2018年9月21日にAppleよりiPhone XS/XS Maxが発売された。今回はiPhoneXSのゴールド(256GB)を購入し、実際に3日ほどあれこれ使ってみたのでレビューしたい。

iPhoneXSは買いなのか、超ていねいに検証、ポートレートモード使い込んでみた
公式ページより。画面の「黒」の美しさを謳っているためか、黒が基調となっている

なお、今回はiPhone 7からiPhone XSへの機種変更をしたため、iPhoneXを使っていたわけではないということをご了承いただきたい。また、普段は主にiPhoneをSNS、ゲーム、地図、読書、メモ、カメラに使用している。撮る対象は主に料理や醤油やお酒や景色やいけず石で、人はあまり撮っていない。

これだけスマートフォンの使い方が多様化されている中で、どのように使っている人が書いたのか、視点が明らかになっている方が参考になりやすいと思うからだ。

移行時の注意


iPhoneのデータ移行は、基本的にはiTunesなどで「暗号化バックアップ」が簡単だ。パスワードなどもそのまま移行してくれるため、貴重なゲームのデータも引き継ぎをしないで移行できることが多い。

ただ、今回は結構失敗している人が多いようだ。
原因の一つは、OSのバージョン。
接続をするためにはMacだったらMac OSX High Siera(10.13)以降、iTunes12.8以降、iPhone側はiOS12.0以降が必須となる。Adobe製品などの関係でMacのバージョンを上げられない人が、はまったりしているようだ。

さらに、バックアップをとるために、初期バックアップにはデータと同量以上の容量がどうしても必要になる。これは、データを暗号化処理するため、どうしても空き容量を必要とするためだ。

そのため、
・最新の状態になっていない
・容量が足りない
環境で、接続を失敗したり、バックアップを取るのに失敗したり、データ移行に失敗している人が出ている。


この辺の解決方法は、OSのバージョンを最新にしたり、容量の大きいHD/SSDに交換したりするのが一番といえば一番だが、iCloudの容量を大きくするという手もある。200GBだと月400円(200GB以上ある人は2TBプランで月1300円)にして、バックアップおよび移行作業が終わったら元に戻せばいい。

また、ApplePayのデータは暗号化バックアップでは移行されないことにも注意したい。移行する場合には、古い方の機種でカードを削除するとそのデータがiCloudに退避されるので、新しいiPhoneでWalletアプリを起動し、カード新規追加ボタンを押すとiCloud上のカードを選択できるようだ。

ようだ、と書いたのは、その作業をせずに下取りに出してしまったため、確認ができなかったからだ。筆者はそれでうっかり600円分ぐらいのSuicaデータを失ってしまった(元のSuicaカードは処分していたのでカード番号もわからない)ので、同じ轍は踏まないで欲しい。


質感はかなりいい


データの移行が終わったら、ようやくiPhone XSを本格的に触っていける。まず、大きさだが公式ページの画像が参考になる。
iPhoneXSは買いなのか、超ていねいに検証、ポートレートモード使い込んでみた
公式ページより。iPhoneXs、iPhone7/8、iPhoneXs Maxの大きさの違いがわかる

iPhone7/8に比べると、一回り大きい。ここでポイントになるのは、縦の長さよりも横の幅だ。

片手でiPhoneを操作する際には、どうしてもiPhoneを手のひらと親指以外の指を使ってホールドする必要がある。その際に、幅が大きすぎるとホールドするのが難しい。

片手で操作をしなければいいじゃないかという話もあるが、筆者の場合は比較的道に弱いため、歩きスマホと呼ばれるほどがっつりではないが、外で地図を出してiPhoneを片手に移動することが多い。
そんなの、チラッと見て、iPhoneをしまって行動すればいいじゃないかと思う人もいるかもしれないが、これが意外と見続けないと容易に違う道に入ってしまうのだ。不思議なことに。

そして、iPhone XSは筆者の手と指の長さ的には結構片手でホールドするのがつらかった。この辺は、ケースにリングをつけたり、他の方法で解決したいと思う。同じように片手で操作しなければならないタイプの人は、あらかじめ手に持って片手で操作できるかを確認した方がいい。本体のみでギリギリだと、ケースをつけると難しくなるということも覚えておこう。


その本体だが、はっきり言って、美しい。
iPhoneXSは買いなのか、超ていねいに検証、ポートレートモード使い込んでみた
今回のiPhoneXsはさまざまな部分が美しい

ステンレススチールのフレームは輝いているし、背面のガラスも、なんというか見ているだけでうっとりとする。
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背面もガラスが美しい。が、やはり個人的にはカメラの出っ張りが気になる

それだけに、カメラの出っ張りが……
これさえなければ、「スマートフォン史上最も強靱なガラス」を信じて最小限のケースでもいいかな(その方が横幅的に便利だし)とも思ったが、やはり机の上に置くとガタガタとし、そこでガラスに頻繁に衝撃が加わるとなんとなく不安になるのでしっかりと覆うケースを採用した。値段も値段なため、擦り傷でもつこうものなら半日以上落ち込みそうだったというのもある。

あと、スピーカーも左右で少し異なり、シンメトリではないのは、少しだけ残念だった。
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スピーカーの穴の数は左右で異なる

カメラの性能はかなり高い


そのでっぱりが大きいカメラだが、かなり性能が高い。

一番の売りは、やはりポートレートモードだろう。

人物を撮るときに背景をぼやかせて、浮きだたせるようにするモードだ。カメラを起動し、モードを「ポートレート」にすると起動できる。それで撮った写真がこちらだ。人物ではないのは容赦して欲しい。
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後ろがしっかりとボケている

ポートレートモードだと、望遠になるためか、ズームになる。上記の写真を撮ったのと、全く同じ距離で通常のカメラモードにするとこれだけの差が出る。
iPhoneXSは買いなのか、超ていねいに検証、ポートレートモード使い込んでみた
かなり遠い距離から撮影しているのがわかる

距離をとらないとうまくとれないものの、後ろをボケさせてくれるのは楽しい。料理は距離が必要だから難しいが、街中にあるいけず石などは結構面白く撮れる。
iPhoneXSは買いなのか、超ていねいに検証、ポートレートモード使い込んでみた
街中にあり、車が家などにぶつからないようにする「いけず石」の写真を撮るのが最近のマイブームだったりする

撮った写真は、後からボケを調節することも可能だ。「写真」で開き、「編集」を選ぶと被写界深度を調節できる。
iPhoneXSは買いなのか、超ていねいに検証、ポートレートモード使い込んでみた
ポートレートモードで撮った写真は、後から被写界深度等を編集で変えられる

また、使ってみて意外とすごいと思ったのが、夜景だ。スマートHDRによって、明暗がはっきりしているような画像もいいようにしてくれるということは聞いていたが、実際に使ってみて驚いた。

暗い雰囲気のある路地や
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路地も雰囲気ばっちりに撮れる

いわゆる夜景も、かなり綺麗に撮ってくれる。
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電光掲示板の文字も読めるぐらい、綺麗に撮れる

両方とも、適当というか、カメラアプリを起動して、何もせずそのまま構えてシャッターを押しただけだ。

加工するのも楽しいが、なんか加工って面倒だし、そのまま撮れればいい、という人も多いと思う。いわゆる、デジカメにあるインテリジェントオートのような、とりあえず周囲の状況を見て適切にしてくれる部分が、従来よりもかなりパワーアップしたと感じた。

画面は大きいが大きくない?


もうひとつ、売りになっている大画面だが、この評価はちょっと微妙だ。

というのも、確かに画面は大きい。大きいが、その大きさを感じられる機会が意外と少なかった。

たとえばホーム画面のアイコンは、iPhone7のときと同じ数しか表示されない。これが、1列増えていたりすると、画面が広くなったなーと感じられるのだが、同じ数だとちょっと指が届きにくくなっただけだな……となってしまう。違和感を感じさせないという意味では正解なのかもしれないが、画面の広さを堪能したかった。

他にも、これはアプリ側の問題も大きいとは思うが、一画面内に表示できる情報量があまり増えていないことが多い。Twitter公式アプリとかは、文字の大きさを一番小さく設定しても、プロモーション広告ツイート1つで画面がうまってしまったり、2〜3個ツイートしか表示できないことが多い。画面が広くなっても広告だけで埋まるんじゃなあ……という理由で、違うアプリを現在模索中だ。

また、ゲーム「Fate/Grand Order」のように、画面内に枠があるおかげでかえって画面を小さく感じられるものもある。
iPhoneXSは買いなのか、超ていねいに検証、ポートレートモード使い込んでみた
「Fate/GrandOrder」では画面の「枠」が表示されている。ゲームは中心部分だけで展開される

ちなみに、画面をめいっぱい使っているゲームもある。「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」では、横を広げ、縦を少し削って画面いっぱいにアイドルを表示している。
iPhoneXSは買いなのか、超ていねいに検証、ポートレートモード使い込んでみた
「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」では、画面をいっぱいに使っている。ちなみにこれは機種変更した後のガシャで出たアイドル

もちろん、画面の広さを実感できるアプリもある。一番は、電子書籍だろうか。たとえばKindleで文章の本を読むとこのように表示できる。
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Kindleなどでリフロー型の本を読むと、かなりの情報量になる

リフロー型の本は、このぐらい表示できる。これは素晴らしい。
一方で漫画はどうしても余白ができてしまう。
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一方で漫画はどうしても上下に大きな余白ができてしまう

このように、画面の広さは、情報面ではあまり実感できる部分が少ないという感想だ。
これは普段の画面でもそうで、たとえば情報が減った部分もある。画面上部の切り欠きの左右に情報が追いやられた結果、バッテリーの残量%を表示できなくなったのだ。コントロールセンターを出せば表示されるが、残り容量をいちいちコントロールセンターを出さなければ把握できないのは、正直少し煩わしい。

画面の広さを一番実感するのは、画面上部のメニューに指を届かせようとしたときだけだろうか。

もっとも、iPhone7のときとほとんど同じような感覚で(バッテリーの残容量以外)、違和感が全くなく作業ができているというのが狙いなのかもしれない。だが、これからX系の画面の大きさが主流になっていくのだとしたら、是非とも各社に情報量が多いモード(文字の大きさをもう少し小さくしてギュウギュウにできるモード)を期待したい。

ソフトウェアの対応は不十分?


また、ソフトウェアの対応も、原稿執筆時点ではかなり微妙なものがある。

たとえばシャッター音を消して写真を撮れるので愛用していた「Microsoft Pix」は、起動するものの、シャッターを押すと写真を保存にまでいかず、画面がフリーズしてしまう。
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「Mixrosoft Pix」で写真を撮ろうとすると、シャッターを押したらこの画面で固まってしまう。ちなみに画面左のメニューも、表示させようとすると「切り欠き」の下に入ってしまい、選択できない

また、前述の「Fate/Grand Order」では、画面が常にカクカクして、滑らかに動いてくれない。

この辺りに関しては、たまたま友人のプログラマと話す機会があったので質問をしてみたところ、おそらくA11からA12に変わり、処理方法が変更されたのでおかしな動きになっているのだろう、とのこと。シミュレーター上では問題がなくても、実機では変な動きになることがあり、それは実機が手に入らないとどうしようもない。そして、ユーザーと開発者が新しいハードを手に入れるのは、ほぼ同じタイミングのため、どうしても発売直後には対応が間に合わないことがあるとのことだ。

常用アプリがうまく動かないと困るという人は、下取りをするのだったら後日扱いにし、しっかりと対応された後に旧機種を手放した方がいいかもしれない。

Face IDは精度が高い


最後にひとつ、iPhoneXから作用されたFace IDは、意外と精度が高くて面白い。寝起きの顔では認証に失敗することはあったものの、そこそこ薄暗くても割と的確にロックを解除してくれる。

Qi充電に対応しているため、充電をしながらMacの横に置き、通知がきたら目線を送るだけでロックが解除される、みたいなことを試している。
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たてかけるタイプのQi充電は通知も見やすく便利だ

このあたりに関しては、またいろいろと試してみたい。

結局「買い」なのか


現時点は、iPhone XS購入は常用アプリがどうなっているかで判断した方がいいだろう。大きさ問題に関しては、ケースやリング等の力で解決ができると思うからだ。

毎日使うアプリがうまく動かなくて(そしてなかなかそれに代替するものがない場合)は、意外とストレスが溜まるからだ。かなり高い買い物をして、(そのアプリを動かしているときは)前の方が良かったと思うのは、結構つらい。

画面の美しさや、写真の簡単さはかなり大きい。「黒」が綺麗とうたわれていたが、実際に見てみると本当に素晴らしくてびっくりした。このあたりを重視するなら、「買い」だ。そうでないなら、もう少しアプリの対応状況を見てからの方がいいと思う。
(杉村 啓)