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夢の国で繰り広げられるアメリカの「火垂るの墓」だ「フロリダ・プロジェクト」驚愕のラストを見よ

2018年5月14日 09時45分 ライター情報:しげる
見終わった直後にはキツネにつままれたような気分になったものの、なんとなくジワジワと「あれはすごいものを見てしまったのではないだろうか」という気分になっている。『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』を見終わった後の感覚は、なかなか一言では言い表せない。

見たことのない温度感で描かれる、ポップで悲惨なシングル家庭の暮らし


『フロリダ・プロジェクト』の舞台は、タイトルの通りフロリダ。ディズニーワールドのすぐ横に立つ安モーテルの「マジック・キャッスル」に住むヘイリーと、娘のムーニーが主人公だ。定職にもつかずバッタ物の香水を観光客相手に売り払ったりして日銭を稼ぐ、全身タトゥーだらけのヘイリーと、ロクに学校にもいかず日がな一日イタズラに精を出すムーニー。モーテルの管理人であるボビーも、この2人には手を焼いている。

映画では、最初から特に大きな出来事は起きない。フロリダの陽光の下、悪ガキムーニーと近所に住む同年代の友達のイタズラ(停めてある車に二階からツバを吐きまくったり、モーテルの電圧室に侵入して全客室の送電を止めたりという、割と笑えないやつ)を淡々と映し出す。カメラの位置は子供の目線に合わせたように低く、画面の彩度は高い。なんといってもすぐ横がディズニーワールドなので、近所に建つのはパステルカラーで彩られた楽しげな建物ばかり。子供たちからすれば、巨大な夢の国でイタズラ三昧という楽しい環境だということを、色彩とカメラワークだけで示してみせる。

しかし『フロリダ・プロジェクト』はひと夏の楽しい思い出だけをすくい上げた映画ではない。そもそも、宿泊施設であるはずの安モーテルに"住んでいる"という状況が異常だ。実際、アメリカではモーテルに住む人というのは割といるらしい。要するに、まともな家に住むための家賃が払えない人たちが週ごとに宿泊費を払って居座っているのである。日本で言えば、ドヤ住まいやネットカフェ難民と言ったところだろうか。『フロリダ・プロジェクト』はフロリダのディズニーワールド建設前にディズニー社内でつけられた計画名でもあるが、「プロジェクト」には低所得者向け公共住宅の意味もある。

こういった現実に呼応するように、ポップなだけではないフロリダの風景も断片的に画面に映り込む。ディズニーワールドができたのは、今から46年前の1971年。当時「夢の国」を意識して作られた周辺の建物は老朽化し、今やパステルカラーの廃墟となっているものも多い。

ライター情報

しげる

ライター。岐阜県出身。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

URL:Twitter:@gerusea

コメント 1

  • 匿名さん 通報

    うーむ、、ライターをやってると「驚愕のラスト」っていうウソまでつかなければ生きていけないのか、、、、この世は夢の国ではないな。

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