今注目のアプリ、書籍をレビュー

0

「若者とSNS」について勘違いしてる大人たちへ

2015年5月22日 10時50分 ライター情報:香山哲

『つながりっぱなしの日常を生きる ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの』ダナ・ボイド著、野中モモ訳/草思社

[拡大写真]

アメリカに、ある少年がいました。ある大学に入学願書を送って、受け取った大学職員たちは歓迎ムードでした。願書とともに送られた作文には「地元のギャングたちから離れて、理想とする大学で学びたい」という内容が書かれていて、このような「逆境を乗り越える」姿勢はこの大学の求めるものだったからです。

職員たちは彼をもっと知りたいと思って、彼の名前を検索してみました。今の時代、あらゆる面接や選抜でよくあることです。

彼のSNS「マイスペース」のページがヒットし、そこには「アウト」なことが書き連ねられていました。ギャングのシンボルや、非行、暴言。職員たちは、「なぜ学生は、我々にウソをつくんだ」と思って愕然としました。

職員たちは、分かりやすすぎるぐらいの「SNS勘違い」をしてしまった。こういう例のように、大人がSNSのことや「若者+SNS」での色々な状況をうまく理解できないことは、少なくない。

実際にはこの少年の周囲では、少年院に入るようなことが勲章で、「まともな」世界に旅立つことは強い裏切りであり、許されないことだったりしたのかもしれない。少年が地元のギャングのターゲットにならないよう、SNSでは「目くらまし」のためにわざと悪事を「演出」していたとしても不思議ではない。

さて、旧年度が終わり新年度が始まって連休中に地元に戻る人がいたり、この時期は多くの人が移動して新しい環境になじんでいく。そういう中で、SNSの役割もとても大きいです。

大学合格や就職内定が決まった時点で、まだ学校や会社が始まっていないうちからSNS上ではもう「友達グループ」が組織されていたり、小中学生の親同士までネットワークが作られている。

これだけの「頻度」や「強さ」でFacebookやLINEが使われていても、実際に「小中高生がどんなふうにSNSを使っているか」について「偏見なく、子どもたちのためになるような考え方」ができる人は、どれだけいるでしょうか。逆に冒頭の例のような「文脈や背景を切り離して、悪い方に解釈してしまう」人が、多いような気がします。

『つながりっぱなしの日常を生きる』は、「若者とインターネット」に関する研究者である著者の調査集大成とも言える本。調査の舞台はアメリカですが、10年間近くにわたってインタビューなどを集め、移り行くさまざまなSNSサービスについて丁寧に考察された内容は、日本の若者にも当てはまることが多いです。

ライター情報

香山哲

漫画やゲームを制作するチーム「ドグマ出版」主催。著作に『ランチパックの本』や『香山哲のファウスト1』(文化庁メディア芸術祭推薦作品)など。

URL:Twitter:@kayamatetsu

コメントするニャ!
※絵文字使えないニャ!