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押切蓮介復活!『ピコピコ少年SUPER』ゲームはどんな逆境も支えてくれるのだ

2015年2月12日 10時50分 ライター情報:多根清史

『ピコピコ少年SUPER』押切蓮介/太田出版

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●ピコピコ少年ご本人のガイドで溝ノ口巡り

2014年7月28日の真夏日、JR溝の口駅に集合した男たち。筆者も参加しているゲームレビュー本『超超ファミコン』に収録するルポ取材のためですが、溝ノ口という街のどこにゲームとの特別な縁が? それは押切蓮介先生の漫画『ハイスコアガール』『ピコピコ少年』の舞台となったこと。ガイド役も押切さんご本人で、下町だけど気分は超豪華ツアーでした。
ここは何度も不良に追いかけられた場所。ここが秘密基地を作り、友人同士がケンカしてゲームボーイを投げ捨てられたドブ川……ただ水中に魚がいる!というだけでテンションMAXの僕らに「なんかありますの?」と地元のおばちゃんが覗き込んで来たのもいい思い出。
そんなルポが押切さん視点で描かれた一話が収録されているのが、さる2月5日に発売された『ピコピコ少年SUPER』。「屋上のちびっこランドは今でもあるんですよ」と案内しながら「まるで自分の宝を見せびらかす快感」と思っていたり、7月31日に閉園となることを知って感傷に浸る前に「ツイッターのつぶやきのネタに使える!!」と冷静にうそぶく内心が分かってショック!
そこで「ドブ川を聖地に変える力が俺にはある……」と万能感にひたる押切さん。でも、僕らの感動は正確にはちょっと違う。「ただのドブ川を聖地に変えた目の前のピコピコ少年」に打ち震えてたんです。

●「何者にもなれなかったゲーマー達」を代表する魂の叫び

Web連載空間「ぽこぽこ」にて『ピコピコ少年SUPER』最終回が公開された1月30日はアクセスが殺到して、ページが重くてめくれない……という状態がしばらく続いてました。そのため、以下は人によってネタバレになってしまうかもしれませんが、ご了承のほどを。
このマンガには「ゲームをやっていて美少女とラブラブになった」なんてのは一切ない。フラグは立つこともあるけど、へし折られるために立つ。ゲームのプレイに現世利益のボーナスはなくて、ゲームはゲームだけで完結しているのです。
「溝ノ口のドブ川」が他の街にもあるように、本作の主人公の身の上に起きた出来事は、80〜90年代のゲーマー誰もにあったかもしれないこと。さすがに友達とワリカンで買ったゴムボートで川下り、『グーニーズ』というより『スペランカー』体験できる立地は限られてますが、格ゲー対戦で勝ったら台を蹴られて怖い目をしたり、逆に負けが込んで己のちっぽけさを嫌というほど知らされるのは「いつか来た道」でしょう。

ライター情報

多根清史

1967生。『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)など。

URL:Twitter:@bigburn

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