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マイノリティがマッチョを懲らしめる痛快ダイムノヴェル

2017年11月14日 19時05分 (2017年11月22日 08時22分 更新)

『スチーム・ガール (創元SF文庫)』エリザベス・ベア 東京創元社

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 ときは十九世紀後半。飛行船が行き交い、甲冑型の巨大な蒸気機械が闊歩する港町ラピッド・シティはゴールドラッシュに湧いていた。

 と、設定だけ書きぬくと、いかにもスチームパンクだが、物語の味わいはむしろ古典的な冒険メロドラマだ。邦題は『スチーム・ガール』だが、原題はKaren Memory。直訳すれば『カレンの追想』あるいは『カレンの日記』である。カレンというのは、この物語の語り手にして主人公のカレン・メメリー(Karen Memery)。本人が「MemoryのoをeにしてMemery」と自己紹介をする。

 こうした綴りや言葉に対するちょっとしたコメントがときおり挟まれるのは、カレンが本好きだからだ。といっても、いわゆる文学少女ではない。生活に追われる味気ない日常のなか、一服の慰めとして娯楽小説を読むのである。カレンはモンシェリという娼館で働く十六歳の売春婦なのだ。モンシェリは女主人マダム・ダムナブル(彼女自身が元売春婦である)の統制のもと、それなりの労働条件と客筋を保っている。また、ここでは生物的性は男だが本人の意識は女性であるフランシーナも仕事仲間として平等に扱われているなど、寛容な空気がある。そんな環境のなかで、カレンもそう辛い思いをしているわけではない。ただ、しあわせだった子ども時代、両親が健在で、大好きな愛馬と暮らしていた農場が忘れられないのだ。

 ラピッド・シティには、モンシェリ以外にも多くの娼館がある。

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