今注目のアプリ、書籍をレビュー

0

『かぐや姫の物語』考察。「姫の犯した罪と罰」とは何か

2013年11月26日 11時00分 ライター情報:久保内信行

『かぐや姫の物語 ビジュアルガイド』スタジオジブリ監修/角川書店

[拡大写真]

原作に忠実と言われるストーリーこそ、その精神がもっとも現れているとも言えると思います。

・疾走するかぐや姫の“罪と罰”とは?

ここで、『かぐや姫の物語』のキャッチコピー「姫の犯した罪と罰」という言葉を思い返してみましょう。ここで書かれる罪と罰は、原作『竹取物語』では、姫は犯した罪を償うために地上に降ろされたと書かれていることからとられていると言われています。高畑勲監督も、そのかぐや姫の罪についての回答も込めたと発言しています。その回答は『かぐや姫の物語』内で、「虫や鳥や動物たちのように生きること」に憧れたせいだと語られています。これは生命の営みそのもののことであり、現代の感覚では罪に問われるようなことではありません。ふさわしい言葉を探すなら、それは「原罪」とでもいうべきものでしょう。
ここで思い出されるのは、小説家ドフトエフスキーの生きる原罪について深い洞察をもった作品『罪と罰』です。貧しい元大学生ラスコーリニコフが娼婦ソーニャの自己犠牲精神にあふれた生き方に心を打たれるこの小説は、普遍的な本質よりも人間の存在・実存を中心に置く実存主義的な側面をもち、現在の人間像のベースに大きな影響を与えました。

『かぐや姫の物語』のかぐや姫も、絶対であるはずの育ての父親・竹取の翁の願いを一貫して否定し、『竹取物語』の成立した時代からは想像しにくいほど、現代に近い心情や意志をもった人間として描かれています。現代的な自立した意志をもつ高畑版かぐや姫と、心情についてはほとんど記述されず、五人の求婚者を断る理由が「じつは月世界の住人だから」だった日本最古の物語『竹取物語』。画面作りでも表現されていた、現代・西洋的なものと伝統的なものとの共存がストーリーでも生まれているのです。

このような現代的な意識を持った人間が過去を舞台に活躍するストーリーは、それだけをとってみるとじつは枚挙にいとまがありません。司馬遼太郎の一連の小説をはじめ、主人公がタイムスリップして戦国時代などで大活躍するようなアニメなど、多種多様な物語が生み出されています。これらは、借景小説ともいわれ、舞台装置は過去のものを使っているが内実は現代小説だったりするのです。

『かぐや姫の物語』はこれらとも一線を画します。作中に登場するかぐや姫の初恋の相手・捨丸との出会いも、幻想的な一瞬の愛の交歓シーンはあくまではかない夢でしかなく、捨丸はすでに子持ちになってしまっています。

ライター情報

久保内信行

文筆業

コメントするニャ!
※絵文字使えないニャ!