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なぜ「マスコミはウソばっかり」になるのか『雇用の常識 決着版!』

2012年9月20日 11時00分 ライター情報:香山哲

『雇用の常識 決着版「本当に見えるウソ」』海老原嗣生/筑摩書店
総務省発表などの公のデータに、妥当になるような統計処理をして雇用にまつわるウワサを検証していく本書。新聞やテレビに惑わされないためのリテラシーを身につけたり、働くスタイルについて考える情報ソースにもなるぞ。

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彼らは他の所得があって節税のために意図的に「年に103万」などのラインにおさめている。そういう人を合算して「ほらみんな貧乏だ!」というのは、インチキっていってもいいレベルだろう。

本書はそういったウソを暴いていきながら、日本の雇用をとりまく構造変化や景気の影響の大きさなどを、ていねいに解説していく。

否定されがちな新卒一括雇用も、日本の雇用スタイルにあっている部分が多いというのも説得力があった。元々日本は新卒後数年間はふらふらする傾向が多く、そのために昔からその年代の離職率は高かったという。だが再就職率も同様に高く、アメリカのように就職時に専門や生涯所得がバチッと決まってしまう傾向が強い社会とは異なるのだ。

最近も新聞などで「大卒・専門卒の半数以上が不安定な雇用状態か無職状態」と言われることがあるが、離職と再就職を考慮すれば、卒業後数年間でミスマッチが解消されたりしていると考えることもできる。

ともかく、社会が1つの単純な理由で革命のように変化することはまれで、何十年もかけていくつもの変化がいろんなベクトルで動いている。ニュース記事を読む1分間で、簡単に世情を理解しようなんて思う僕らの感覚もどうかしてるな、と思わされる。大企業にばかり向かって、終盤に慌てて中小企業を受けるような就職活動を行う大学生の行動パターン解析なども面白く、おすすめです。(香山哲)

ライター情報

香山哲

漫画やゲームを制作するチーム「ドグマ出版」主催。著作に『ランチパックの本』や『香山哲のファウスト1』(文化庁メディア芸術祭推薦作品)など。

URL:Twitter:@kayamatetsu

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