連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第25週「君といたい!」第145回 9月17日(月)放送より
脚本:北川悦吏子 演出:宇佐川隆史 田中健二
「半分、青い。」145話、鈴愛と律、ふたつの渦が奇跡をつくる
半分、青い。 メモリアルブック (ステラMOOK)

半分、青い。 メモリアルブック

145話はこんな話


そよ風の扇風機の研究に煮詰まった律(佐藤健)だったが、カンちゃん(山崎莉里那)のスケートの話から二枚の羽によって渦を消す方法を閃く。時に2010年10月ーー。


すばらしくよくできた話だと思う。


144話で、壁にぶつけて渦が消えることでめでたしめでたしでいいのではと書いたが、早合点だった。
渦はやっぱり重要で、二重の渦を作ることで理想的な風を作る。つまり、鈴愛と律、ふたつの渦が必要だってことだ。
すばらしくよくできた話である。

研究が暗礁に乗り上げたとき、鈴愛は自分が漫画家を諦めた時のことを思い出すが、あの時の絶望は今はないと言う。
それは律が天才だと信じているからで、その言葉は律を喜ばせる。
大事なことは希望を失わないこと、信じること。
すばらしくよくできた話である。しかも、鈴愛がなにげなく書いた花の絵が二重構造を予言していたという展開も美しい。
この作家は企画書やプロットを書くことの天才だと思う。さすがヒットメーカーだ。


だから、今度こそこれでフィナーレで良いではないか。はい、最終回、最終回、今週で最終回。扇風機が出来上がって、律と鈴愛が最強のパートナーで、もうそれ以上、何を描くことがあろうか。
終わってほしい!(サブタイトルふう)

その証拠に、扇風機の構造の話、開発描写は見る人を選ぶ。興味のない人にはさっぱりわからない。
確かにこういうものづくりを延々描かれたら、視聴者は離れるだろう。
「プロフェッショナル仕事の流儀」や「情熱大陸」やしっかりした構成の日曜劇場などで見るのはいいが、毎朝150回以上見るのは退屈だ(そうじゃない人もいるとは思うが)。
だから、ここまで書かずにいろいろなエピソードで撹拌して、視聴率もキープしてきた。すばらしいやり方だ。

扇風機なのに風通しが悪い


事務所(ザズウ)がしっかりしているのか契約がちゃんとしているのか、なぜか壁と扇風機については、田辺(嶋田久作)の名前を必ず出す鈴愛。いつもだったら、なんでも自分の手柄にするしいろいろ忘れたり他人をぞんざいに扱うというのに。
嶋田久作が豊川悦司と並ぶ名優であるっていうことだろうけれど、名前の大小に限らず登場人物にまんべんなく愛と敬意を注いでほしい!(サブタイトルふう)

とりわけ贔屓を感じるのは、扇風機だ。
【バルミューダ】というメーカーのグリーンファンという扇風機が、鈴愛と律のつくる扇風機の原案になっていることはすでに公になっている。
その企業の代表がタイトルバックにクレジットもされているし、ネット記事などにもなっている。
恵子(小西真奈美)の会社の名前は「グリーングリーングリーン」で、彼女が作りたいのは「グリーンパン」(結局作ったの?)。「グリーンファン」と「グリーンパン」の響きが似ている。こうして原案になった商品名がなんとなく視聴者に刷り込まれていく。

公共放送は特定の企業や商品の宣伝をしないというのが建前であるが、その線引は曖昧だ。
とりわけ、今回は、一企業をモデルやモチーフにしたわけでなく、主人公が最終的に発明する商品の原案として、一企業と商品がピックアップされていて、それが気になる。
むしろ、これを作った人をモチーフにした話のほうがわかりやすい。そうではないのに、急に出てきたこの企業と商品のイメージがアップしていく謎。
CMだとわかったほうが逆に視聴者はその商品を選ぶか選ばないか自分で判断できる。曖昧にされるほうがやばい。
なんだか最近、扇風機の広報ドラマのようにも見えて、心地よい風の話にもかかわらず風通し良く感じられない。
テレビってこわい!(この「い」はサブタイトルふうではない)

涼次が会いたがっとる


光江(キムラ緑子)がカンちゃんをそろそろ涼次(間宮祥太朗)に会わせてあげてくれないかと持ちかけるが、鈴愛は顔を曇らせる。
なんだかんだ言いながら、離婚を切り出されたことは鈴愛を傷つけたままらしい。そういうふうに見えないが、見せないように振る舞っているということなのだろう。
今週、元夫とのわだかまりも解消して、もう最終回でいいではないか。
もうこれ以上、盛り上げなくてもいい、十分、楽しみました。
モーニングサービスにいろいろついてくる名古屋の喫茶店のサービスみたいに感じるのは、東海地区出身の脚本家先生ならではの過剰なサービス精神なのでしょうか。

なんだかんだ書いたが、「渦が壊れる」と閃いた佐藤健の額に手を当てたときのカットは決まっていた。
(木俣冬)