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震災後、ぼくたちはちょっとだけ病気なのか?『一億総うつ社会』

2011年3月29日 11時00分 ライター情報:米光一成

『一億総うつ社会』片田珠美/ちくま新書
帯の言葉“「みんなちょっとだけ病気」という時代を生き抜く処方箋 苦しいのはあなただけじゃない!”

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正直なところ、ぼくは、へばっていた。
ちょっとしたことで感動したり、驚いたりする。
へばっていて、やる気がでない。
ほぼ毎日書いていた原稿も、ここのところそんなに書いてない。

という今の自分の状態にぴったりくるタイトルの本『一億総うつ社会』を読んでみた。

なぜうつが激増したか?
『一億総うつ社会』は、この疑問にズバリ答える。
「診断と薬がうつをつくり出す」と。

DSMという診断マニュアルがある。
アメリカ精神医学会が作成したものだ。
“診断の「信頼性」を高め”“症状の正確な記述が何よりも優先”された。
“<科学的>医学”であろうとした。
そのため、原因は問わないことになった。
“症状はその人の生活史の中で意味を持つものとしてとらえられなくなった”のである。
こうして、“生物学的要因が強かろうと、何らかの心理的ストレスに対する反応であろうと、あるいは神経症的な葛藤を抱えていようと、気分の落ち込みや意欲の低下などの抑うつ症状がいくつ以上そろっていれば、うつ病と診断できることになった”のだ。
この診断基準でうつが激増した。

抗うつ薬の登場もキーであったと、本書は解説する。
1958年抗うつ薬イミプラミン、1988年プロザックの登場。
これらの薬が出てくることでも、うつが激増する。
そもそも「うつとは何か?」というのが曖昧なのだ。
フランスの精神医学界の大御所ピエール・ピショーは「本当に満足できる定義がない」と指摘している。
しかも、“さまざまな精神疾患の共通分母として出現しうる”のだ。
“精神医療の現場では、抗うつ薬を投与して、効いたらうつと診断するような、いわば「薬で探っていく」経験主義がまかり通っている”と記されている。
うつの定義がはっきりしないので、薬で治るものがうつであるという倒錯した考え方になっているのだ。

本書の構成は以下のとおり。
第一章は、従来型のうつと新型うつの具体例を紹介。
第二章「診断と薬がうつをつくり出す」。歴史をふりかえって、うつがどのように増加してきたかを解説する。
第三章、第四章、第五章は、新型うつの特徴「他責的な傾向」「自己愛的イメージの強さ」をあげながら、フロイトや社会的背景を用いて、なぜ新型うつが増加しているのかを検討。
第六章「一億総うつ社会への処方箋」で、ではどうすればいいのか?を考察する。

“愛する者との死別、離婚や失恋などによる別離(……)という対象喪失に直面した人が、落ち込んで、何もする気がなくなり、泣いてばかりいるような状態に陥った場合、どうしていたのだろうか。

ライター情報

米光一成

ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学客員教授。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「想像と言葉」等。

URL:Twitter:@yonemitsu

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