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Mr.Children、全楽曲サブスク解禁の意図を考える

2018年6月1日 12時00分

Mr.Childrenがデビュー26周年を迎えた5月10日より、これまでにリリースされたシングル37作品とアルバム21作品の全楽曲のダウンロード配信&サブスクリプション配信をスタートさせた。

昨年、デビュー25周年を迎えた際に、一年間の期間限定で配信ベストアルバム「Mr.Children 1992-2002 Thanksgiving 25」「Mr.Children 2003-2015 Thanksgiving 25」をリリースしていたが、そのときは、このあとに開催されたドーム&スタジアムツアーに向けて、より多くの人たちにライブを楽しんでもらうためのプレゼント的な意味があったのではないかと思っていた。もちろんこれまでMr.Childrenを支えてきたCD世代ではなく、若い配信世代へのアピールという意味もあったとは思うが、そこが一番の目的ではなかったと思う。しかし、今回は厳選されたベストアルバムという枠も超えて、全タイトルの配信だ。この真意はどこにあるのだろうか?

よく現在のCD売上の減少に触れ(2000年代前半までと比べると激減と言ってもいいだろう)、配信をしないとミュージシャンもやって行けないという見方もあるが、当然ながらMr.Childrenはこれに当てはまらない。確かに、CD全盛時代に比べて売上は落ちているのだろうが、そのために配信しなくてはならないほど、CDが売れていないわけでもないし、今さら売上に躍起になるような必要もない。だからこそ、Mr.ChildrenはこれまでCDという形でリスナーに音楽を届け続けてきたし、CDという形として音楽を手に取ることの実感と喜びをリスナーに与え続けて来た。そうすると、ますます今回の配信の理由は何だろうということになる。

1992年にデビューし、わずか数年でミリオンヒットを飛ばし、ヒットメイカーとなったMr.Children。その後は、曲を作ればCMや映画・ドラマなどで使用され、アルバムをリリースすると、アリーナやドーム・スタジアムといった大規模なツアーを行う、そんなルーチンを繰り返してきた。だがここ数年、それとは違った動きも見える。最新アルバム、と言ってももう3年前になるが、『REFLECTION』(2015年6月)を発売した際、アルバムの発売前に収録曲を披露するツアーを行った。そして、その年の後半にはライブハウス会場での2マンツアーを敢行。2016年~17年前半にかけては、実に22年ぶりというホールツアーも実施した。またRADWIMPS、ONE OK ROCKと言った、自分たちと同世代ではなく、若手アーティストのライブにも参加するなど、ここに来て今までにない何かを探し始めたような感覚がある。そして、今回の配信スタートだ。

結果として、今回の配信は数字的には驚異の大成功を収めている。配信サイトの一つ、Spotifyでは、プラットフォーム上でのストリーミング再生やリスナーのシェア数を分析してランク付けする「Viral チャート」で、最も多いときはTOP50中49曲がMr.Childrenという前代未聞の現象を引き起こした。これは純粋にファンが聴いて共感共有した音楽を示す指標なだけに意味深い。またLINE MUSICでも配信初日のデイリーランキングで、TOP100に45曲がランクイン、AWAでもアーティストランキング1位に、トラックランキングでも上位を占め、アルバムランキングでは配信初日に1~11位までを独占するという快挙を成し遂げた。CD世代だけでなく、配信世代にもMr.Childrenの音楽が届いた証だ。

Mr.Childrenの楽曲を聴き続けている人たちならば当たり前に気付いているだろうが、もともと彼らの楽曲は普遍的な軸を持ちながらも、変化を繰り返してきた。それはその時のトレンドに左右されてというものではなく、Mr.Childrenという人格が、さまざまな経験をし、自分に起こった変化にときに抗い、ときに受け入れながら、それを音楽にしてきたからだ。そして、ファンも自らの歴史の中にMr.Childrenの音楽を取り込み、ともに変化をしながら生きてきた。ただ、今、この配信という形で新たにMr.Childrenに触れた人たちは、これまでの過程を知らずに、その1曲として受け入れ、好きや嫌いの判断をしているはずだ。お父さんやお母さんが聴いていたあの曲や、CMで流れていたあの曲などを、あらためて1曲として聴く。そんな人たちがこれからMr.Childrenとどう関わって行くのだろうか――今回の配信の理由は、Mr.Childrenがそんな実験を試みたからではないだろうか? あくまで私見だが、そんな気がしている。

『REFLECTION』以降、私たちの手元に届けられている曲は「ヒカリノアトリエ」「himawari」「here comes my love」の3曲しかない。ファンとしてはそろそろアルバムを期待してしまうところだ。ここまで行ってきたさまざまな新しい試みが、Mr.Childrenという人格にどういう影響を及ぼし、そして、この配信という形で新しくMr.Childrenと出会った人たちを、どうやってこれからから一緒に歩んで行く同士としようとしているのか。“終わりなき”チャレンジが大好きなMr.Childrenだけに(笑)、期待に期待を重ねて待っていたいと思う。

(文/瀧本幸恵)

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「Mr.Children、全楽曲サブスク解禁の意図を考える」のコメント一覧 1

  • 匿名さん 通報

    そういう意図があったのか〜

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