同人誌で発表された作品が、出版社を通して改めて書籍化される流れは、もう珍しくなくなった。それどころか、Twitterで発表してバズった作品が、そのまま単行本になるのも当たり前。

作者と編集とが共同作業で作品を作り上げるというスタイルは、昔話になろうとしている。もはや、マンガ家の中には商業誌で連載することに価値を見いださない人も増えている。

 商業誌でも何冊かの単行本を上梓している18禁マンガ家は語る。

「もう、商業誌に魅力を感じてはいません。自分で読者の反応を見ながら、自分のペースで描ける点で同人誌のほうがやりやすいと思っています。何より、必要経費を除けば、すべてが自分の収入になるわけですから、わざわざ商業誌で発表するよりもメリットが多いと思っています。
商業誌は広告的に年に数回でいいんじゃないかな……」

 同人誌メインで稼ぐことは、もはやマンガでは当たり前。しかし、近年になって、マンガ以外のジャンルでも、商業誌よりも同人誌メインで稼ぐことを志向する人が増えているのだ。

 ご存じの通り、コミケに行けば鉄道やミリタリー、そのほかさまざまマニアックなジャンルを扱う同人誌が無数に頒布されている。そうした中には、商業誌でも名前を見かけるライター・研究者・作家も多数。そうした書き手の中には、同人誌ではなくとも、いくらでも本が出せそうな著名人も多い。でも、どうして彼らは同人誌で出すことにこだわっているのか。


 ある分野で商業誌にも連載を持ち、新書も多数刊行しているライターは、こっそりと胸の内を教えてくれた。

「出版社は、とにかく動くがのろい。企画会議にかけると言ったまま、半年とか1年放置されるのも当たり前です。それに、印税。8%ならまだしようがないですが“制作費がかかったから”と、5%とか提示されたこともあるんです。これだったら、出版社から出すことにこだわらなくてもいいなと思っています」

 話をしてくれたライターは、同人誌が専業というわけではない。
いったん、同人誌として刊行するために資料を集めて、原稿を書く。それをもとに商業誌での連載を執筆。あるいは、形を変えて出版社から単行本で出すというスタイルを取っているという。

「原稿料や印税だけに頼っていては、心許ない。ひとまず、同人誌で出すのはおすすめですよ」(同)

 マニアックなテーマなど売り上げが未知数な本や、出版社も二の足を踏むジャンルでは、この方法はより有効だとか。これからは、文章書きも同人誌がメインの収入源という時代になっていくのか。
ひとまず、DTPから覚える必要もありそうだ。
(文=コミケ取材班)