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鬼のように集めまくるという業。蒐めることを仕事にしている人たちに聴いた『蒐める人』

2018年8月30日 09時45分 ライター情報:とみさわ昭仁
同じ意味の漢字をふたつ重ねて作られた熟語というのは、案外と多いものだ。「愛好」がそうだし、「絵画」もそうだ。「河川」だってそうだし、「単独」なんかもそうである。

コレクション行為を意味する「蒐集(しゅうしゅう」という熟語も、頭の「蒐」の字にはやはり集めるという意味がある。しかも字の中に“鬼”が棲んでいる。つまり鬼のように集めまくるのだ。なんと業の深い言葉だろうか。

南陀楼綾繁の新刊『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』は、書物に関する同人雑誌『sumus(スムース)』に掲載された様々な“蒐める人”たちへのインタビューをまとめたものだ。

スクラップブックの完全復刻という難事業


南陀楼氏自身も“蒐める人”のひとりだ。本業である編集者のかたわら、谷中・根津・千駄木を中心に開催されている「不忍ブックストリート」の代表を務めたり、各地の古本市の開催に関わるなどしている。そんな著者だからこそ、インタビューでは蒐集家の気持ちをうまくすくいあげていく。

収録されているのは7組(8人)に加えて、巻末では都築響一氏と著者の対談も掲載されている。このなかで、ぼくがもっともシビレたのが、東京創元社の戸川安宣氏と文献資料の保存修復業を営む花谷敦子氏へのインタビューだ。このふたりは、江戸川乱歩の『貼雑年譜(はりまぜねんぷ)』の完全復刻事業に携わったコンビである。

ここで「『貼雑年譜』ってナンデスカ?」という人のために、簡単に解説しよう。

江戸川乱歩という人は、探偵小説界の巨星として知られているのは当然のことながら、実は強烈な“自分マニア”でもあった。自分に関するものは、ナンでもカンでも保存しておく。とくに、〈第二次大戦の最中、執筆の注文が途絶えたのを機にそれまでスクラップしていた新聞記事や手紙などを整理し、それに自筆で解説を施し、あるいは新たな図版を付け、丁寧に製本までして拵え上げた偉大な自分史の記録〉が、『貼雑年譜』だったというわけだ。

この『貼雑年譜』は、1989年にも講談社から復刻されたことがある。何を隠そうぼくも“自分マニア”なので、広告を見た瞬間に予約を入れた。

ところが、そのときの復刻版は原価を抑えるために全ページカラーでの再現を断念し、貼り込みの重なりなども再現されておらず、おまけに原本が二分冊のところを一冊にまとめてしまっている。それでも定価は3,000円もした。

ただ、原本などを見たことのないぼくは「まあ、こんなものか」と満足したが、そうはいかなかったのが戸川安宣氏だ。

ライター情報

とみさわ昭仁

1961年生まれ。ゲーム開発、映画評論、コレクター研究、古本屋店主、スカジャン制作、DJなど。神保町特殊古書店マニタ書房は、不定休で週のうち半分くらい営業。

URL:akihito tomisawa index

「鬼のように集めまくるという業。蒐めることを仕事にしている人たちに聴いた『蒐める人』」のコメント一覧 1

  • 匿名さん 通報

    取り合えず、ライターとみさわ昭仁のサイトリンクはあるのに、サイトがないw

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