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マンガ大賞2016受賞『ゴールデンカムイ』は、8年ぶり2度めの"異変"だった

2016年3月31日 09時50分 ライター情報:松浦達也
今年のマンガ大賞で異変が起きた。今年の受賞作は野田サトルの『ゴールデンカムイ』。男性作家の受賞は、実に第一回の2008年、『岳』の石塚真一以来となる。そう書くと、「作家に男も女もない」というお叱りもあるかもしれないが、9年間続くマンガ大賞のなかで、いままでひとりしか男性作家が受賞していなかったことも含めて、今年の『ゴールデンカムイ』の受賞はやはり"異変"なのだ。以降のマンガ大賞の受賞作を列挙する。
記念画は9回目にして、初めてのカラー原稿(デジタル原稿)に。

2009年『ちはやふる』末次由紀
2010年『テルマエ・ロマエ』ヤマザキマリ
2011年『3月のライオン』羽海野チカ
2012年『銀の匙』荒川弘
2013年『海街diary』吉田秋生
2014年『乙嫁語り』森薫
2015年『かくかくしかじか』東村アキコ

現代マンガに求められる多様性


第二回以降、見事に女性作家の作品が並ぶ。そしてこの女性作家の台頭のなかに、近年のマンガにおける大きな趨勢が見て取れる。キーワードは"多様性"だ。

例えば2009年の受賞作、『ちはやふる』。舞台設定から見れば、"競技かるたマンガ"だ。だが、物語の展開やキャラクターの描かれ方は、「友情」「努力」「勝利」をテーマに掲げる少年誌のスポ根マンガのよう、と評されたりもする。その一方で、少女マンガの王道とも言えるほのかな恋模様(しかも三角関係)も描かれている。そのほかの受賞作、『3月のライオン』『海街diary』なども、一言で「××マンガ」とカテゴライズしづらい作品が多い。

近年では男性誌と女性誌の垣根が低くなり、女性作家が男性誌で書くことは増えた。いっぽう男性作家が、女性誌で書くケースはあまりない。「男性の書き手が、女性の気持ちを汲み、女性読者にスムーズに伝わるようなものを書くのは難しい」(編集者・30代・女性)と言われるのも理由のひとつ。読者に伝わる要素が数多く求められる時代に、恋愛という切り札が使えない(と思われている)。マンガ大賞受賞作が7年連続女性作家だったのは、たぶん偶然ではない。

ところが、今年の受賞作『ゴールデンカムイ』はそうしたハンデを軽々と超えてきた。しかも恋愛要素を使わず、そのほかの要素を「ジャブジャブ」と音が聞こえるほど惜しげもなく投入した。もしかすると、マンガ史上最高に要素もりもりな作品と言えるかもしれない。

ちなみに、公式サイトの「あらすじ」は以下のようになっている(原文ママ)。

「舞台は気高き北の大地・北海道。

ライター情報

松浦達也

ライター/編集者にして「食べる・つくる・ひもとく」フードアクティビスト。マンガ大賞選考員。著書に『大人の肉ドリル』、『新しい卵ドリル』(ともにマガジンハウス)など

URL:Twitter:@babakikaku_m

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