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武雄市図書館は是か非か。リアル「図書館戦争」時代

2013年5月10日 11時00分 ライター情報:近藤正高

根本彰『理想の図書館とは何か』(ミネルヴァ書房、2011年)
現在の貸出しサービスを中心とした図書館はどのような経緯で成立し、そして今後どう変わっていくべきなのか、さまざまな事例をあげつつ論じた一冊。多少専門的なところもあるが、各章のあいまに収録されたコラムから読むと理解しやすいかもしれない。

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ここのところ、図書館が何かと話題になっている。有川浩の同名小説を映画化した「図書館戦争」が公開中だし、現実においてもここ数年、全国各地で図書館の新設やリニューアルがあいついでいる。2011年11月には、東京都立日比谷図書館が千代田区に移管され、図書フロアのほか展示室や研究室、カフェ&ショップなどを併せ持つ千代田区立日比谷図書文化館として生まれ変わった。岐阜市でも、既存の市立図書館に替えて、新たな中央図書館を中心とした複合施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」が、建築家の伊藤豊雄の設計により建設が予定されている。

しかし、最近もっぱら話題となっているのは、佐賀県武雄市が運営をカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC。DVDレンタルチェーン「TSUTAYA」などを展開する企業)に委託して、この4月にリニューアルオープンした武雄市図書館だろう。年中無休で朝9時から夜9時までの12時間開館というだけでなく、館内には図書コーナーと併せてCD・DVDのレンタルや本の販売を行なうコーナーが設けられ、またコーヒーチェーンのスターバックスも営業し、そこで買った飲み物は館内のどの席にも持ちこみが許されている。

武雄市図書館はたしかに目新しさに満ちている。だが、それは図書館の将来像を指示しているという意味での新しさだろうか? 私がそんな疑問を抱いたのは、最近、根本彰『理想の図書館とは何か―知の公共性をめぐって―』という本を読んだからだ。

あらかじめ断っておくと、この本が出たのは2011年10月なので、武雄市図書館については触れられていない。ただ、この図書館の出てくる背景をうかがわせるような記述はいくつか見られる。たとえば、本書の137ページには、2005年における住民一人あたりの貸出し数の多い都道府県を並べた表が掲載されている。それによると、佐賀県は「6.4冊」と、「8.4冊」の滋賀県、「7.7冊」の東京都に次ぐ全国3位にランクインしていることがわかる。もっとも、滋賀県が県立図書館を中心に、県全域で貸出しサービスを充実させるという図書館振興策をとってきたのに対し、佐賀県の事情はやや異なる。

《県全体の年間貸出し数五六〇万点のうちの四五%にあたる二五〇万点が佐賀市立図書館一館で貸し出されている。また、佐賀市の活動と相互に刺激し合いながら、貸出しを中心とするサービスを展開させている鳥栖市、伊万里市、鹿島市、武雄市などの市がある。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

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