できるだけ冒険して「そんなことアリッ!?」って言わせたいって、そう思って書いています。
童話作家・角野栄子さんは、朗読を終えて語った。

2014年2月27日木曜日、場所は日本橋三越本店三越劇場。
文芸フェス前夜祭「響きあうことばたち 日常とファンタジーの間」
大貫妙子(シンガー・ソングライター)、いしいしんじ(小説家)、角野栄子(童話作家)の三人の朗読会だ。

大貫妙子さんの朗読は、
串田孫一の随想
ヘンリー・デイヴィット・ソロー『森の生活』
高知県立牧野植物園「樹と言葉展」のために書いた「名のない大樹」。

すっと空気が変わる。

森のなかの小屋。ゆっくりと倒れる木。太陽の光。
イメージが浮かぶ。
静けさが深くなる。声が響く。

朗読の区切りで大貫さんが言う。
咳してもだいじょうぶですよ。がまんしてると喉がぐっぐっってなっちゃいますから。
「魔女の宅急便」ナレーション起用秘話も。文芸フェス前夜祭レポ

続いて、いしいしんじさん。
机と椅子が横向きに設置される。
いしいさんが客席から登場し、白紙の紙と鉛筆を取り出す。

その場で小説を書きながら読む、読みながら書くのだ。
80回ぐらいやってるから、だいじょうぶだろうかって不安はないです。
いままでにやった即興朗読執筆作品のうち54作品は『その場小説』という本にまとまっている。
「首都圏を中心に記録的な豪雪がふり、東京の機能はほぼすべてストップした」と書きながらの朗読がスタート。
日本橋の三越百貨店本店(朗読会場だ!)前の雪だまりから、身の丈五メートルもあるライオンが現れて……。
終わると、書いた紙を数える。

5枚あるから、プレゼントします。
会場「おーっ」とわく。
1人1枚だけプレゼントするので、私は1ページ目、ぼくは2ページ目ってもらった人で確認して、いっしょに飲みにでもいってコピーしてそろえたりしてみてください。
粋なはからいだなー。
「魔女の宅急便」ナレーション起用秘話も。文芸フェス前夜祭レポ

そして、角野栄子さん。
朗読は四回目とのこと。

以前、朗読したときに、それを聞いたプロデューサーに映画のナレーションを依頼されたそうだ。
つまり、3月1日公開の実写版『魔女の宅急便』のナレーションは、角野栄子さん。
ほんとにびっくりしたんだけど、童話のおばあちゃんの声なんだよ!
姿や、そこにいる感じも、なんだか童話から抜けだしたような強さとかわいらしさ。
この時点で、ぼくは実写版『魔女の宅急便』を観に行くことに決めました。
童話「おかしな うそつきやさん」を朗読。
「うそつき きつつき おもちつき きねつき かねつき うんがつき」
テーマソングを口ずさむ「うそつきや」のおばあちゃんのお話。

うそのりょうきんは、あくしゅ三かい。
めちゃくちゃキュート!
最後に、最新作『ナーダという名の少女』のあとがきを朗読。
「魔女の宅急便」ナレーション起用秘話も。文芸フェス前夜祭レポ

朗読する姿を見て、声を聞いて、耳をすまして、想像がひろがっていく。
3人集まってのトークもなくて、イベントはとてもシンプルな構成だったけれど(いや、だからこそ)、声と言葉がイメージとしてしっかりと残った。
こういうレポートのときは、出演者の名前に「さん」をつけないのが普通だ。
角野栄子さんじゃなくて、角野栄子。
いしいしんじさんじゃなくて、いしいしんじ。
大貫妙子さんじゃなくて、大貫妙子。
ベートーベンに「さん」をつけないように、つけない。
でも、なんだか「さん」をつけたくなったので、今回だけ「さん」づけのレポートになった。

終わった後、会場にいたいしいしんじさんに「もらった1ページだけエキサイトレビューに掲載していいですか?」って聞くと、「いいよ。5ページ集めたら全部載せてもいいよ」って答え。
おおおー!
ってことで、いしいしんじ「雪」5ページ掲載です!(いしいしんじ「雪」(その場小説)全5枚

「文芸フェスティバル」は2014年2月28日から3月9日まで。
東京でたくさんの文芸イベントが開催される。
全貌と詳細は公式サイトを見てもらうとして、いくつか紹介しよう(チェックした時点で定員に達してるものは入れてないよー)。

「BOOK STREET」
3月1日(土)・3月2日(日)10:00~16:00(予定) ※雨天中止
駒沢オリンピック公園 中央広場
青空公演、楽団演奏、読み聞かせ、カフェなど、公園に本の広場が出現。

「SHARED」
3月1日(土)21:00~29:00(翌朝5:00)
シェアードテラス 外苑いちょう並木
建築、アート、文芸など、カルチャーのジャンルを超えた人々が集い、シェアする場。
読み終わった本で誰かにおすすめしたい文庫本を1冊持っていくと1ドリンクサービス!

第150回記念「芥川賞&直木賞フェスティバル」
3月1日(土)、2日(日)11:00~18:00
丸ビル1階「マルキューブ」
出演:綿矢りさ×道尾秀介 桜木紫乃×島田雅彦 宮部みゆき×北村薫×桜庭一樹 川上弘美×北方謙三 辻村深月×円城塔 角田光代×奥泉光×鵜飼哲夫 林真理子×浅田次郎

第4回Twitter文学賞 結果発表座談会
3月2日(日)17:00~20:00
MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店
出演:大森望、佐々木敦、杉江松恋、豊崎由美、石井千湖
2013年に出た新刊小説の中で面白かった本を国内海外各1作品だけTwitterで投票する文学賞の結果発表式!

「外国人と読む大人の絵本読書会」
3月2日(日)14:00~
墨田区立ひきふね図書館
都内の外国人(留学生)と区民がオススメ絵本を持ちより紹介する読書会。

村上春樹合コン
3月2日(日)19:00~
SNOW SHOVELING BOOKS & GALLERY
村上春樹好きのための交流会。

日本の小説を世界の読者に届けるには?
3月2日(日)17:40~18:40
早稲田大学 27号館 小野梓記念館 地下2階
出演:トニー・ゴンザレス、アレクサンダー・O・スミス、円城塔
翻訳出版社BentoBooksの二人に、円城塔が今後の展開を聞き尽くす!

六本木BUNGEIナイト!
3月7日(金)18:30~21:00(開場17:30)
出演:ロバートキャンベル 、水村美苗、 小野正嗣 、デイヴィッド・ミッチェル、ルース・オゼキ、ジェフリー・ユージェニデス

『ほんとうのうた~朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って~』
3月9日(日)11:00~(開映)
渋谷・ユーロスペース
小説家・古川日出男、詩人・管啓次郎、音楽家・小島ケイタニ―ラブ、翻訳家・柴田元幸が作り上げた朗読劇「銀河鉄道の夜」のロード・ドキュメンタリー。

ミステリー小説入門
3月9日 12:45~13:45
早稲田大学 27号館 小野梓記念館 地下2階
出演:中村文則、デイヴィッド・ピース (司会 杉江松恋)

他にも、たくさん!
「東京国際文芸フェスティバル」公式サイトでチェックしてみよう。
(米光一成)