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カラス料理、パイナップルラーメン、タモリ論まで食べつくす。第18回文学フリマで見つけた噂のすごい本

2014年5月16日 10時00分 ライター情報:近藤正高

第18回文学フリマでのエキレビライターの“収穫”
左から『CROW'S』『別腹』『誠壱のタモリ論2』『関西ソーカル』

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これは食にまつわる短歌をあれこれとりあげ、佐藤さんのコメントを付けたもの。それがいちいち面白いのだが、前衛短歌で知られる塚本邦雄の《故郷は百年前に滅びき名物の「うつしよ」と呼ぶ干菓子が殘り》という一首など、その背景にある物語を想像せずにはいられない。
あるいは歌人の佐藤弓生さんのエッセイ「すっぱいパンや焼けこげたパンの話」では、『アルプスの少女ハイジ』に出てくる「黒いパンと白いパン」をとりあげている。《その十九世紀の物語世界において黒パンと白パンは、貧富の差のシンボルでした》という一文からは、昔の日本でも麦などの入った雑穀飯と白飯が貧富の差を象徴していたことを思い出した。ビタミンの含有量でいえば白パンより黒パンのほうが多いというのも、麦飯と白飯の関係と重なる。
このほかにも『別腹 VOL.7』には、文学作品をはじめフィクションのなかの食べ物が続々と登場する。読んでいるとたいていは食欲をかき立てられるのだが、そのなかにあってブルボン小林さんが「アニメに出てくるおいしそうでない食べ物」をとりあげているのが、何ともひねくれていておかしい。あと本書で気になったのは、「ムッシュBBの虹食事典」というコーナーの「パイナップルラーメン」の項に出てきた、《西荻窪のラーメン店『パパパパパイン』》なる記述。そんなふざけた名前の店、あるわけないだろ! と思ったら、パイナップルラーメンともども実在するらしい。ほほほほほんとですか!?

■『誠壱のタモリ論2 ナイアガラ代理戦争のまき』(世田谷ボロ市
『別腹』に収載された高原英理さんの小説「林檎料理」には、作中人物たちが『タモリ倶楽部』の怪談特集を話題にのぼらせる場面があり、タモリ文献を蒐集している私としては見逃せない。
さらにタモリ文献といえばこの人、石川誠壱さんは昨秋の文フリの『誠壱のタモリ論』に続き、『誠壱のタモリ論2 ナイアガラ代理戦争のまき』という本を発行していたので迷わず購入した(『1』のほうも、昨年末のコミックマーケットで早くも増補改訂版を出したというので、それもあわせて)。ナイアガラこと大瀧詠一といえば、かつてタモリと組んで制作を進めていたものの結局完成にはいたらなかった“幻のレコードアルバム”が存在する。石川さんはそのアルバムについて、生前の大瀧氏にメールで問い合わせたことがあるそうなのだが、さて、その結果は……。

■『関西ソーカル 2』(関西ソーカル商会)
関西在住のライターなどが寄稿する地域研究同人誌。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

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