愛情がゼロで別れたいと思っているのだから、当然妻も自分への愛情はゼロで、同じように別れたいと思っているに違いないと。だから自分が離婚を切り出せば、当たり前のように妻は承諾するはずだ、と。

 進さんと離婚したらどう実家へ報告するのか、どこに住むのか、お金をどうするのか…妻は今まで離婚について具体的に考えたことがなかったので、進さんの提案に対してノーを突きつけてきたのです。

 妻は進さんへの愛情はなく、夫婦間で交わす会話もなく、なるべく自宅内ですれ違わないように気を使う「家庭内別居」の状態です。夫婦とは言い難い同居人同士のような生活を今までも我慢してきたのだから、ここで離婚に応じてしまうと過去の我慢は水の泡。それなら最後まで我慢し続け「卒婚」を選んだ方がマシだと考えたのかもしれません。

“偽装復縁”で離婚が早まる?
急がば回れの作戦

 進さんは離婚を切り出してから4ヵ月、同意を得られないまま、にっちもさっちもいかない状態で私のところへ相談しに来ました。そこで最初に私は進さんの出ばなをくじくようなアドバイスをしました。

「奥さんに対して『そうだね。まだ離婚は早いね』と言った上で、これから夫婦関係をどのように修復していくのか、具体的な話を詰めていきたいと投げかけてください」と。

「それって支離滅裂じゃありませんか?」

 進さんは首をかしげたのですが無理もありません。なぜなら「妻とやり直すこと」と「妻と別れること」は180度正反対だからです。

進さんが望んでいるのは、あくまで離婚。それなのに、なぜ今さら妻とやり直さないといけないのか。進さんが腑に落ちないのも当然といえば当然です。

 今回の場合、根本的な問題は妻に「心の準備」ができていないことです。だから「わざと関係を修復しようとする」ことで心の準備が整うように仕向けるのです。少々地道な作業で即効性は薄いのですが、遠回りながら離婚にたどり着けるので、気長に取り組む必要があります。

>>(下)に続く