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【ライブレポート】私立恵比寿中学、廣田あいか卒業ライブは未来への始まり

2018年2月19日 13時00分
アイドルに限った話ではないが、長年グループを支えてきたメンバーの卒業というのは実に悲しく寂しいことで、ラストライブともなればその思いは最高潮に達する。自分がこれまでに立ち会ってきた卒業ライブも例に漏れず、「ああ、これでもう会えなくなるのか……」という寂しさに襲われたものだった。しかし、そんなこれまでの常識を覆したのが私立恵比寿中学の廣田あいか、通称“ぁぃぁぃ”である。

「作っている過程がすごく楽しい」


8月31日に“転校”(=脱退)が発表されて以降、彼女はこちらに悲しむ暇を与えないほどポジティブなメッセージを今や100万人のフォロワーを抱えるインスタグラムを中心に発信し続けた。悲壮感なんてこれっぽっちもなく、“ぁぃぁぃは次なる未来へ向けて前進していくんだ”と失意に沈むファンの心にほんのり明かりをともした。

転校の発表と同時に知らされた2018年1月3日の日本武道館公演は、廣田自身が制作に携わることが知らされ、彼女からも進捗状況がたびたび伝えられた。ある日のインスタライブではこんな発言があった。

「作っている過程がすごく楽しい。楽しいと思って作ってないと、面白いものにはならない」

彼女にとって、この日のライブは自分が送り出されるためのものではなかったのだ。



■廣田のセンスが光る選曲


1月3日、日本武道館は超満員。ステージが見えづらいため、普段はあまり人を入れることのないステージサイドのエリアにも、廣田の転校を見届けようという観客がびっしり。さらに、2階席のてっぺんは立ち見客で溢れている。こんな武道館も珍しい。ステージは、月や土星といった絵で廣田らしくカラフルに彩られている。

開演直前、特徴のあるアニメ声でアナウンスが流れた。廣田である。公演中の諸注意とともに、彼女は言った。「最初から最後まで愛を詰め込みました」と。

オープニングは意外な展開だった。テレビ番組で共演するなど、エビ中と縁の深いお笑いコンビ流れ星のちゅうえいがアリーナ席に現れ、観客とコミュニケーションをとる。そして、ちゅうえいの紹介とともにステージに視線を移すと、メンバーの自己紹介VTRが流れ出した。これがまたクセの強いもので、中二病的なキャラで現れた真山りかをはじめ、メンバーそれぞれのキャラクターをわかりやすく、かつコミカルに表した自己紹介を繰り広げる。

そして、流れ出したのは『ポップコーントーン』のイントロ。いきなりの名曲投入にグッとくる。その後、『YELL』『きっとインフィニティー!』『EBINOMICS』『売れたいエモーション!』と新旧織り交ぜた楽曲が続く。しかし、とびっきりのレア曲を披露しているわけでもないのに、どこか独特。先が全く読めない。この選曲センスが廣田らしさなのだろう。

これまた独特なMCを挟んで、『なないろ』や『感情電車』といった最近の定番曲を披露した後、VTRが流れ、中山莉子が「ここからが本番のようです!」と力強く宣言。続く廣田が「見てて、これがエビ中なんだ。これが好きだから今までやってきたんだ。この伝説のときをしっかりとその目に焼き付けてね」と呼びかけ、いつもの登場曲『ebiture』が場内にこだまする。なんともトリッキーな展開だ。

■前代未聞のトリッキーな演出から、感動的な場面まで


『MISSION SURVIVOR』から始まった中盤戦は圧巻だった。特にすごかったのは『金八DANCE MUSIC』の特殊効果。“ぽんぽんぽんぽん ギロッポン!”という歌詞の“ぽん”に合わせて銀テープが50回以上発射されるという前代未聞の演出に笑いが止まらない。普通の大人なら考えつかないようなことを発案し、それを実行させた廣田の企画推進力には恐れ入る。

続く、安本彩花、廣田あいか、松野莉奈、柏木ひなたの4名からなるユニット“くっつきブンブン”による『いつかのメイドインジャピャ~ン』では、昨年2月に急逝した松野が映像と音声で参加。様々な感情が渾然一体となって体中を駆け巡り、場内は異様な盛り上がりを見せる。さらに『HOT UP!!!』~『サドンデス』と続くエビ中屈指のアッパー曲の連発で、中盤戦にしてクライマックスを迎えた。

その一方で、『まっすぐ』~『靴紐とファンファーレ』~『お願いジーザス』というしっとりとしたパートも設け、じっくり歌を聴かせる場面も。こういったところで彼女たちの歌唱力の向上を実感する。ただ単に音程がとれているということではない。歌に力があり、メンバーそれぞれの感情がこもっていて、それがエビ中独自の表現へとつながっているのだ。彼女たちの歌唱力、および表現力は今や日本のアイドル界においてトップクラスと言える。

『大人はわかってくれない』~『放課後ゲタ箱ロッケンロールMX』で本編を締めくくった後は、熱烈な声援と場内を埋め尽くす黄緑のサイリウムに押されてのアンコール。廣田が敬愛するMrs. GREEN APPLEの大森元貴が手掛けた『シンガロン・シンガソン』から始まり、『ラブリースマイリーベイビー』では各メンバーが自由にステージを駆け回った。

“これからのエビ中に注目して欲しい”


卒業公演独特の湿っぽさのようなものは全くないし、廣田の存在がやたらと前に出てくることもない。彼女がここでやりたかったことは、去りゆく自分の姿を見せつけることではなく、明日から始まる6人の私立恵比寿中学の魅力を存分に伝えることだった。だからといって、廣田は自分自身を抑え込んだのではない。彼女が大好きで、他の誰よりもその魅力を知っているエビ中のことをこの機会にもっともっと知ってもらいたいという、エビ中愛とアイドル愛の発露だったのだ。自分の転校を悲しむよりも、これからのエビ中に注目して欲しい――そんな思いだったに違いない。


現に、最後のあいさつでは、「この6人は自分たちのかわいさに気付いていない。自分たちの良さを引き出せていない。私が6人のかわいさを世界で一番知ってる」と言い放ち、メンバー一人ひとりの魅力がこの公演を通じて伝わればいいと考えていたことを彼女は明かした。

こんな卒業公演がこれまでにあっただろうか。最後のあいさつこそ涙声になっていたし、他のメンバーも涙を流していたが、やたらと感傷的になる場面はなかった。真山の「みなさんも目を腫らしてると思う……いや、けっこう笑ってたか」というMCがその状況を上手く表していた。


最後はどうやってステージを後にしていいかわからず、7人で手を繋いでぎこちなく袖に引っ込むというなんともエビ中らしい締めとなった。最後に廣田が叫んだ、「またどこかで会おうね! バイアイ!」。そう、彼女との縁はここで切れるわけではない。大人気グループを離れたからといって、そのまま埋もれてしまうような存在ではない。きっとまた新たな形で我々の目の前に姿を見せてくれるはずだ。そして、6人組となって再始動するエビ中の未来もまた、きっと明るいものになるんだ。


<セットリスト>


1. ポップコーントーン
2. YELL
3. きっとインフィニティー!
4. EBINOMICS
5. 売れたいエモーション!
6. 全力☆ランナー
7. フユコイ
8. なないろ
9. 感情電車
10. ebiture
11. MISSION SURVIVOR
12. 大漁恵比寿節
13. 金八DANCE MUSIC
14. いつかのメイドインジャピャ~ン
15. HOT UP!!!
16. サドンデス
17. ちちんぷい
18. CHAN-CHARA-CHAN
19. 幸せの貼り紙はいつも背中に
20. まっすぐ
21. 靴紐とファンファーレ
22. お願いジーザス
23. 大人はわかってくれない
24. 放課後ゲタ箱ロッケンロールMX

EN1. シンガロン・シンガソン
EN2. えびぞりダイアモンド!!
EN3. ラブリースマイリーベイビー
EN4. シンガロン・シンガソン

Writer:阿刀“DA”大志
(提供:ヨムミル!Online)

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