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アインシュタインとフロイトの手紙『ひとはなぜ戦争をするのか』を読み解く

2016年8月15日 10時00分 ライター情報:千野帽子
日本が第2次世界大戦に敗れた日から71年。
この夏、アインシュタイン+フロイト『ひとはなぜ戦争をするのか』(浅見昇吾訳)が文庫になった(講談社学術文庫Kindle)。

このわずか100ページほどの小冊子を、敗戦の日を前に読んでみた。

アインシュタインがフロイトに書いた手紙


1932年、物理学者アインシュタインは、国際連盟の国際知的協力機関から依頼されて、
〈だれでも好きな方を選び、いまの文明で最も大切と思える問いについて意見を交換〉
することになった。

アインシュタインの選んだテーマは、
〈人間を戦争というくびきから解き放つことができるのか?〉
というものだった。

アインシュタインは、第1次世界大戦(1914-1918)中から戦争に反対する発言をしていたし、またそもそも国際連盟という機関が、第1次世界大戦後に発足した国際平和機構だ。
だから、国際連盟がこの企画にアインシュタインを選んだということ自体、意見交換の主題が戦争と平和になるということは間違いないことだったのではないか。

アインシュタインが問を投げかける相手として選んだのは、精神分析の創始者・フロイトだった。
宇宙観に大きな発展をもたらした知性が、人間観に大きな変革をもたらした知性に、戦争について質問を投げかけたのだった。

いまだに平和が訪れていません


アインシュタインの公開書簡(1932年7月30日、ポツダム近郊カプート発)は、フロイトにこう語りかける。

〈真摯な努力にもかかわらず、いまだに平和が訪れていません。とすれば、こう考えざるを得ません。
 人間の心自体に問題があるのだ。人間の心のなかに、平和の努力に抗う種々の力が働いているのだ〉

〈あなたの最新の知見に照らして、世界の平和という問題に、あらためて集中的に取り組んでいただければ、これほど有り難いことはありません〉

知性は欲動をコントロールできるか?


1932年9月、フロイトはウィーンから、この手紙に長い返事を書いた。
この返信のほうは、『人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス』(中山元訳、光文社古典新訳文庫Kindle)にも収録されている。

ここでフロイトは、人間には〈破壊し殺害しようとする欲動〉がある、と述べている。

第1次世界大戦終結の2年後、国際連盟が設立された1920年に、フロイトは「快感原則の彼岸」(中山元訳、竹田青嗣編『自我論集』所収、ちくま学芸文庫)で、反復強迫(トラウマ的な体験を,意識せぬまま行動で反復する現象)の背後に、〈死の欲動〉(タナトス)が存在すると考えていた。

ライター情報

千野帽子

文筆家。著書『読まず嫌い。』(角川書店)『文藝ガーリッシュ』(河出書房新社)『俳句いきなり入門』(NHK出版新書)など。公開句会「東京マッハ」司会。

URL:Twitter:@chinoboshka

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