今注目のアプリ、書籍をレビュー

0

今夜金曜ロードSHOW「おもひでぽろぽろ」みんな同じだったねと安心するレトロブームを批判している

2015年8月21日 10時50分 ライター情報:近藤正高
テレビアニメ「ちびまる子ちゃん」の放送が始まって今年で25年が経った(厳密にいえば1992年にはいったんシリーズは終了し、95年に放送が再開されて現在まで続いている)。ときは平成初め、バブルの末期、原作者のさくらももこの小学生時代の思い出にもとづくこのアニメは大ブームを巻き起こした。

「ちびまる子ちゃん」の作中の時代は、さくらももこが小学3年生だった1974年という設定になっている。テレビアニメ開始時点でいえば、たかだか16年前にすぎない。それにもかかわらず、当時25歳の女性マンガ家の描くその世界観は幅広い世代のノスタルジーを喚起した。

ひるがえっていま、仮に1990年生まれの作家が、自分の小学校3年生当時の1999年頃を舞台に作品を描いたとして、「ちびまる子ちゃん」ほどに広く共感を呼ぶことができるだろうか? そう考えるとやや疑問を抱く。
スタジオジブリ・文春文庫編『ジブリの教科書6 おもひでぽろぽろ』(文春ジブリ文庫)。「おもひでぽろぽろ」の制作裏話、識者による論考などが収録されており、作品の内容をより掘り下げるのに最適の一冊

今夜、日本テレビ系の金曜ロードSHOW!で放映される高畑勲監督のアニメ映画「おもひでぽろぽろ」にもまた同じことがいえそうである。この映画の公開は1991年、「ちびまる子ちゃん」の放送が開始された翌年だ。ただし映画の舞台となるのは1982年。物語は、主人公である27歳のOL・タエ子が、親戚の農作業を手伝うため山形を訪れるなかで自分が小学5年生のころ(1966年)に体験したさまざまなできごとを思い出すという形をとっている。

1982年の描写が「懐かしくない」のはなぜか?


映画監督の岩井俊二は、「おもひでぽろぽろ」劇中の「現在」の設定が映画公開の9年も前の過去であることに注目し、次のように書く。

《大人のタエ子は二十七歳。約十七年前の小学五年生の自分を懐かしんでいる。『ひょっこりひょうたん島』や当時の風俗を含め、これらをひとつの時代として懐かしむ。(中略)ここでちょっと不思議なことに気づく。九年前の大人のタエ子は懐かしいだろうか? 公開時、僕はこのシーンが九年前であることにすら気づけなかった。それどころか今、僕らが、この『おもひでぽろぽろ』を観て、懐かしく思うだろうか? 大人のタエ子のシーンでは[引用者注――この文章の書かれた2014年から計算して]三十二年前の姿なのである。映画そのものですら二十三年前なのである。本当だったら『ひょっこりひょうたん島』どころではない懐かしさに身悶えしたとしてもおかしくはない。ところが大人のタエ子のシーンはまるで懐かしくない》(「ノスタルジーの正体」、『ジブリの教科書6 おもひでぽろぽろ』所収)

なぜ、1982年のシーンが懐かしくないのか。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

コメントするニャ!
※絵文字使えないニャ!