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「大きなおっぱい」で辿る社会の変遷/安田理央『巨乳の誕生 大きなおっぱいはどう呼ばれてきたのか』

2017年12月21日 14時30分

『巨乳の誕生 大きなおっぱいはどう呼ばれてきたのか』(太田出版)

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 タイトルに『~の誕生』と銘打った本はかなり多い。学術書で言えば、たとえばアリエスの『〈子供〉の誕生』が有名だろう(もっとも、このタイトルは翻訳者がつけたもので、原題は全く異なる)。現在を生きるわたしたちが当たり前だと思っている現象や枠組みが、歴史上のある時点に生まれたものでそれ以前には存在しなかったと知れば、たしかに驚くし、知的好奇心も満たされる。

 ジェンダーやセクシュアリティに関する分野においては、『~の誕生』本にはまた別の意義がある。すなわち、性に関して「本能」や「伝統」を持ち出して差別や抑圧を正当化する人に対し、「それは不変の本能でも伝統でもなく、歴史的産物だ」と言い返すための「武器」として、『~の誕生』本は重宝されたのである。

 ただし、現在ではジェンダー・セクシュアリティ系の『~の誕生』本のブームは一段落したようにも思える。面白そうなテーマがあらかた研究し尽くされたから、という理由もあるだろう。より根本的には、「歴史的産物」であるとの指摘は「本能・伝統論者」には痛手を負わせるが、「開き直って歴史的産物を守り、差別を続ける」人々には批判として届かない、と多くの論者が気づいたという理由もありそうだ。現在では「なぜダメか」それ自体を論じる作業が多くなってきたように思う。

 さて、そのような流れの中での『巨乳の誕生』(太田出版)である。同じ著者の安田理央が書いた『痴女の誕生』(太田出版)に匹敵する書名のインパクト。

注: この記事は配信日から2週間以上経過した記事です。記事内容が現在の状況と異なる場合もありますのでご了承ください。

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