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「悦ちゃん」5話。「なんだこいつ」顔が実にユースケ・サンタマリアだ

2017年9月2日 10時00分 ライター情報:大山くまお
獅子文六原作の土曜時代ドラマ『悦ちゃん 昭和駄目パパ恋物語』。昭和10年の東京を舞台にしたポップな人情ラブコメディーだ。先週放送された第5話は、売れない作詞家の碌さんが大手レコード会社の専属作詞家に! というお話。全8回。
イラスト/つん(5歳)

細野夢月(岡本健一)の乱入によってお見合いがメチャクチャになったデパートガールの鏡子(門脇麦)。縁談をまとめた父親の久蔵(西村まさ彦)は怒り狂い、行き場のなくなった鏡子は碌さん(ユースケ・サンタマリア)と悦ちゃん(平尾菜々花)親子の家にやってきた。

鏡子さんに事情を聞き出そうとする悦ちゃんだが、碌さんはそれをたしなめる。放っておいてやるのも大人の男の優しさだ。碌さんは、漬物をポリポリ食べるデパートガールらしからぬ鏡子に好意を持つ。鏡子だって、碌さんの優しさや包容力があるからわざわざこの家まで来てしまうのだろう。門脇麦は余分なものを足さない引き算の演技。

一方、財閥令嬢のカオル(石田ニコル)は、碌さんにきっぱりと縁談を断られて初めて恋に目覚めてしまった模様。それまで無表情・無機質だったカオルが、碌さんと鏡子が連れ添って歩いている場所に遭遇して初めて自分の感情に気づく場面が相当おかしい。

「怒り、違う、悲しみ、違う……ジェラシー!(花火がドーン!)」

まるで人間の感情に目覚めたロボットのよう。「嫉妬だわ!」と告げられたときのユースケの顔が本当にユースケっぽい。「なんだこいつ」顔。

封建制が続く戦前の日本


悄然と帰宅する鏡子さんだが、父親はまだ怒り狂っている。

「愛だの恋だの、結婚ってのはそういうもんじゃねえんだ。子の幸せを見極めて嫁がせてやるのが親の役目。今も昔もみんなそうやってきた。それで間違いは起こらなかったんだ!」

現代からしてみると、鏡子の同意のないまま縁談を進めた久蔵は自分勝手に見えるが、戦前の日本ではこれが当たり前。恋愛は自由だが、恋愛結婚は自由ではなかった。久蔵なりに懸命に苦労をかけた娘の幸せを考えての行動でもある。

しかし、久蔵が怒りにまかせて鏡子が書いていた映画スター、クラーク・ゲーブルとの夢日記をやり玉に上げたから鏡子も黙っていられない。これは内心の自由の侵害だ。

「私は、私の物語が欲しかったの!」

親になんて口のきき方だ! と大暴れする久蔵を必死に取り押さえる継母の藤子(堀内敬子)。鏡子はじっと耐え、義妹の琴子は号泣する。この時代、日本の女性に「私の物語」なんてものはなかったのだ。

ライター情報

大山くまお

ライター。著書に『野原ひろしの名言』『野原ひろしの超名言』(双葉社)、『名言力』(ソフトバンク新書)、『中日ドラゴンズあるある』(TOブックス)など。

URL:Fire Stone and Water

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