「これがDISH//だ!」 5度目の野音で魅せたバンドとしての無限なる未来/レポート

■【DISH//音楽祭り2018 -東の野音-】レポート
2018.09.15(SAT) at 日比谷公園大音楽堂

DISH//が『DISH//音楽祭り2018 -東の野音-』と銘打って、3年連続、通算で5回目となる日比谷公園大音楽堂、通称・野音でライブを開催。55曲を一気に演奏したり、台風に巻き込まれたりと、これまでにも野音で伝説を作ってきた彼らだけに期待は高まる一方だ。
この日も、前夜から降った雨が昼過ぎまで続いていたが、ライブ開演を待っていたかのように雨も上がった。天候も彼らに味方してくれているらしい。

心地よい秋風が吹く中、エレクトロなSEが流れ「Are you ready? Slasher!」の掛け声とともにライブの火蓋は切って落とされた。最初にステージに現れたのは、泉大智。そして、矢部昌暉、橘柊生。そのあとにブラスセクション・DISH//ホーン隊が続き、最後に北村匠海が登場。
「こんばんは! DISH//です。野音へようこそ」と北村匠海の挨拶が合図となり、1曲目「I'm FISH//」へ。ホーンと生バンドの華やかかつグルーヴィーなサウンドに乗せ、「これぞ俺の人生」と高らかに歌い上げた。
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矢部昌暉の軽快なカッティングから、男気溢れる橘柊生のラップ、さらに泉大智のドラムソロが繋いだ「俺たちルーキーズ」。「行くぜ!」の気合を合言葉に、会場を埋め尽くした3,000人ものスラッシャー(DISH//ファンの愛称)がタオルを振り回して応戦。「世界を回せ」との歌い掛けに応えようと力一杯タオルを振り、心を一つにした。


続く、「晴れるYA!」は2013年10月にリリースされたメジャー2ndシングル。この日のライブは、新旧織り交ぜたラインナップで古参ファンもスラッシャー初心者も楽しめるライブだったことも特筆すべき点だ。

最初のMCでは、「雨も上がりました! 初めてライブに来た人も、(何度も来ている)スラッシャーも自由に楽しんでください」と呼びかけた(*以下、特に記載がないMCは北村匠海のコメント)。この自由で風通しの良い空気もまた、DISH//ライブの魅力だろう。
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「ちょーだい」とおねだりコールがユニークな「親のスネスゲーうめえっすね~」でみんな笑顔になった後は、橘柊生、北村匠海、矢部昌暉がステージ最前列のお立ち台に登り、「皿に走れ!!!!」へとなだれ込んだ。この曲では、フロント3人のパフォーマンスに合わせてスラッシャーもヘドバンするのがお約束となっている。
北村匠海が客席にマイクを向けると、3,000人が大合唱する声が公園に響き渡った。

序盤戦ラスト「ただ抱きしめる」では、スポットライトに浮かぶ橘柊生が切なげなピアノを鳴らし、柔らかな泉大智のドラムがそれに続いた。包容力と孤独感を帯びた歌声で切々と思いを歌い上げる正統派のバラードに、スラッシャーはしみじみと聴き入っていた。偶然にもピアノの繊細な音色と虫の音が優しく絡み合ったのだが、これも自然を感じられる野音ならではの粋な演出となった。

中盤では、各人が初披露となるソロ曲をパフォーマンス。トップバッターの泉大智は自ら懇願してドラム&ボーカルに挑んだという。
のちのMCで「難しかった」と感想を述べたが、事実ドラム&ボーカルは難易度の高いチャレンジ。彼の音楽への想いの強さを感じさせる一幕となった。
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「これがDISH//だ!」 5度目の野音で魅せたバンドとしての無限なる未来/レポート

北村匠海は、サスペンダー付きのレトロでおしゃれな衣装に着替え、ダンサーを従えながら歌い踊った。まるでミュージカルの1場面のように作り込んだ世界観で魅了したかと思えば、橘柊生はたった1人でステージ立ち、思いのままに動いたり座ったりしながらリラックしたムードの中で歌ものラップを披露。ここで歌唱した「音花火」は自らが作詞・作曲したもので、10月10日にDJ Toi名義でリリースする『TOY BOX -Toi's MIXTAPE-』に収録されるという。

ソロ曲セクションのラストは、ダークスーツに身を包んで大人っぽく変身した矢部昌暉だった。
彼に合わせたスーツ姿のダンサーとともに華麗に踊り、歌うのがラブソングではなく「誰にでもあるでしょう」と繰り返す素朴なメッセージソングというあたりが、なんとも彼らしい。

矢部昌暉がスーツのジャケットを脱ぎ、ソロでダンスを踊り始めたのを合図にソロから再び4人のセクションが始まった。泉大智、橘柊生、北村匠海と順番に懐かしいジャンプスーツ姿で、ステージに躍り出てきた。ラテンのリズムに合わせて3人が楽しげに踊っていると、早着替えをした矢部昌暉も加わるとからスラッシャーは狂喜乱舞した。
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さあ、ここからはデビュー当初から培ってきた独自のスタンス“ダンスロックバンド”を見せつける番だ。北村匠海と矢部昌暉がギターを抱えると、ポップでキャッチーな「サイショの恋~モテたくて~」へ。
「みんなでジャンプ!」と呼びかけるとスラッシャーが飛び跳ね、それぞれの手に握られた4色のペンライトが煌めいた。「ピーターパンシンドローム」では、4人はステージから客席のど真ん中へと勢い良く駆け下り3,000人を熱狂させた。

MCコーナーは、「虫が口の中に(笑)」という北村匠海の衝撃の告白から始まった。橘柊生は「いろいろと久しぶりだね。つなぎを着るのも、今やってた曲もギター持ってるのに弾かない」と笑うと、北村匠海も同調して「斬新だよね」と笑い合った。ソロ曲の感想を述べ合う場面では、矢部昌暉がメンバー曰く「変な動き」で妨害しトークがグダグダに。こんなふうに、決めこまない自然体でい続けるのも、DISH//の愛されポイントだろう。

その一方で、程よく北村匠海がリーダーシップを発揮。「よく分からないタイミングですが、ここで自己紹介します」と軌道修正。スラッシャーとの掛け合いを楽しんだ後に、「これ、14歳からやってるね」とメンバーと微笑みあった。4人+スラッシャーと重ねてきた日々の重さ、絆の深さが、この一言に凝縮されているように感じた。
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ここで再びDISHホーン隊を招き入れ、「5ヶ月ぶりにギターを弾きたいと思います」と宣言。春のツアーでは、北村匠海は腕を負傷してギターはおろか、ダンスも制限されるほどだったのだ。「トワイライト」で、ギターをかき鳴らしホーン隊のサウンドが重なり、温かな空気が会場を包んだ。かと思いきや、「W-B-C“若人Baseball Classic”」ではキュートなキッズダンサーズが彩りを添え賑やかなムードに。橘柊生は曲の合間に「皆さん、DISH//は好きですか?……俺の方が好きだけどね!」と愛を振きスラッシャーのハートを射抜いていた。

「ここに来てくれたみんなの声が聞きたいです! 準備はいいですか」と力強く呼びかけた「ハングリー狂詩曲」は、イントロを聴いた途端に、懐かしいと歓喜する観客も多かったナンバー。

「ここから、ラストスパートです。皆さん、行けますか!」とさらに煽り、怒涛の終盤へ。ノリの良いロックチューン「JUMPer」では、タイトル通りにサビで全員が何度もジャンプして、高揚感を分かち合った。息を弾ませるスラッシャーに向けて「これからもっと盛り上がる曲やるんだけど、準備はできてますか!」と絶叫。その声とともに、ギターのリフが轟く「勝手にMY SOUL」へとなだれ込んだ。泉大智のパワフルなビートに導かれて、スラッシャーたちはサビ前の「イエ~!」に全身全霊を傾け、空高くめがけて叫んだ。
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最高潮に達した空気を落ち着かせるよう、淡々とした語り口で「本当に雨が降らなくてよかったです。リハでは降ってたから」とスラッシャーを気遣いつつ、こう話し続けた。

「いい時間を過ごせています。楽しんでもらえましたか? 踊ったり、ただふざけているだけ(のように見える)曲まで、今のDISH//にできることすべて。『DISH//ってこうだぞ』ってものを詰め込みました。唯一無二のスタイルで、いいものを作り続けたい」

本編ラストに選んだのは、再出発を意味する最新シングル「Starting Over」。歌入れの時に感極まって涙したという思い入れの強い楽曲だ。彼らの宣誓にも似た思いを乗せたこの曲を、4人は心を込めて歌い奏でた。

ジンとくる感動的なラストだったが、すぐさま「おかわり!」コールでアンコールをおねだりするスラッシャー。すると、ナレーションと共に謎のバンド「皿バンド」が登壇してきた。たった1曲だけの持ち歌「Sa-Ra-Band」の演奏もそこそこに、ショートコントに流れていくのが恒例だ。ボックスに入っているキーワードをそれぞれが引き、その言葉を入れ込んだ愛の告白をするのが今回のお題だった。だが、皿バンドだけにキーワードが「厨二病」的で、「ドッペルゲンガー」や「やめろ、もう一人の俺。出てくるな」など、告白にはかなり不向き。なんとか工夫して告白すると、今度はその良し悪しをスラッシャーの拍手の大きさで勝敗を決するというのだからシビアだ。残念なことに、矢部昌暉は圧倒的に敗北を喫したのだった(だが、鋼のハートを持つため、彼は少しも凹んではいないように見えた)。
「これがDISH//だ!」 5度目の野音で魅せたバンドとしての無限なる未来/レポート

ゆるく楽しいひと時を満喫した後は、「愛の導火線」で再びロックバンドの顔を見せた4人。「みなさん、ライトを右に左に大きく揺らしていきましょう」と北村匠海が呼びかけ、橘柊生はジャンプを促す。「そんなもんか!」と煽ると、スラッシャーも負けじと高く飛び跳ねた。

「毎年、野音でライブができて楽しいです。また帰ってきたい」と再会を誓った後、生声で「ありがとうございました」と4人が声を張り上げ、最後の挨拶をしたDISH//。彼らに対して、会場から割れんばかりの拍手が贈られた。演者と観客が互いに充実した笑顔を浮かべた、純粋で美しい光景がそこにはあった、

時に悩み、涙も流しながら、それでも前に歩み続けてきたDISH//。日比谷野外音楽堂で魅せたライブは、過去、現在進行形、そしてこれからのDISH//の無限なる可能性をも予感させてくれた。彼らの今後がますます楽しみになる秋の夜だった。
(取材・文/橘川有子)
「これがDISH//だ!」 5度目の野音で魅せたバンドとしての無限なる未来/レポート


◆【視聴】『DISH//音楽団祭り2018 -日比谷公園大音楽堂-』発売予告動画

≪セットリスト≫
1. I'm FISH//
2. 俺たちルーキーズ
3. 晴れるYA!
4. 親のスネスゲーうめえっすね~
5. 皿に走れ!!!!
6. That's My Life
7. ただ抱きしめる
8. SECRET ※泉大智ソロ曲
9. 明日を見つめて ※北村匠海ソロ曲
10. 音花火 ※橘柊生ソロ曲
11. 誰にでもあるでしょう ※矢部昌暉ソロ曲
12. サイショの恋~モテたくて~
13. ピーターパンシンドローム
14. トワイライト
15. W-B-C"若人 Baseball Classic"
16. ハングリー狂詩曲
17. JUMPer
18. 勝手にMY SOUL
19. Starting Over
<ENCORE>
1. Sa-Ra-Band~恋するマーズ~
2. 愛の導火線

≪リリース情報≫
Live DVD / Blu-ray
『DISH//音楽団祭り2018 -日比谷公園大音楽堂-』
2018.12.12リリース

■DISH// オフィシャルサイト