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5秒に1冊売れると何位だ?『Amazonランキングの謎を解く』

2011年6月2日 10時00分 ライター情報:米光一成

『Amazonランキングの謎を解く』(化学同人)服部哲弥
書籍ランキングの順位変動はどういう原理で決定されているのかの謎に迫る!

こちらもシンプルだ。
“注文数の大きい順に並べる”

第4章に、ふたつの表が出てくる。
ひとつは、ランキングの値と最後に売れてからの経過時間の関係。
これによると、70万位だと最後に売れてから72日経過している。
ぼくが書いた『自分だけにしか思いつかないアイデアを見つける方法』って本は、今見ると、約6万位なので、この表によると、最後に売れてから13時間ちょいぐらい経過している。
『Amazonランキングの謎を解く』は4,468位なので、もうひとつの表に対応する。
上位ランキング値と注文頻度の関係。
つまり何分に何冊売れてるか、ということだ。
1000位で30分/冊で、1万位だと7.5時間/冊。
ということは、『Amazonランキングの謎を解く』は、この間。
吉村昭『三陸海岸大津波』が今11位。
表によると、10位だと5秒/冊なので、数秒に1冊、飛ぶように売れてる状態ですよ。すごいなー。

っても、「本当にAmazonは、この本に書いてあるような方法でランキングを算出しているの?」というクエスチョンが出てくる。
著者はAmazon内部の人間ではない。Amazonのランキングを外から観察して、数理モデルを当てはめ、検証している。だから、この本に書いてあることが、Amazonのランキング算出方法とぴったり一致しているとは限らない。
でも、本書を読むと(計算式とかよく分からないまま読んだぼくでも)、基本的な構造は本書に書かれてある方法だろうな、と納得する。説得力がある。

後半では“ロングテールビジネスが成立しているか否か”について検証。
“ある時刻のランキングの、たとえば下位9割を切り捨てて、上位1割の本だけを残して書店規模を大幅に縮小したとき、売り上げの何割を失うかという問題”を考え、“ランキング下位9割を切り捨てても、売り上げについての機会損失の全体の中での割合は0に近い”という結論を得る。
“ビッグヒットだけを並べた小さな書店でも同等以上の収益が上がるはずだ”という考え方は数理モデルとしては正しいかもしれない。だが、現実的ではないだろう。だって、ビッグヒット以外の本も扱っているという安心感から、ぼくはAmazonを利用しているのだから。
最終章で著者は、こう書く。
“短期的な利益追求の名の下に、ビッグヒット以外のあまたある作品を切り捨てて、頂点までの道のりが短くなるほど思想は弱くなり、ビッグヒットに選ばれた物語は厚みが減って、受け手の要求する知的刺激を満たさなくなれば、文化的にはもちろん、やがて経済的にも衰退するだろう”

Amazonのランキング算出方法だけでなく、物事の考え方、推論の仕方の本でもある。数式部分をわからずに読んでも、その方法論はなんとなく推測できる。刺激的だ。数理モデルや確率論に詳しい人には、より刺激的な本だろう(と推論する)。(米光一成)
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ライター情報

米光一成

ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学客員教授。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「想像と言葉」等。

URL:Twitter:@yonemitsu

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