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満漢全席的贅沢スパイ映画「アトミック・ブロンド」諜報員の悲哀とセロン様の暴力(燃えるわー)

2017年10月22日 09時45分 ライター情報:しげる
シャーリーズ・セロン版『ジョン・ウィック』かと思いきや、諜報員たちの悲哀を描いた真っ当なスパイ映画。にも関わらず圧倒的に迫力のあるセロン様も堪能できるという、やたら贅沢な一本が『アトミック・ブロンド』だ。

1989年のベルリンで展開する、冷戦最後の大運動会


映画の冒頭、いきなり流れるのはニュー・オーダーの『Blue Monday』のイントロ。無機質だけどなんとなくレトロなリズムをバックに、着の身着のままの男が逃げるが、後ろから車に轢かれてしまう。車から降りた男は逃げていた男を射殺し、腕時計を奪う。自殺した自分たちのバンドのメンバーを悼む歌である『Blue Monday』をBGMにして暗殺が描かれるという、キレのあるオープニングだ。

『アトミック・ブロンド』はこの奪われた腕時計とその中に隠されたマイクロフィルムを奪い返すため、イギリスの対外諜報機関MI6に所属する敏腕の女スパイ、ロレーン・ブロートンが送り込まれるというストーリーである。

映画が始まった時点で、ロレーンの任務は終了している。初めて画面に映ったロレーンの体はすでに全身ズタボロで痣だらけ。ボロボロの体をバスタブに張った氷水で冷やし、モノトーンの服装で固めたロレーンが向かうのはMI6の会議室だ。巨大なテープレコーダーとビデオカメラ、マジックミラーに囲まれたこの密室で、ロレーンはMI6の上司とアメリカから出向してきたCIAの幹部に向かって状況報告をする。

そこでロレーンが語るのは作戦の顛末だ。舞台は1989年秋、東西を隔てる巨大な壁が崩壊する寸前のベルリン。政治状況が激しく変動する中で、現地で独自に情報ネットワークを築いていたイギリス諜報員パーシヴァルと協力し、ロレーンは行方不明になったマイクロフィルムを捜索する。フィルムの中身は東側で活動する西側の諜報員たちの詳細が書かれたリスト。連日のデモで大混乱に陥るベルリンに、このリストを求めて各国のスパイたちが集まってくる。

とにかく、「1989年秋のベルリンを舞台にしたスパイもの」という時点でほぼ勝利が確定した映画である。スパイたちがその本領を発揮しフルパワーで活躍することのできた時代が終わりかけている状況で、その中心の都市で展開される熾烈な諜報戦。祭りが終わっていく気配の中で、それでも体を張って戦い続け、散っていくスパイたち。これが燃えずにいられましょうか。

ルールの変化に対応できず、時代に取り残され、それでもなお戦い続けなければならない者たちの悲哀。

ライター情報

しげる

ライター。岐阜県出身。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

URL:Twitter:@gerusea

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