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携帯電話に関わる総務省での議論が長引いた理由

2018年4月23日 12時16分
●当初は3月に結論を出すはずだった
携帯電話市場の競争促進に向け、1月より実施されていた総務省の新たな有識者会議「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」。当初は3月末で結論がまとめられる予定だったのが、報告書案が提示された第6回の会合が実施されたのは4月20日と、大幅に遅れている。これだけ取りまとめに時間がかかった今回の有識者会議からは、当初の思惑が外れ対応に苦慮する総務省の様子が見えてくる。

○3月には結論が出るはずだった有識者会議

携帯電話市場の競争環境整備に向け、これまでもさまざまな有識者会議を実施し、携帯電話市場に対して非常に大きな影響を与えてきた総務省。その総務省が、今年の1月より実施していた有識者会議が「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」である。

これは文字通り、携帯電話市場の公正な競争を促進するための実施されたものだが、実際のところはここ最近のMVNOの不調が、この会合の実施につながったと見られている。というのも2016年から2017年頃にかけて、安価なモバイル通信サービスを提供するMVNOへの顧客流出に危機感を抱いた大手キャリアが、端末料金を値引かない代わりに従来より低価格な料金プランを提供したり、低価格なサブブランドや、傘下のMVNOを強化したり、MVNOを買収して自社傘下にしたりするなどして、顧客流出阻止に打って出たのである。

その結果、大手キャリアから他社や、系列のMVNOへ流出する顧客は大幅に減少。キャリアが自社グループ内に顧客を抑え込んだことで、独立系のMVNOは一転して顧客獲得が見込めなくなり、経営破たんに至るMVNOが出るなど不振が続いている。

今回の有識者会議は、そうした現状を受ける形で実施されたもの。それゆえ中古端末が国内であまり流通しないことの問題や、大手キャリアのいわゆる「2年縛り」による顧客のつなぎ止めなどといった、従来の有識者会議で議論に上がったテーマに加え、今回は大手キャリアのサブブランド優遇に関する問題が、大きなテーマとして挙げられることとなった。

この有識者会議は、1月中にキャリアやMVNOなど関係する各社からヒアリングを実施した後、3月には結論が出される予定であった。だが実際のところ、報告書の案が取りまとめられた第6回の会合が実施されたのは、4月20日と大幅な遅れを見せている。会合の動向や報告書の案などから、なぜこれほどまでに結論を出すのに時間がかかったのかを考えてみたい。

●空振りに終わったサブブランド優遇問題
○サブブランド優遇問題の追求は空振り

理由の1つは、大きなテーマとして挙げられていた、大手キャリアのサブブランド優遇に関して、確固たる証拠が見つけられなかったことではないかと考えられる。

サブブランド優遇に関して特に問題視されていたのは、KDDIの子会社であるUQコミュニケーションズがMVNOとして展開する、「UQ mobile」であった。その理由は、UQ mobileが他の独立系MVNOと同じようにMVNOの形態をとっているにもかかわらず、混雑時に通信速度が落ちにくいなど、明らかに優位性があったためである。

規模が小さいMVNOが、UQ mobileと同じ通信速度を実現するには、非常に多額なコストをかけてネットワークを多く借りなければならず、現実的できないとの声が多く上がっていた。それゆえKDDIがUQ mobileに対して優遇措置を講じているのではないかと、疑惑が持たれていたわけだ。

だが今回の有識者会議で、KDDIとUQコミュニケーションズに対して実施されたヒアリングや提出資料などからは、逆にKDDIが公平な条件で、UQ mobileにもネットワークを貸し出していることが明らかにされたのである。UQコミュニケーションズは基本料を他のMVNOより高く設定することで収益を高め、それを借りるネットワークを増やす原資にしていたという。それゆえ少なくとも、貸し出すネットワークの料金や品質に関しては、他のMVNOと公平性が保たれていたことになる。

もちろん報告書案の中では、KDDIが未だ実現できていない、UQ mobile以外へのMVNOに対するテザリングサービスの提供や、大手キャリアとそのサブブランドのメールアドレスしか除外されていない携帯電話メールのフィルター設定への対処、番号ポータビリティの番号取得時に、強引な引き留めを受けない環境の整備など、キャリアとMVNOとの公平な競争環境実現に向けたいくつかの方策が示されてはいる。

だがネットワークの公平性に関しては、キャリアのグループ内MVNOに対する過度な金銭的補助など、不当な運営がないかチェックしていく体制を構築するとの方針は示したものの、現時点で特に問題が見つけられなかったため、サブブランドへの明確な措置を打ち出すことはできなかったようだ。最大のテーマであったサブブランド問題の追求が空振りに終わり、キャリアに対する明確な指導の方針が打ち出しづらくなったことが、結論を出すのが遅れた要因の1つになったといえそうだ。

●次の焦点はどこに!?
○議論は再び「縛り」へ、鍵を握る公正取引委員会

加えて今回の有識者会議では、サブブランドに関連する問題だけでなく、中古端末の国内における流通量が増えないという問題や、いわゆる「2年縛り」に関する問題にまで議論が及んでいた。サブブランド優遇問題の追求で思うような成果が出なかったのに加え、全体的に議論が拡散したことで主題が見えにくくなったというのも、報告をまとめるのに時間を要した大きな要因の1つと考えられる。

では今後、総務省は公正競争の実現、ひいてはMVNOの再活性化のため、どのような点に注力していくと考えられるだろうか。今回の議論や報告書案の内容から察するに、再び“縛り”の問題に注力してくる可能性が高いと筆者は見る。

実は今回の有識者会議では、キャリアのサブブランド優遇に対する疑念だけでなく、大手キャリアが下取りした端末の国内流通を制限しているのではないかという疑念も、多くのMVNOからなされていた。だが大手キャリアの側は、ヒアリングで下取り端末の国内流通を制限していないと回答。それゆえ国内流通促進のためには、中古端末の取引をしやすくする市場の形成や、端末の修理とそのために必要な部品の供給など、他の課題の解決が必要であることが見えてきたのだ。

それゆえ総務省は再び、現在もなお顧客に大きな影響をもたらしている、2年縛りの問題に目を付け始めたといえる。実際今回の報告書案でも、「2年契約満了時点又はそれまでに、違約金又は25か月目の通信料金のいずれも支払わずに解約できるよう措置を講ずることを求めることが必要と考えられる」との記述がなされており、2年間の縛りを前提としたプランを重視する大手キャリアの対応を、引き続き問題視している様子がうかがえる。

また総務省は、4年間の割賦を前提に端末を購入する代わりに端末代金を値引く、いわゆる「4年縛り」に関しても、顧客のスイッチングコストを上昇させる販売手法であるとして、問題視する動きを強めているようだ。そしてこの4年縛りは、公正取引委員会が4月13日より実施している「携帯電話分野に関する意見交換会」でも、1つのテーマとして議論がなされている。

総務省は今後、販売店での不正なキャッシュバックなどに関して、独占禁止法に抵触する可能性がある事案を認知した場合は、公正取引委員会に情報提供するなど、公正取引委員会との連携を強め大手キャリアの端末販売手法などに関する問題を対処していく考えを示している。それだけに今後、携帯電話市場には総務省だけでなく、公正取引委員会も大きな影響を与えることになるかもしれない。

注: この記事は配信日から2週間以上経過した記事です。記事内容が現在の状況と異なる場合もありますのでご了承ください。

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