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あの衝撃の結末からどうなるのか。大人気英国貴族ドラマ「ダウントン・アビー」4スタート

2015年6月1日 10時50分 ライター情報:千野帽子
NHK総合で放映されていた、英国ITV製作の人気連続ドラマ『ダウントン・アビー』第3シーズンが、昨日(2015年5月31日)で完結。
スターチャンネルでは同日25時(6月1日1時)からシーズン4に突入した(スターチャンネルは契約していないので、僕は観ていない)。
「ダウントン・アビー シーズン3 DVD-BOX」NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

日本放映版のシーズン3のラスト2話は、長尺のクリスマススペシャルを前後篇に分割したものである。
最終話の結末はあまりにショッキングだった。
グランサム伯爵家の財政危機を救って、領地の経営改革に乗り出し、妻メアリとのあいだに子ども(しかも男子)をもうけた直後の、順風満帆を絵に描いたようなマシューが、産院を見舞った帰りにオープンカーでトラックと衝突してしまったのだ。
森の地面に横たわり、血まみれで目を見開いたままのマシューのアップ。前シーズンの結末がクリスマスに求婚するという超弩級の大甘な味つけだったのに比べると、スパイシーにもほどがある。
そもそも、マシューが伯爵家長女メアリとの間に「男子」を得たことには重要な意味がある。英国の歴史ドラマや19世紀小説でおなじみの限嗣(げんし)相続(entailment)のシステムに、グランサム伯爵家もまた縛られているのだ。

男子限嗣相続というファクター



『ダウントン・アビー』の舞台は約100年前のイングランド。ヨークシャーにあるグランサム伯爵家の邸宅の名前が、ドラマの題になっている。
シーズン1から2にかけては、長女メアリの当初の婚約者パトリック(父伯爵のいとこの息子)がタイタニック号とともに沈んでしまい、女子しかいない伯爵家の今後がどうなるか? という興味で引っ張ってきた。
シーズン3では遠縁のマシューがメアリと無事結ばれ、伯爵家存続面での興味の重心が財政問題解決と世継ぎの誕生に移っていた。その両方がいわばかなった瞬間に、この惨事である。
限嗣相続というのは、家屋や領地が分散してしまわないように、相続者の条件を厳しく指定する古いシステムで、その方式自体を家庭が勝手に変えるわけにはいかない。いま見るとたいへん窮屈なシステムに見えるが、このシステムを必要とした時代があったことは間違いない。

しかし近代になってもこのやりかたがかなり残っていた。
ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』(1813)は貴族の話ではないが、作中のベネット家はやはり男子限嗣相続に縛られていて、そこにきょうだいは女子ばかりだったため、姉妹の結婚が上昇婚となるかどうかが小説の眼目となっていた。

ライター情報

千野帽子

文筆家。著書『読まず嫌い。』(角川書店)『文藝ガーリッシュ』(河出書房新社)『俳句いきなり入門』(NHK出版新書)など。公開句会「東京マッハ」司会。

URL:Twitter:@chinoboshka

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