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35歳まで超地味な理系女子だったメルケルが、10年もドイツ首相をやれている謎

2016年3月22日 10時00分 ライター情報:香山哲
メルケル首相は、ドイツ初の女性首相だ。それ自体はそんなに珍しいことではないが(ヨーロッパはもちろん、アジアでも多い)、メルケルの場合、政治の道に進む前は物理学者をやっていたり、東ドイツ出身だったり、珍しさがいくつか重なって個性的な首相になっている。
『世界最強の女帝 メルケルの謎』佐藤伸行/文藝春秋

マスコミなど表舞台に出る役職に任命されるまでは、だぶだぶのスカート、適当なサンダル、いつも野暮ったい服装で、髪型もこだわりゼロだった。運動音痴でとことん地味。大臣になってから、しょうがなく一流の美容院に行くようになっても、「灰色のネズミ」と呼ばれていたほどだったという(ネズミは灰色が当たり前なので、「地味で目立たない女性」という意味のドイツの慣用句)。

だが一方で物理学は超得意、ロシア語も弁論大会で優勝するほどの実力。ここまで徹底した「それっぽいキャラ」だと、漫画の登場人物みたいだ。かっこいい。

ドイツ歴代最年少の51歳で首相になり、アメリカの経済誌『フォーブス』では「世界で最も影響力のある女性」に5年連続選ばれるようなメルケルだが、その生い立ちや考え方については、かなり謎の多い女性だ。

メルケルは自分自身で自伝を出版したことが無いが、彼女を分析した本は数多く出ている。『世界最強の女帝 メルケルの謎』は、彼女の人生や政治手法に関する本なども参考にしつつ、「予備知識が無くてもざっくりと彼女について手軽に知ることができる本」だ。

まずやっぱり、誰もが気になるのは、「物理学者が首相になるってどういうこと?」って話だ。

35歳まで物理学者だったメルケルは、東ドイツにいる時から「こんな社会主義体制は長く続かないだろう」と思っていたそうだ。ベルリンの壁が崩壊してすぐ、研究所を辞職して政治の道に進みだした。不安定な情勢の中、堪能なロシア語を評価されたりしながら、どんどんと出世していった。

政治で何をしたいのかという「野心」については謎に包まれているが、彼女が政治を選んだ転機は「壁の崩壊」ということになるかもしれない。多くの人の人生を瞬時に変えるほど「東と西の融合」は衝撃的だったし、東西は何十年間も完全に別世界だった。メルケルは大臣になったときにもまだ、資本主義的な産物、たとえばクレジットカードの使い方やスヌーピーの存在も知らなかったというくらいだ。

父親は牧師。日本のような世襲議員は一般的ではないが、それでもドイツの政治家は若い頃から専門的に政治を学んでいる場合が多い。
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ライター情報

香山哲

漫画やゲームを制作するチーム「ドグマ出版」主催。著作に『ランチパックの本』や『香山哲のファウスト1』(文化庁メディア芸術祭推薦作品)など。

URL:Twitter:@kayamatetsu

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