2月18日に、STREET FIGHTERV(以下、スト5)が発売された。前シリーズのSTREET FIGHTER IV(以下、スト4)の家庭用が発売されたのが2009年なので、実に7年ぶりの新シリーズとなる。
対戦格闘ゲームファン待望の作品だ。

ところが、発売と同時にAmazonのレビューや海外のレビューなどは大炎上状態に。実際に10日ほど遊んでみて、最初はいくつか炎上している人達と同じように思うところがあったが、そうでない部分も多々見受けられた。実際に炎上しているほどひどいのか、それとも傑作なのか、見ていきたい。

なお、今回プレイしたのはPS4版で、PC版(Steam版)は未プレイであることをあらかじめご了承いただきたい。
「ストリートファイター5」大炎上 本当にひどいのか徹底検証してみた
ストリートファイターV(写真はPS4版)
対戦格闘ゲームの金字塔。現時点では未実装の機能があるため、オンライン対戦をやり続けたい人向けだ。

ソフトは未完成


まず何よりも重要なことは、ソフトが未完成ということだ。現時点では「対戦格闘ゲーム」としては十分以上に遊べるが、「一人用の格闘ゲーム」としてはまだまだ不十分と言わざるを得ない。


例えばメニュー画面で選べるもののうち、「CHALLENGE」と「SHOP」を選択できない。まだ実装されていないからだ。
「ストリートファイター5」大炎上 本当にひどいのか徹底検証してみた
メニュー画面。キャラクターのコスチューム等を購入できる「SHOP」や、キャラごとに課題を出される「CHALLENGE」がまだ未実装

ちなみに「CHALLENGE」はキャラクターを選択し、レベルに応じたお題をクリアしていくというもの。スト4では、それぞれのキャラクターのコンボ(連続技)を練習するのに非常に役立ったモードだ。

「STORY」は1戦ごとに物語が展開していくが、各キャラ4戦前後と非常に短くなっている上に難易度選択が無い。CPUは弱めなので、あっという間に終わってしまう。
加えて難易度選択をした上でCPUと戦えるアーケードモードが搭載されていないことと、「CHALLENGE」が実装されていないため、オフラインで遊ぶゲームとしてボリュームが足りないと思っている人も多いだろう。

唯一ボリュームがある「SURVIVAL」は、1戦ごとに体力回復なしで連戦するモード。難易度は4段階に分かれていて、Easyでは10戦、Normalでは30戦、Hardでは50戦、Hellでは100戦行う。戦いの合間に、それまで獲得したスコアを消費して体力を回復させたり、攻撃力や防御力をアップさせたりできて、意外とやり応えがある。だが、Hellの100戦などは特に、求めていたボリューム感はそこじゃないと思ってしまう。

現時点では、技を確認したり練習する「TRAINING」を中心に、ネット対戦をする通信対戦格闘ゲームと言える。
いわゆるガチな対戦格闘ゲーマーが最終的にたどり着く点が実装されているので、「対戦格闘ゲームとしては十分に遊べる」ものの全体的なボリュームが少ないというわけだ。

ちなみに「TRAINING」はさまざまな設定ができるようになっているため、そのとき自分が抱えている課題がわかっていればとても便利だ。うまく必殺技が出せないときには、キーディスプレイ表示をオンにすると、きちんと入力ができているのか画面に表示される。
「ストリートファイター5」大炎上 本当にひどいのか徹底検証してみた
自分がどういう操作をしたのか、相手にどれだけのダメージを与えたのかを表示させることができる。しっかりと操作し、ダメージの大きい連続技を練習しよう

自分の課題がよくわかっていない場合には、相手の設定を「ダミー設定」から「ステータス:CPU」にし、自動回復等をオフにしてみよう。普通に対戦をすることができる。
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現時点ではCPUの強さを変更して対戦できるのは、TRAININGだけ

ここで、CPU難易度を1から8まで変更し、順番に相手の動きを見ながら戦ってみよう。
今作のCPUはかなり優秀で、難易度ごとに使ってくるコンボのレベルが上がっていったり、より実践的な動きをしてくれるからだ。自分の使うキャラを相手に選び、動きを観察し、取り入れることでどんどん強くなれるだろう。

PS3用スティックも使うことができる


PS4版のスト5で一番ありがたかったのは、PS3用のアーケードスティックを利用できたことだ。オプションの「その他設定」から「レガシー・コントローラーの認証」することで、使えるようになる。対戦格闘ゲームはアーケードスティック派だが、PS3版を持っているので新たに買うのはためらっていた人も安心して遊ぶことができる。
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レガシー・コントローラーの認証によって、PS3のアーケードスティックを使える

注意したいのは、3点。OptionボタンやShareボタンなどのボタンといったPS3コントローラーについていないボタンでの操作はPS4パッドで行うしかないということ。
ゲーム起動のたびに設定をしなければならないこと。そして、PS4パッドのバッテリーが切れたらリンクが切れることだ。

おそらく、パッドに紐付けて運用する形になっているのだろう。遊んでいて、操作が鈍くなったらパッドのバッテリーをチェックするといいかもしれない。PS4本体の設定で一定時間操作しないと自動的に電源が切れる設定をオフにしておくといいだろう。また、「VERSUS」モードのようにオフラインで友人と戦うときなどは、アーケードスティックだけではなくPS4パッドを用意した方がいい。


炎上の原因はサーバーにあり?


不満点で多いのは、オンライン対戦等のロードが遅い、オンライン対戦がなかなか見つからない、というものだ。オフラインで遊ぶボリュームが少ないのに、オンライン対戦で待ち時間が多いので快適に遊べないと炎上している。

確かに、初日はいちいち読み込む時間が長いと感じることが多かった。その後、日によって長かったり、そうでもなかったりしていた。この辺はサーバー側に原因があるようだ。23日にサーバーメンテナンスを行った後は、比較的待ち時間等が短くなったように感じているので、今後もどんどん最適化作業が進めば快適になっていくと思いたい。

ちなみに、メニュー画面等の後ろに表示されている世界地図は、現在オンラインで遊んでいるアクティブユーザーの分布を表している。なるべく人が多い時間帯の方が、早くマッチングするかもしれない。

回線の状態が悪い人と当たってしまい画面がコマ送りみたいになってしまうのは、そういう人とは戦わないようにする、しか解決方法がないかもしれない。待ち受けで対戦をオンにしているときでも、事前に確認するように設定すれば相手の回線状態も確認できるため、戦わないことができる。
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待ち受けで対戦ONにしていても、相手の挑戦を受けるかどうか確認可能

友人と遊ぶときにはバトルラウンジで連戦設定を「10」にすると、どちらかが10勝するまではロードなしで遊べるので参考にして欲しい。

読み合い重視のゲームへ


ゲーム性はスト4からだいぶ変化した。全体的には「小技で暴れるゲーム」ではないという印象だ。

スト4の時は発生が早い小パンチや小キックを持っているキャラが有利だった。相手と近い距離にいたらそれらの技をペチペチと連打をして、当たればそこから大技へつないで体力を奪う、というシーンが多かった。

それが、それらの技は密着しても2回ぐらいしか当たらないし、そこから必殺技につなげることにリスクがあるようになった。ほとんどの必殺技にガードされると反撃を喰らう隙ができたので、小技2回ぐらいの間にきちんと当たっているかを確認しなければならない。もしガードされているのに必殺技を出すと、反撃を受けてしまう。これが、なかなか難しい。スト4のように3回以上当てたり、途中で中攻撃や大攻撃につないで当たっているのを確認してから必殺技を出すよりも、難易度は高まり、安易にできなくなっている。

さらに、相打ちになった場合にはより強い(と設定されている)攻撃を優先するようになったため、むやみに小技を連打していると大技でつぶされるようになった。これは、例えば自分の小パンチと相手の中パンチが同時に当たった場合、一方的に中パンチが勝つというもの。おそらくは「小<中<大=必殺技<CA<投げ」となっているようだ。STREET FIGHTER III 3rd Strikeで採用されていたシステムがスト5でも採用されている。

さらに、中攻撃や大攻撃は相手にガードされても削りダメージ(時間が経つと回復する)を少しだけ与えられるのもポイントだ。小攻撃でひたすら暴れるよりも、的確に中攻撃や大攻撃を出した方が強いと思う。

連続技の難易度は、全体的に易しくなった。スト4の時には「目押し」と呼ばれる、攻撃が当たった際にぴったりのタイミングで次の攻撃をしたときだけ当たる仕組みがあった。通常はつながらないような攻撃が連続ヒットするので積極的に狙っていきたいが、難しかった。

それがスト5では目押しを排除。ぴったりのタイミングではなく、先行入力ができるため、ある程度は簡単に連続攻撃ができる。

あとは、必殺技がきちんと調整されている感がある。スト4では出した後に有利になる必殺技があり、それでごり押しができたりもしたが、今のところスト5ではそういった技があるようには感じていない。出すまでに隙があったり、ガードされた場合に反撃を受ける隙ができたりするような、リスクがある技に調整されているように感じる。それもあって、前述のようにコンボで使うときには相手に当たっているかをとっさに判断しなければならない。

これらの結果、全体的には相手をしっかり見て、行動を読んで、相手の隙をうかがって戦うゲーム性になっている。判定が強い必殺技とか隙の少ない小技で暴れるよりも、しっかり読み合って差し合いをしましょうというテーマを強く感じる。

小攻撃を連打していたら、タイミングを合わせた中攻撃で一方的にやられてしまうし、何も考えずに必殺技を出したら手痛い反撃をくらう。反撃も、目押しが必要な難易度もダメージも高いコンボではなく、普通のコンボをがっつりくらう。という戦いだ。

とてもシンプルで、なおかつ一部の強い必殺技でごり押しされるようなことが少なく、対戦はかなり楽しい。というよりも、まだ研究が進んでいないからかもしれないが、理不尽な思いをすることが少ない。

対戦部分は面白いので、今後のアップデートに期待


まとめると、オフライン部分で未完成なところは多々あるけれども、ゲームシステムには文句はなく、対戦はやり応えがある。オンライン対戦で遊び、技の確認や練習にTRAININGを使うと考えるといいだろう。

つまり、オフラインでストーリーを楽しむのがメインで対戦はそれほどしないという人は、アップデートを待った方がいい。3月には無料アップデートが行われることが発表されている。7000円を超える金額を払ったのに、お目当てのストーリーが無いとなるとがっかりしてしまうからだ。

オンライン対戦に関しては、(単に慣れただけかもしれないが)読み込み時間がだんだんと改善されてきているような気もするので、今後はもっと快適になってくれると信じている。

全体的には、e-sportsが盛り上がってから初の1から作り直されたストリートファイターシリーズだけあって、さまざまな工夫が凝らされていることを実感できた。ただ一方的に技を出し続けている方が勝つのではなく、読み合いを制した方が勝ちやすいシステムや、多少のラグがあっても技を出すタイミングがずれにくいところなどだ。

それだけに、最初に少し躓いてしまった感があるのは非常にもったいない。だが、対戦そのものは本当に素晴らしいし、他の人のリプレイを見続けるだけでもかなり面白い。今後に大いに期待できるタイトルだ。
(杉村 啓)