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差引残高ゼロ、お金がない、フハーッ。水木しげる『ゲゲゲの家計簿』

2012年10月16日 11時00分 ライター情報:たまごまご

『ゲゲゲの家計簿』水木しげる/小学館
1922年生まれの水木しげる。彼が紙芝居描きをやっていた時代から付けていた家計簿を元に、戦後のお金のやりくりを赤裸々に描いたのが『ゲゲゲの家計簿』。貧しくてもなんだかさっぱり明るいのがユニークなマンガ。当時の風俗もよくわかります。

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水木しげるには、左腕がない。戦争で失ったから。
まだ独身の彼は、左肩で画用紙を押さえながら、紙芝居の絵を汗だくになって描く。
お金がないからネ。
それにしても家計簿が、またゼロだ。
鼻から息を吐く。
フハーッ。

『ゲゲゲの家計簿』は、水木しげるが付けていた家計簿を元に、自分の仕事の様子を描いた自伝マンガ。
なんといっても「家計簿」がメインなのが面白いんですよ。お金ですよお金。
とにかくマメなんです。昭和26年から41年まで、びっちり家計簿をつけている。
上巻ではまだ結婚していません。独身です。
神戸でアパートの経営をしながら紙芝居を描いているのですが、とにかくお金がないので家計簿をつけ始めます。
その時の彼の感想。
「つけてみるとなかなかオモチロイね」
水木しげるが付けていた家計簿自体が載っています。

お金を見ると当時の状況がわかるものです。
水木しげるの生活は、何度も差引残高ゼロになることが多いのなんの。
ゼロですよ。つまり全くお金がないっていうことです。
フハーッ。
息をつきながら水木しげるは紙芝居を描きます。
残高ゼロに近づくのが見える度に、「早く仕上げて画料をもらわないと……」と精を出します。

家計簿から、当時の子供の娯楽のブームの推移がわかる資料本にもなっています。
まず水木しげるは初期の頃、紙芝居を描いていました。使うのは筆です。
これが結構な量あるのが見受けられます。それだけ当時は紙芝居人気だったのです。
紙芝居屋の収入は飴代。ただで見てっちゃいけないよ。
この頃の紙芝居は印刷じゃなく、できた原稿そのものにニスを塗って見せていたので、一点物。貴重です。
西部劇なども描き、評判のいい水木しげるの紙芝居ですが、決してお金持ちとはいえない。紙芝居が売れない時代がやってくる。
さて、ウケる紙芝居を作るにはどうしたらいいか。
そこで水木しげるは初めて、『ゲゲゲの鬼太郎』の前身とも言える『墓場鬼太郎』を完成させます。

最初はグロテスクすぎてウケなかった『墓場鬼太郎』。
ここにユーモアとアクションを加えて、水木流に言うと「オモチロク」したのが『空手鬼太郎』。
沖縄に行って空手をやる鬼太郎と、ポケットの中にいる目玉の親父で人気が出ます。
よかったよかった。
と思いきや、全然よくない。紙芝居業界が死にかけているじゃあないか。
フハーッ。

テレビの登場で一気に紙芝居は衰退。
家計簿を見ながらどうするか迷い、東京にいって貸本マンガを描くことを決意します。
この時家計簿に残高があるのを確認するあたりが、水木しげるのマメなところ。

ライター情報

たまごまご

フリーライター。「ねとらぼ」「このマンガがすごい!WEB」などで執筆中。ひたすらに、様々な女の子の出てくるマンガを収集し続けています。

URL:たまごまごごはん

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