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ウェブ小説発で40万部突破の理由は 住野よる『君の膵臓をたべたい』

2016年4月4日 18時00分
ライター・編集者の飯田一史さんとSF・文芸評論家の藤田直哉さんの対談。今回は小説『君の膵臓をたべたい』を扱います。

定期的にでる難病モノのヒット作


『君の膵臓をたべたい』(住野よる著、双葉社)

飯田 住野よる『君の膵臓をたべたい』は「小説家になろう」に掲載されたのち双葉社から刊行され、デビュー作ながらすでに部数は40万部以上。2015年に登場した新人作家の中では又吉直樹に次ぐ人気(売上)と言われています。で、2016年の本屋大賞の有力候補にまでなっている。藤田くんの嫌いな難病ものですがw
 ヒロインが病んでいる部位が膵臓だと。ジョブズがやられたのと同じところですね。川島なお美とも同じと言えるわけですが、川島なお美だと思って読まない方がいいでしょう……。

藤田 本屋大賞ノミネートで「ダ・ヴィンチ」のBOOK OF THE YEAR2015第二位、どうやって測ったのか不明ながらも「読書メーター」読みたい本ランキングで第一位、と。
「難病」と「純愛」のセットは、定期的にヒット作が出ますねぇ…… 『世界の中心で、愛を叫ぶ』とか。
 ぼくは難病モノが嫌いなのは、あざといからなんですよ。純愛で、死ぬと分かってて、死んだら、そりゃ悲しいでしょ。普遍的に悲しいでしょ。そこでストップしてしまうと、文学じゃないんですよ。それは誰しもが経験するし、共感できる。その先のユニークさ、固有性の次元にまで行かないと、「またこのパターンか」って飽き飽きしてくるんですよ。

飯田 周期的に来るタイプの良作ですよね。その時代その時代に書き継がれていくものというか。

藤田 仕掛けとしては、主人公(男)が本好き。ヒロインは本好きじゃないけど、遺書的な本を書いている。という意味で、「本の本」系の作品でもありますね。

飯田 主人公は名前がずっと伏せられている(変な表記になっている)んだけど、それとヒロインの手記にまつわるギミックが終盤で絡んでいることがわかって、それが泣かせに使われている。

『君の膵臓をたべたい』は言語SFなんじゃないか!?説


藤田 気になったのは、主人公が【仲のいいクラスメイト】くんみたいに表記されることで、伊藤計劃の『ハーモニー』のetmlみたいに読むのか? とか思ったりした。夢小説とかだと、ここに自分の名前を出せるわけだけど。
 ちゃんと最後に仕掛けが用意されていたのはポイント高いですね、名前の部分は。ただ、具体的に考えると、よくわからないんですよ。病気の彼女が書いた手記の中での記述がああなるのはいいとして、地の文の方は男が書いているわけだから……なんか叙述トリックか何か仕掛けられているのでないとおかしいんですよね。
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