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「ゆきゆきて、神軍」を観たことあるか。観るがいい『傑作ドキュメンタリー88観ずに死ねるか!』

2013年4月12日 11時00分 ライター情報:米光一成

『傑作ドキュメンタリー88観ずに死ねるか!』(鉄人社) 4月13日(土)から出版記念上映会も!

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“奥崎謙三という人は、昔、殺人を犯して、その後、天皇に向けてパチンコ玉を撃った人でしょ。大変な相手ですよ。だって、奥崎は人をそのとき殺したいと思ってたんですから。そのために、映画を利用しようとしていた。つまり、原くんは殺人の共犯になるということですよね”
語っているのは田原総一朗。“原くん”というのは、ドキュメンタリー映画「ゆきゆきて、神軍」の監督、原一男のことだ。
その原一男は、龍村仁監督「キャロル」について、NHK上層部との闘いの経緯とともにこう書く。
“己の身体を抑圧してきた“何者か”の正体を暴き、その理不尽なものから己を解き放つことを企図したのだ”

『傑作ドキュメンタリー88観ずに死ねるか!』(鉄人社)、凝縮した熱と圧で本がぱんぱんに膨らんでいる。
73人それぞれの作品論が持つパワーはもちろん、編み集められたことによって、本書はたんなるドキュメンタリー・ガイドを遙かに超えてしまった。

たとえば、原一男の“既成の、NHK的客観性でかつ公平な作劇法ではなく、きわめて主観的だからこそ飛躍できるコラージュという方法を選んだ”という指摘は、清水節の紹介するNHKスペシャル「映像の世紀」“世界30ヶ国以上約200ヶ所のアーカイブから60000時間に及ぶ映像を選び出し”編集したことと衝突するように響き合う。
原一男監督「極私的エロス・恋歌1974」を“私的な視点で押し切る構成”と紹介する松江哲明のテキストとも交わる。
表現規制と闘う構図は、五箇公貴(テレビ東京プロデューサー)の田原総一郎に関するテキストとつながる。水道橋博士とともにテレビ番組「田原壮一郎の遺言~タブーに挑んだ50年!未来への対話~」を作ったとき、“「この番組は“放送のタブー”というものの領域を探る番組であり、そのためには、タブーとされている内容も放送しないと番組として意味がない」という入れ子構造に持っていくことで、映像のカットを最小限にとどめ放送した”
「コラージュという方法」という点で、「アトミック・カフェ」(米ソ冷戦下のプロパガンダ映像をコラージュした傑作ドキュメンタリー)とも脳内で連鎖する。“「アトミック・カフェ」は、僕が観察映画を作る上でも、重要な教訓を与えてくれた。すなわち、編集で壁にぶち当たったら、とにかく映像をよく観察すること。そして「答え」は映像にすでにある、ということ”と書くのは想田和弘監督。
その想田和弘監督の観察映画の魅力を“ドキュメンタリーの醍醐味たる“撮れちゃった”部分ですよね。

ライター情報

米光一成

ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学客員教授。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「想像と言葉」等。

URL:Twitter:@yonemitsu

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