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偏差値・正社員・結婚・マイホーム・親戚付き合いで無理しないでいい『ひきこもらない』の提案

2017年7月10日 10時00分 ライター情報:香山哲
「ひきこもらない」というタイトルだ。いわゆる「ひきこもり」向け、というわけではない。
『ひきこもらない』pha(ファ)著/幻冬舎

学校を出て、定職に就き、決まった家に定住し、近所付き合い・親戚付き合いをし、特定の相手とずっと結婚状態を維持したりクルマ買ったり。戦後日本の「あたりまえ」とか「普通」の数々に居心地の悪さをおぼえ、「こんなことはできないな」という感じのphaさんが著者だ。家、街、常識、普通、そういうフレームの中に「ひきこもらない」ために考えたことや編み出した方法が、雑多にゆるく書かれている。

エッセイのような文章が集まった本で、章タイトルをいくつかあげると、
・街を家として使ってみる
・チェーン店以外に行くのが怖い
・スーパー銭湯があれば戦える
・旅と定住のあいだ
・小笠原諸島で何もしなかった
・ニートが熱海に別荘を買った話
って感じだ。

1つの仕事に打ち込み、1つの土地に住み続け、1つの家族を営み続ける。どれも素敵に思える人もいるだろう。実際、多数のサラリーマンがこのスタイルをとってきて、今も選ばれている。だけど当然、何かしっくりこない人も多いはずだ。また、このスタイルに適応しすぎて転勤や解雇、急病で痛い目にあう人も多い。無理に多数派に合わせずに、部分的にでもスルっと離脱すればよい。せっかく今、21世紀なのだから。

風呂や冷蔵庫など、シェアした方が節約になる物はどんどんシェアしていく。混んでないファミレスを狙って仕事場にする。そういう具体的な生活について書かれていたり、サウナや放浪など、彼なりの気分転換の方法が書かれていたり、ここ10年ぐらいの「phaの生活」の一部を追体験できる感じだ。

たとえば、昼間の高速バスに乗って移動するのが楽しいらしい。知らない街に行って特に何もせずビジネスホテルに泊まって帰ってくるだけで、またすこし日常をやる気になるらしい。サウナの楽しさを知って、皮膚が喜んでいる感じがあり、「今までいかに脳や目や舌などばかりを喜ばせてきたか」を実感したらしい。全部phaさんの個人的なできごとだけど、なんとなく共感できることや、「僕もやってみようかな」と思えることがある。そしてそのどれもが「ほんの少しだけど、自分が苦しいと思っていた概念を砕いたり溶かしていく発端や習慣」になっている。

いきなり自由な人間になるのはむずかしい。シェアハウスを運営したり、会社勤めをせずにファミレスで文筆やって収入を得たり、phaさんみたいなことをやろうと思ってもなかなかできない。

ライター情報

香山哲

漫画やゲームを制作するチーム「ドグマ出版」主催。著作に『ランチパックの本』や『香山哲のファウスト1』(文化庁メディア芸術祭推薦作品)など。

URL:Twitter:@kayamatetsu

コメント 2

  • 匿名さん 通報

    とりあえず生きるにはどんなでも構わない。だけど、老後の安心まで長期で考えるなら社会人の大半は今の社会では不安を抱く。現役時代の所得の4割が受給年金額の目安なので、それで老後生活出来るか判断しよう。

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  • 匿名さん 通報

    今の時代、過大な自由なんてあっても選択肢の方が無いので意味は無い。なら、みんな平等を理想とする共産主義社会の方が本当は将来には優しいんじゃなかろうか?

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