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アップルもディズニーもコピーキャット?『模倣者こそがイノベーションを起こす』

2013年2月25日 11時00分 ライター情報:香山哲

『コピーキャット:模倣者こそがイノベーションを起こす』オーデッド・シェンカー著、井上達彦監訳、遠藤真美訳/東洋経済新報社
サムスンがあっという間に習う側からトップメーカーになったり、模倣の重要性を考えさせられる例は多い。革新を起こすだけが産業・ビジネスではない。模倣の重要性を徹底考察した一冊。

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iPhoneのアップルやアニメーションのディズニーも、他者の先駆的製品をコピーするコピーキャット(模倣者)だった。ただし、誰もが認める大成功を収めた、「上手な模倣者」だという。あの任天堂も、家庭用ゲーム機の世界ではアタリの「ポン」をすぐさま模倣した75社のうちの1つだ。

たくさんの企業の実際の足跡をたどりながら、模倣戦略の重要性を考察した本『コピーキャット:模倣者こそがイノベーションを起こす』が世界10カ国で翻訳され、今月日本語でも出た。

「革新!イノベーション!」「新しい価値を創造!」「顧客が全く体験したことない驚きを!」など、いかにもクリエイティブな「気合い」もいいかもしれないけど、「革新と模倣は同じくらい大切で、両方は繋がっている」という考えを、さまざまな角度から書いている本なのだ。


多くの人はビジネスにおける模倣に対して、「劣化コピー」「パクリ」などネガティブなイメージしか持っていないかもしれない。特許や著作権を無視したり、見かけだけそっくりな粗悪品。だがそれはそれとして、輝くヒット商品やスーパーサービスの多くが「模倣から生まれている」のも事実なのだ。

デジカメ、ドライブスルー、クレジットカード、ダイエットコーラ、などなど。それらはみな、「世界で最初にその製品を出した会社」は目立たず、「最初の製品を模倣して作られた2番手以降の製品」がヒットし、「そのジャンルの代表的製品」になっているという。

それだけならただ「ふーん、そうなんだ」って感じの、歴史のおもしろエピソードだ。もちろん、そこでは終わらない。

革新的な製品やサービスを生み出せば、新たなマーケットを作り、独占できる。ただしそれは、模倣品が登場するまでの期間に過ぎない。ただでさえそうなのに、模倣品が出るスピードというのは、どんどん速くなっている。

蓄音機の模倣品が出るまでには30年かかったが、CDプレイヤーは3年で模倣された。MP3プレイヤーはもっと短い。ご存知の通りコモディティ化やなんかで、どんどん「コピーが有利な時代」になっている。

そういうこともあって、製品が稼ぐ総額のほとんどが後発の模造品の売り上げとなっている例も多い。新しくできた業界の利益の多くが、コピーキャットたちに持っていかれるということだ。例えば、抗うつ剤「プロザック」は特許が切れた後、そのシェアの8割をジェネリックのような後発製品に奪われた。その間、なんと2ヶ月!

この本は、そういうさまざまな例を考察しながらも、「模倣が最強」だと言っている訳じゃない。

ライター情報

香山哲

漫画やゲームを制作するチーム「ドグマ出版」主催。著作に『ランチパックの本』や『香山哲のファウスト1』(文化庁メディア芸術祭推薦作品)など。

URL:Twitter:@kayamatetsu

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