「よゐこの無人島0円生活2017 元祖無人島芸人・よゐこvs破天荒のナスD」(テレビ朝日系・12月29日)にてよゐこを凌ぐ圧倒的なサバイバル術を披露し、その魅力を見せつけたナスDこと友寄隆英とは何者なのか?今夜放送される無人島生活・後編を観る前におさらいしたい。(「よゐこの無人島生活」はゲーム化もされた
「ナスD」友寄隆英は濱口の恩人にして最強の裏方だ「陸海空 地球征服するなんて 特別編」
「とったどー! よゐこの無人島生活」ナムコ・ニンテンドーDS

濱口にモリ突きを教えた男、ナスD


「無人島〜」を生み出した「いきなり!黄金伝説」時代から演出を担当し、よゐこにサバイバル術を教え、島のロケハンやシミュレーションをずっと行ってきたのが友寄ディレクターだ。リサーチ済みの島で想定された中動く出演者と違い、何が起こるかわからぬ状況下で誰に見れらるでもなく「無人島生活」をしてきた友寄。

「全部教えてもろた。あいつのおかげでヒーローになれた」特に付き合いの長い濱口は語る。東京に出てきた頃の唯一の友達らしい。だがなぜ、あくまで裏方として番組を支えた友寄がメインゲストとして出演することになったのか?
それは、自身が取材ディレクターを務める「陸海空 (こんな時間に)地球征服するなんて」で人気がでちゃったから。それがあって今回よゐこ側からの指名となった。ではその魅力とは?

現地人より無茶をする男、ナスD


友寄が人気となった「陸海空〜」は海外での長期ロケをメインにすえたバラエティ。U字工事が南米アマゾンの部族に会いに行くロケで、当初裏方だった友寄が頭角を現わす。

例えば、ナイフを振り回し激怒する現地のおばさんと遭遇した時。至近距離で平然とカメラを回し続ける友寄の異様さが際立つ。
漁に同行した際、捕れたピラニアの一種(パロメタ)に生で噛り付く。骨も頭も食う。唖然とする漁師の息子。サンマの刺身みたいで美味しいと勧めるも「ダメだ、お前は食べるな」と子の親が制止する。
毒を使った漁でも捕った小魚を生で飲み込み、ガイドに危険だと怒られる。なんか逆だ。
生で食えるという木の繊維をアホほど口に入れ「リコ(美味しい)」を連発。だが普通食べるのは柔らかな内側で「外の皮食うやつは初めて見たよ」と呆れられる。トウモロコシを生で齧れば「馬みたいなやつだな」、芯まで食べてしまい「馬でもそこは食べない」
のちに「テレビ的には全部『美味しい』っていうと『こいつの味の評価信頼できないな』って思われちゃう」とディレクター的な考察を語ってたが、結局全て美味しいと完食する。
本能がセオリーを凌駕するのか、わかっちゃいるけどやめられない。
何でも食うから先住民に面白がられ、イタチの「こんなとこ誰も食べないよ」って部位まで食わされる。むしろ喜んで食う。先住民にいじられるディレクターも珍しいが、あまりに平気で食べ続けるので飽きられ一人にされるのも珍しい。ネイティブをすぐに上回る最強の他所者・友寄。

U字工事・益子が「野犬が骨を噛み砕く音がうるさくて」寝れなかったり、福田が「早く帰りたい×3」とつらそう(スタンス的にそれは一つの正解だが)なのに対し、友寄は昔から沈没するような旅をしてきたのか、褐色の川の水をガブガブ飲むなど、溺れるように「体験」に飛び込んでいく。
見ているだけの自分が少し自由になるのを感じる。

「ナスD」誕生


村のおばさんに美容にといいと騙され「ウィト」という髪染めに使う果実の汁を全身に塗りたくる。透明な汁だが、塗ったその肌は次第に青く、そして黒から紫へ。刺青にも使う染料のため一生落ちないという。…破天荒ナスDの誕生だ。冗談とはいえ止めなかったおばさんもおばさんだが、嬉々として擦り込んだこの人もこの人だ。
地元民から「黒いの」と呼ばわりされたり、パスポートと別人だと乗船拒否されかけたり、子供と握手するたび汚れてないかこっそり気にされたり。
黒く、悲しく、面白い。突然変異で生まれた異形のダークヒーローがアマゾンを旅をするというシュールなロードムービー。かつて濱口をヒーローに育てたのに何の報いか。
「塗ったことを後悔してないんです。だけどどうやって生きていこう今後」という発言は彼の魅力を紐解く鍵かもしれない。
しかもこの「異物」が行く先々でどんどん愛される。


愛される男、ナスD


乗船拒否されかけた船長に結局気に入られ、先住民しか飲めないという酒の蔵へ連れていかれる。これも凄かった。
お前に飲めるかな?という感じで出された4〜50度の酒を瞬殺で流し込む。
「すごいなお前…」「まだ飲むのかよ」「おいおい水じゃないんだそ?」
怪しげな雰囲気で登場した酒蔵の主人が酒と一緒にどんどんナスDに飲まれていく。途中からは瓶ごとラッパ呑みだ。
「正気か?」「もう笑うしかないよ」「なんて奴だ」「お前気に入ったよ」「負けたよ、これ(酒瓶)持ってけ」「ここで飲むんじゃない!」「お前は完全にバケモノだ」「いつでも連絡をくれよ」「最高に楽しかったよ!」「また来いよ!」本宮ひろ志の漫画を読み終えたような痛快さ。やってることは「俺の空 三四郎編」なのに見た目は「アバター」。
川を遡る乗船中の4日間、無睡で働き、意味なく60全ての村で荷下ろしまで手伝う。あげく憧れだと言ってたアマゾン川の合流地点到着と同時に、気絶し抱きかかえられ下船するという愛らしさ。ガイド(ホルヘ)が意識のないナスDに「命をかけて助ける」を語りかける姿は胸を打った。
また肌の色を落とす為、ある村の女性たちは無償で何時間も漂白剤(!)を使って体を磨いてくれた。一人の妊婦は、生まれてくる子供にトモヨリと名付けるとまで言う。彼の何かが周囲を引きつける。顔が似てるので真田広之が国際的にふざけていると思われていないか心配だ。

また、テロップで差し込まれる手記がいちいち味わい深く、ロマンチストな面も垣間見れる。例えば肌の色が戻った時。
「素直に嬉しい。と同時になぜか寂しさもあった。真っ黒になったから頑張った期間でもあった。真っ黒になったから自分のハードルが下がった。みんなと仲良くなれた、よくしてくれた。皆が助けてくれた期間であったことに気づけされた。真っ黒な『ハポンブラック』からただのつまらない男になった日でもあったのだ。さよならハポンブラック。ありがとう皆様。僕にはこの期間の経験と感謝の期間だけが残った。それだけでも充分だ。」
紀行文として単体でも読んでみたいほど。
そんなナスDの「無人島生活」前編はどんなだったのか?

ナスD in 無人島


上陸してすぐ、いつ漂着したとも知れぬ海岸のペットボトルを拾い上げ、中に残る液体を一気に飲み干した。驚愕。「腐ってるかどうかは、この後わかります!」と笑う。出演するからにはとの覚悟をもった彼なりのサービスなのかもが、頭おかしい。今夜の放送でその「結果」はわかるのか?
「命懸けで死ぬギリギリじゃないと見る理由がない、スタッフなんて」
「一人5人分ぐらいやってやっとテレビ出る資格あるかないか」
タレントではない自分が出ることの意味を重々承知してる彼は手を抜かない。その言葉通り70時間不眠不休でサバイバルに打ち込む。無駄なほど整地をし、見事な小屋を作り、瞬時に素手で魚を捕まえ、手際よく調理し貪り食った。その間フルスロットルで喋り続ける。撮影スタッフもそれに応えるかのように、全てを収録し細かく素材を繋ぐ。よゐこパートと同じ番組とは思えぬほどの圧倒的情報量が詰め込まれた。この過剰さは「陸海空〜」にも通じるイズムだ。これぐらいでいいだろ?というヌルさがない。
結局、判定でよゐこに圧勝するのだが、「この(濱口の)キャラ自体もナスDが作ったようなもん」だと事前に語っていた濱口自身が、ナスDの活躍を誰よりも喜んでいたに違いない。
今夜の後編ではいよいよナスDが本格的にモリを解禁、驚くほどの漁獲をみせるらしい。楽しみで仕方がない。
(柿田太郎)