連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第14週「羽ばたきたい!」第83回 7月6日(金)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:田中健二

83話はこんな話


100円ショップ大納言で働き始めた鈴愛(永野芽郁)、モアイ像のような同僚・田辺(嶋田久作)、オーナーのひとり・麦(麻生祐未)、客の涼次(間宮祥太朗)、セレブ堀井(崎本大海)などこれまで会ったことのない人たちと出会っていく。

朝ドラ、前半・後半の切り替えはこうなっている 3年分検証


つい2日前までものすごく重い話だったが、突如ほわんとした雰囲気に様変わった。
新章に入った82話の視聴率は23.2%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)で67話と並んでトップ。

「東京胸騒ぎ編」(漫画家編)から「人生怒涛編」(100円ショップ編)と一回、最終回を迎えて、第一話がはじまったみたいな印象なので、視聴者の興味も再燃したのであろう。
民放で「次回新章突入」(でかいテロップ)とやると視聴率が上がる戦法である。

エキレビ!ではこの3年、毎日朝ドラレビューを更新しているので、この3年分の折り返し地点がどんな状況だったか振り返ってみよう。

「まれ」(15年前期)
7月1日(月)放送の81話のレビューより
“恋愛ドラマに徹した13週「運命カカオ64%」が、じつに第2週「告白シュークリーム」以来、ひさびさの平均視聴率を20%台になった「まれ」。
このひとたちの恋愛関係どうなるの~? というたわいない内容は、結果がどうあれ無責任に楽しめるのがいいのかもしれません。“

物語は主人公が成長し、パティシエとしても順調、恋も成就、結婚も・・・という急展開。

やはり恋愛ものやると視聴率がいいみたいだ。

「あさが来た」(15年後期)
1月4日放送79話のレビューより
“年明け、第1回の冒頭、これまでの振り返りが、亀助とふゆのエピソードが主であったことに、びっくりぽん。最後に、とってつけたようにあさと新次郎(玉木宏)のことが語られるのだった。主人公たちに関しては、お正月の総集編で充分であるという判断なのだろうか。”
こんなふうに書いたが、亀助(三宅弘城)とふゆ(清原果耶)の微笑ましいカップルは人気でスピンオフも作られた。あさと新次郎と五代の三角関係(?)に暮れに終止符が打たれている。

「あさが来た」もやっぱり恋愛パートが人気が高い。

「とと姉ちゃん」(16年前期)
7月6日(月)放送81話のレビューより
“「とと姉ちゃん」は1話から80話まで全話20%を超えているそうで、大好評と言っていい。なぜ、そんなにも安定した人気を保ち続けているのか、81話をサンプルに考察してみよう。”
“極端にいやがられることを徹底的に排除し、なんとなく口当たりの良いものを並べながら、どこまで人気をキープしていけるか。出版社編になった時、マニアックになるのか、やっぱりならないのか楽しみだ。”
そして82話から、戦争も終わって出版社をはじめる新展開。

ところが、“「とと姉ちゃん」20%超え記録が、81回(82回は19.4%〈ビデオリサーチ調べ、関東地区〉)でストップ。”してしまった。

「とと姉ちゃん」は好調だったが3ヶ月めに少し息切れしたうえ、モチーフになった雑誌や編集者とあまりにドラマが乖離していることで後半批判の声が高くなったが、リアリティーを重視しない層にはあたたかく受け入れられたまま終了した。

「べっぴんさん」(16年後期)
 1月4日放送76話のレビューより
“ときに昭和25年1月1日です。
ゆり(蓮佛美沙子)と潔(高良健吾)の新居ができて、子供・正太もかわいくて、キアリスの業績も良さそうで、明るい新年のはじまりと思いきや、とことん不穏なはじまりでびびった。
原因は男たちのいがみあい。

視聴率は19・3%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)だったと早速日刊スポーツが報じている。“

新年早々暗いはじまりだったため近年の朝ドラの新年第1回めを確認した結果がこう。

“「あさが来た」78回  昭和12年。主人公あさ(波瑠)があまり出ず、奉公人の亀助(三宅弘城)とふゆ(清原果耶)のお話が中心という意外性。
「マッサン」79回 マッサン(玉山鉄二)のウイスキーづくりがうまくいかず、北海道に行っている間に、広島の母(泉ピン子)が危篤という電報が届く。
「ごちそうさん」79回  昭和7年。
3人の子持ちになっため以子(杏)。娘のふ久が小さな大事件を起こす。
「純と愛」79回 なかなか決まらない仕事と、母親(森下愛子)がボケ始めたのではという心配が主人公(夏菜)を悩ませる。
「カーネーション」76回 昭和20年。終戦が来て、糸子(尾野真千子)はモンペを脱ぐ。“

年のはじめは明るくという法則はないようだ。


「ひよっこ」(17年前期)
 7月3日(月)放送79話のレビューより
“半年間放送される朝ドラ「ひよっこ」も、全体の半分が過ぎて、折り返しに入った。
13週の視聴率は、月から土まですべて20%超え。平均視聴率は20.6%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)と、すこぶる良い形で、後半を迎えることができたのではないだろうか。
オープニングの画像も一部変わった。
さて、これから、みね子たちはどうなっていくのか。“

当初、視聴率が芳しくなかった「ひよっこ」だがじわじわと人気が上がり、後半は若干停滞期もあったが、熱狂的なファンもついて有終の美を飾った。

「わろてんか」
 1月5日放送77話のレビューより
“とわと隼也がいなくなって大わらわ。探しに走る藤吉(松坂桃李)は、突如、リリコ(広瀬アリス)に振り向きざま、抱きつかれ、キスをされそうに・・・。
その頃、事務所で待機していたてんは、つまづいて、栞(高橋一生)に抱きつく形となり・・・。
「続きは年明け! あしからず。」とナレーション(小野文惠)
乙女組の初高座が危ういというのに、なぜか浮足立つ場面の数々。
芸能ものになってきたかと思いきや、やっぱり恋愛推し(釣り)。さすが、です。“

“最近の朝ドラは、前半、丹念に描いて、後半、ネタ切れというか息切れしたかのように少々盛り上がりに欠ける傾向があったが(「べっぴんさん」は後半、話が落ち着きすぎてしまったし、評価の高い「ひよっこ」も最後のほうでは、むりくり脇のエピソードを入れているような回があったことは否めない)、今回は、前半やや描き込み不足に思わせて、後半、盛り込み、盛り上げる作戦なのではないか(「ごちそうさん」方式)。終わりよければすべてよし。まとめ上手な吉田智子師匠の真価がここで発揮されることを期待して、残り3ヶ月見守りたい。”

夫の死後、寄席を守っていく主人公の物語かと思わせて、夫はなかなか亡くならず、後半戦、夫の存在を意外な扱いにしたアイデア勝ちと言えるだろう。視聴率も堅調だった。

こうして見ると、これまでも前半・後半の折返しではなんらかの新展開が用意されているが、「半分、青い。」ほど徹底して(脚本家のTwitterでのせんでん戦略も含め)視聴者の興味を惹きつけて離さないようにした朝ドラは珍しいといえるだろう。

ソケットボーイ


以下、メモ的に83話を振り返っておく。

涼次「ソケットってありますか?」
鈴愛「ラケット・・・ロケット?」
涼次「ソケット」
鈴愛「ラケット ソケット・・・」

この会話は鈴愛の左耳が失聴して聞こえづらいという意味なのだろうか?と思ったら、彼女にはソケットという概念がなかった。ついでに「バラン」も「パラン」と間違えて覚えていた。

それよりなにより「歌舞伎俳優みたいだ」と言われる涼次に鈴愛はなんとなく惹かれている様子。
この顔の濃い「ソケット」青年は臨時バイトとして大納言で働くことになる。
ちなみに宮藤官九郎作「ロケット・ボーイ」は2001年に放送された。

「なんたらかんたら大納言〜♪」と背景にかかっている大納言のテーマ曲があからさまに既存のお店の曲に似せたもの。鈴愛の着メロも「だんご3兄弟」(99年1月)的なもの。音楽担当の菅野祐悟は、月9ドラマのテーマみたいなものも含め、あえて似せた曲をたくさん作ることを楽しんでいるといいが。


@岐阜


晴(松雪泰子)が鈴愛に出したはがきが転居先不明で戻って来た。
心配する晴と宇太郎(滝藤賢一)に仙吉(中村雅俊)が誤魔化そうとして、
宇太郎が瞬時にあやし〜という目つきに変わるところが良かった

カリスマ美容師


ユーコ(清野菜名)のおさがりを着て合コンに行ったが、相手のちゃらさが気に入らなかった鈴愛。
「もらってもらえるならどこにでもいきたい気分です」と言いながら、ダメな人はダメらしい。

ここで、この時代「カリスマ」流行りとナレーション(風吹ジュン)。
ついに出た、“カリスマ美容師”。
木村拓哉がカリスマ美容師を演じた北川悦吏子作、日曜劇場「ビューティフルライフ」(最高視聴率が41.3%だったモンスター級ドラマ)は2000年にはじまった。

ちなみに「ソケット」をいろいろ聞き間違えたり、「バラン」を「パラン」と思っていたりする鈴愛みたいな子はいわゆる「不思議ちゃん」であろう。こういう子が好みの男子は必ずいるのだ。
「半分、青い。」83話。新章突入視聴率絶好調。過去3年の朝ドラ折返し地点を検証
『ビューティフルライフ』 北川 悦吏子(角川文庫)
表紙イラストは桜沢エリカ

「ビューティフルライフ」

シマエナガ


オーナーは田辺ではなく、三おば(キムラ緑子、麻生祐未、須藤理彩)だった。
83話では野鳥マニアの麦(麻生)が鈴愛と出会う。
「珍しい野鳥も地味な野鳥も命は同じように尊いと思っています」とよさげなことを言うが、鈴愛には微妙に響く。
(木俣冬)