10.8%と視聴率も2桁に回復し、好調の「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」(毎週月曜21時〜)。未然犯罪捜査班メンバーの個性もハッキリしてきて、適材適所の活躍ぶりで物語全体が見やすくなってきているので、この先もうちょい視聴率も伸びそうな予感。
ただ、せっかくの一話完結型なのに爽快感はちょっと薄い。たぶん、物語の肝になる伏線のせいだ。
視聴率2桁復帰で好調月9「絶対零度」この先、ミハンシステムが生きればもっと面白くなる
イラスト/Morimori no moRi

なんてキャッチーなつかみなのだ第3話!


9割の確率で犯罪を犯しそうな人を事前に探し出す未然犯罪捜査システム、通称“ミハンシステム”。このコンピューターシステムが、「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」が普通の刑事ドラマとは違うポイントになっている。

第3話で、ミハンシステムが危険人物と弾き出したのは、エリート大学生で一年前に自殺未遂をして現在も入院中の若槻真帆(柴田杏花)だった。しかし、ミハンメンバーの小田切唯(本田翼)が病院を尋ねると、若槻はたくさんのチューブで繋がれ、意識不明の状態だった。その報告を受けたミハンのリーダー井沢範人(沢村一樹)が、「昏睡状態の危険人物……」と呟いたところでオープニングテーマが流れる。
なんてキャッチーなつかみなのだろう!不思議な事件が始まった感がすごくいい感じ。

ミハンメンバー1の行動派の小田切と、気が弱すぎて各部署をたらい回しにされたことにより何でも器用にこなす田村薫(平田満)が病院に潜入し、若槻の父親・周作(遠山俊也)に接触。元特殊捜査班の山内(横山裕)が、若槻が所属していたテニスサークルの代表を務める湯川司(佐野岳)が学生起業したカフェバーを訪れ情報収集。その全ての情報をリーダー井沢が管理し、パソコンに強い南彦太郎(柄本時生)がハッキングをして裏付けをとる。開始十分少々で、ミハンメンバーの特性と話の大筋を説明。すごくスッキリしていて、1話完結にもってこいの運びだ。


肝心のミハンシステムが……


だが、気になるのがこのミハンシステムの存在意義だ。今話は、若槻のスマホからサークルのLINEのようなグループに、「復讐してやる」というメッセージが送られており、さらに同じスマホから海外の通販サイトから爆弾の材料を大量に購入されていた。つまり、ミハンシステムなんかなくても、若槻の周辺を捜査をする口実は十分にあったのだ。

また、結果的に若槻は作中で一度も目を覚ますことなく亡くなってしまったので、結局、若槻はミハンが計算ミスをしてしまった1割の例外だったのか、それとも本当に危険人物になる可能性を秘めていたのかが曖昧なまま。1話からずっとミハンシステムに疑念を抱いていた山内も、ここでミハンシステムの必要性を追求しなかったことが、ちょっとモヤモヤする。

正確性は9割、1割の可能性で罪のない一般人を捕まえてしまうかもしれないという危うさに魅力があるはずのミハンシステムだが、今話は不純物になってしまっていたような印象だ。

とはいえ、登場から悪人臭を漂わせていた湯川は、最後の最後まで腸煮えくり返るほどのクズっぷり貫き通し、前話から続く悪を守らなければならないという構図はハッキリと保たれ、それだけでも十分に見応えはあった。


せっかくの必殺仕事人的な人があんまりカタルシス生まない


ミハンシステムが選んだ危険人物と、物語における悪は、必ずしも一致しない。今回でいう湯川は完全な悪だが、“これから起きる事件”の被害者だったし、2話の政治家・小松原(中丸新将)も、ミハンシステムに選ばれてはいないが、諸悪の根源だった。2人に共通するのは、法で裁くことの出来ない悪であること。しかし、警察という組織に属す以上ミハンチームはこの2人を守らなければならない。

悪人が生き延び、善人が損をする。この構図に、ストーリー的ジレンマが生まれる。そこのモヤモヤが、最後の最後に謎のダークヒーローが現れ、悪を成敗してくれることでスッキリする……ハズなのだが微妙にそうでもない。


2話で小松原が何者かに整備中のエレベーターに突き落とされ死亡した直前、伊沢は「お天道様はちゃんと見てくれているよ〜」と小松原に天罰が当たることを示唆。そして今話は湯川が銃殺される直前、伊沢が車で待機していた描写があった。

伊沢がこの必殺仕事人的な人物である伏線なのか、それともただのミスリードで全くの別人がダークヒーローなのかはわからない。だが、ここで視聴者が「こいつは誰なんだ!?」という疑問を持ってしまうことで、悪人が成敗されたことで起きるはずのカタルシスが薄れてしまっている。「湯川ざまーみろ!悪は滅びるのだ!」とたまった鬱憤が晴らされるハズなのに、必殺仕事人的な人が伊沢かどうかが気になり、肝心の懲悪シーンに集中出来ないのだ。

もちろん、この必殺仕事人的な人物が話の肝になってくるのは明白だし、大事なシーンだというのはわかるのだが、一話完結の勧善懲悪カタルシスも大事にしてもらいたい気もする。
もっと言うと、今回は湯沢の過去の事件を金でもみ消していた父親も、しっかり成敗してくれないとモヤモヤは残る。
(沢野奈津夫)

「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」


月曜 21:00〜21:54 フジテレビ系
今晩の放映時間直前までTverで3話配信

キャスト:沢村一樹、横山裕、本田翼、柄本時生、平田満、伊藤淳史、上戸彩 ほか

脚本:浜田秀哉
演出:佐藤祐市、城宝秀則、光野道夫
主題歌:家入レオ「もし君を許せたら」