昨日(9月12日)に最終回を迎えた『高嶺の花』(日本テレビ系)。(関連)
最終話「高嶺の花」石原さとみ「私はお花」峯田和伸の日差しに開花する華道家の魂
ドラマ「高嶺の花」 オリジナル・サウンドトラック/バップ

後継者争いまで繰り広げた月島流だったが、月島もも(石原さとみ)もなな(芳根京子)も結果的に月島を出ていった。
父・市松(小日向文世)の手の平の上で咲くのではなく、娘たちが自らの花を咲かせようとしている。キーワードは「私はお花」だ。

実母から華道家の才を受け継いだもも


宇都宮龍一(千葉雄大)と共に生きる決意をしたななは、月島を離れたいと市松に申し出る。市松は即座にななを破門。ななの決断を知ったももは思い留まらせようとするが、ななの決意は固かった。
「私ね、初めて人を好きになったの。全てを投げ出してもいいと思える程」

月島家に戻ったももは、次期家元と正式に認められた。
ももは風間直人(峯田和伸)を呼び出し、月島流を継ぐことになったと知らせ、別れを告げた。直人がももにフラれたのは今回が初めてではない。でも、直人がこんなにも食い下がるのは初めてだ。

もも 何、じたばたしてるの!? いつもなら「はい、わかりました」って、何なら「生きててくれるだけでいい」って超カッコつけてたくせに!
直人 それは、状況が違いますよ。体感っていうか。それでも……そんなこと言ってても「また、ももさんは連絡くれるに違いない」って、そんな気がしてたから。
でも、今は、なんか“ざわわ、ざわわ!”って。虫もうるさいくらい知らせるんです。「おいおい、これ、二度と会えなくなるぞ」って。

「家元になったら、もう完全に住む世界は違うの」と、食い下がる直人をももは振り切った。ももの視界には家元の道しかない。月島家の使用人・金さん(正司照枝)と銀さん(正司花江)に、ももは実母・千恵子の華道の腕前を尋ねた。

「千恵子様は皆から慕われ尊敬される素晴らしい華道家でした。けど、『これは月島の華道ではない』と、お家元が嫌ったからおやめになったのです」(銀さん)
ももの実母は、市松が嫉妬する程の華道の腕を持っていた。

もも ママはどういう生け花を?
銀さん 「私は」
もも 「お花」

一方の直人は、まだももを引きずっている。そして、日本一周を目指す中学生・堀江宗太(舘秀々輝)が摘み損ねた小高い丘に咲く花を摘みに行こうと思い立つ。
「だって、高嶺の花だよ! それ摘んでプレゼントしたら、きっと……」
“高嶺の花”を摘もうとして、直人は高所から落下した。宗太と異なるのは、落下しながら花に手が届いていたことだ。


運転手・高井雄一(升毅)を通じ、直人が摘んだ“高嶺の花”がももの自宅に届けられた。それを凝視するもも。直人の花はももに響いていた。そこにななが駆け付けた。
「あなた、言ってたね。好きな人がいるほうが勇気が湧くって」
「その思いをまっすぐに、極限まで昇華すればいい!」
「私はお花! 私たちはお花!!」

千恵子が作る生け花は「月島ではない」と市松に否定された。
しかし、皆から慕われた生け花だ。
月島流の次期家元に固執するのではなく、ももはありのままで花を生ければいい。なぜなら、彼女は千恵子から才を受け継いでいるから。ももは、ありのままで天賦がある。即ち「私はお花」。市松の手の平の上でなくとも、自らで花を咲かせられる。
これからの姉妹の生き方が、この言葉には集約されている。ももが月島を離れ、流派を立ち上げるのは自然の流れだった。

月島流とは正反対の道で華道家として花開く


「お家元。これから私が生けるお花は、月島流とは一線を画するものでございます」(もも)

市松は「芸術家は色恋に溺れるな」とももに諭した。月島流の考えだ。ももは違う。花を生けながら、ももは自分の考えを述べた。
「花はただ、その日差しに顔を向けています。一番綺麗な顔を太陽に向けています。喜びに満ちて。ならば、私も花になりましょう。そこに太陽を、あの方を思い浮かべましょう。花が素直に、ただ太陽を向くように、私もあの方に顔を向ければ良いのです。あなたの暖かな日差しに感謝をして、愛と喜びに満ちて」
「太陽」「あの方」が直人を指しているのは明らかだ。

「私はお花。私の花は何の邪気もない、ありのままの私。その求愛にございます」
月島の次期家元に固執していた時と比べ、ももの表情から毒っ気が抜けている。「ありのままの私は求愛にある」という考えは、月島とは正反対である。

ももが生けた花を、市松は審判した。
「これは、月島ではない。見事ではあった」
市松は、ももの新流派立ち上げを認めた。

「ラブ・ミー・テンダー」だった理由


退院した直人の帰りを、ももは自転車屋で待った。店内は月島とは流儀の異なる花で彩られていた。
「月島のお家元はパス! この商店街で新しいお教室を開く」(もも)
「住む世界は違う」と直人を拒否したももが、門戸の広い生け花教室を主宰したのは象徴的だった。

このドラマの主題歌は、「ラブ・ミー・テンダー」。歌詞には「僕の夢は全て叶った」という言葉が頻出する。夢を叶えたのは、恋人が深く愛してくれたからである。
ももも、直人と愛し愛されることで自分の花を咲かせることができた。月島の花ではなく、自分の花を咲かせる道を選んだもも。「色恋に溺れるな」と己を律せず、相手と関わることで道を極める。直人と結ばれることで芸術家として咲く。それら全てを象徴するのは、「私はお花」という言葉である。
(寺西ジャジューカ)

『高嶺の花』
脚本:野島伸司
音楽:エルヴィス・プレスリー「ラブ・ミー・テンダー」
チーフ・プロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松原浩、鈴木亜希乃、渡邉浩仁
演出:大塚恭司、狩山俊輔、岩崎マリエ
※各話、放送後にHuluにて配信中