年をまたいで第2クールに突入、ますます絶好調の新シリーズルパン三世。ずっと見ていたOPにレベッカがいるなんて気がつかなかったよ。
気づいた人、いた?
銭形はルパンの女房か?新「ルパン三世」13話「ルパン三世の最期」友情というより……
『ルパン三世DVDコレクション 2015年2月号』講談社(「脱獄のチャンスは一度」収録)

第2クールの冒頭を飾る13話「ルパン三世の最期」は、前回のラストで逮捕されたルパンの脱獄を描くお話。

逮捕されてイタリアの刑務所に収監されたルパンだが、どんなに厳重な警備を敷かれても脱獄なんて朝メシ前。それを阻止できるのは、ルパン一筋ウン十年、ルパンのことを知り尽くした銭形警部以外に存在しない。敏腕警部の面目躍如だ。

イタリアには死刑制度がなく、ルパンを終身刑にするには莫大な維持費がかかってしまう。そこで銭形警部の発案により用意されたのは、ルパン専用の牢獄だった。


ルパン専用の牢獄とは、海に面した場所に建てられた極小の独房で、誰かに変装して逃亡されないように警備も銭形警部ただ一人。銭形は外のテントで寝泊まりし、なんとルパンのためにかいがいしく食事の世話までする。ルパンの世話を一生続けるつもりだったんだろうか? たぶん、そうなんだろう。銭形はルパンの女房か。

ルパン一味である次元、不二子、五エ門が助けに来る様子もない。さすがのルパンも万事休すか。
そんな折、ルパンが食事を拒否しはじめる。絶食して餓死しようというのだ。

「とっつあん、負けを認めるよ。さすがにここまでされちゃ、俺もお手上げだ。このまま生き続けるなんて無様にもほどがある。潔く死を選ぶよ」

なんとかして食事をさせようとする銭形だが、ルパンは拒否し続ける。
髪もヒゲもぼうぼうのまま、見る影もなくやせ衰えていくルパン。何度も扉を開けようとするが、なんとか思いとどまる銭形。死にゆくルパンを前に、自問自答を始める。

「やつが死に近づきつつある現状に焦りを感じる俺がいる。ならば、俺にとってルパンを捕まえることは何を意味していたというんだ……」

ルパンを捕まえるのが銭形警部の生きがい。だが、ルパンが死んでしまっては生きがいがなくなってしまう。
それはすなわち、刑事・銭形の死を意味する。

ルパンの最後の頼みは、タバコを1本恵んでもらうこと。扉越しにタバコを喫いながら語り合うルパンと銭形。

「己の美学を貫き通す。それが男ってもんだろ。楽しかったぜ、とっつあん」

いよいよピクリとも動かなくなったルパン。
それを見て銭形警部は独房の中に入るが……それはルパンが独房の床に描いた絵だった! ちゃんと扉の覗き穴から見たときの角度も計算されたトリックアートである。画材は銭形から提供された新鮮なイタリアの食材だ。

どんなに厳重な牢獄でも、一度だけ扉が開く瞬間がある。それは囚人が死んだとき。扉が開いた一瞬の隙を突き、ルパンは外に飛び出して脱獄に成功する。まさに生死を賭けた脱獄だったというわけ。


ルパンにしてやられ、牢獄に閉じ込められる銭形。しかし、一人になってから歓喜を爆発させる。そして数日後、ヨレヨレになった銭形警部が救出されたのであった。

名作「脱獄のチャンスは一度」へのオマージュ


第2クールに突入し、アバンタイトルの演出とCMに入るアイキャッチがガラッと変更となった。アバンタイトルのフレーズは、「愛」を強調したものから「芸術」を強調したものに。また、アイキャッチにはTV第1シリーズの名悪役、白乾児(パイカル)と魔毛狂介が登場している。描いたのは12話の演出・絵コンテを担当した小林治。

ルパンファンなら誰もが気づいているとおり、今回はTV第1シリーズ4話「脱獄のチャンスは一度」へのオマージュだ。銭形に逮捕されるという屈辱を味わったルパンが、処刑寸前のわずかな隙を突いて脱獄し、銭形に意趣返しをするというエピソードである。

脱獄しようとしないルパンに対して銭形が焦りを感じるくだりも「脱獄のチャンスは一度」と同じ。「逃げられないですよ」とたかを括った返事をする警官に激怒して、

「俺はやつのことを知り尽くしている! 困難があればあるほどやつは燃える! めらめらとな! 本当に見事なやつなんだよ!」

と言ってしまうほどだ。「まるで警部はルパンに脱獄してほしいかのようですな」と冷やかされたりもしている。

次元たちがルパンを助けなかったのも同じ(このときは不二子が何度もルパンを助けようとするが、そのたびに次元が阻止している)。安易に助けるのではなく、ルパンのプライドを尊重するのがルパン一味の考え方のようだ。

ほかにも長髪ヒゲぼうぼうのルパンの顔がそっくりだったり、教誨師が登場したり(前回は住職、今回は神父)、ヒゲを剃るための剃刀を望んだりと、「脱獄のチャンスは一度」との類似点は多い。ルパンが着ている囚人服が緑色なのも、緑ジャケットだったTV第1シリーズを意識したものだろう。囚人服に書かれた71という数字は、TV第1シリーズの放映年である。

それにしても銭形のルパンへの想いは深い。友情というより、もはや愛情の域に達している気もする。ネットにも、

「銭形の料理に愛情こもってて切ない」
「とっつぁんの心が完全に盗まれてる」
「実の女房以上にルパンに首ったけじゃないか」

などという声が溢れ出ていた。

なお、『ルパン三世 ルパンVS複製人間』では、ルパンが処刑されたことを知った銭形がショックのあまり山にこもってしまうという設定がある(作画されたが上映時間の都合でカット)。また、『ルパン三世 風魔一族の陰謀』では、ルパンの死を供養するために、なんと出家してしまっていた。やっぱり銭形はルパンの女房なのか。次元の立場は?

一方、ルパンのほうは銭形警部に対してどこかクールな感じ。最後に牢獄に閉じ込めてたけど、あれ、放っておいたら銭形死んでたからね。「脱獄のチャンスは一度」のときは、銭形に自分と同じ屈辱を味あわせるという暗い執念に燃えていたが、今回はスポーツライクに銭形とのサシの対決を楽しんでいたような感じがする。

ルパンが「男の美学」という言葉を口にするが、これはもちろん「ルパン三世のテーマ」の歌詞からの引用だ。『ルパン三世』というシリーズ全体の大きなテーマでもある。

さて、今夜放送の第14話はルパンがダ・ヴィンチの名画「モナリザ」を狙う「モナリザを動かすな」。『ルパン三世』らしい、正統派の盗みの攻防戦が見られそうだ。また、明日1月8日の夜は2年ぶりのTVスペシャル『ルパン三世 イタリアン・ゲーム』が放送される。どちらも見逃さないように。チャンネルは決まったぜ。
(大山くまお)