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平田オリザが勝手に寝てしまう〈「演劇1」「演劇2」想田和弘に聞く1〉

2012年10月19日 11時00分 ライター情報:木俣冬

1970年栃木県生まれ。ニューヨーク在住。東京大学卒業後、ニューヨークで映画を学ぶ。07年「選挙」を発表。ベルリン国際映画祭に正式招待される。以後「観察映画」という独自の手法で「精神」「Peace」を撮り、高い評価を得る。ベオグラード国際ドキュメンタリー映画祭グランプリ、東京フィルメックス観客賞、香港国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞、釜山国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞などを受賞している。
著書に「精神病とモザイク」(中央法規出版)「なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか」(講談社現代新書)、最新著書に「演劇VS映画ーードキュメンタリーは「虚構」を映せるか」(岩波書店)。

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今考えれば、あれが最後の灯火だったんですね。すごい皮肉なのは、さっきも申し上げたように89年、風の旅団事件と同じ年に『ソウル市民』が上演され、平田さんの現代口語演劇が完成していたんです」
ーーちょっと運命的ですね。
「ハハハハハハ。平田さんが現代口語演劇を提唱して、『演劇にはメッセージはいらない』とか『日本語には日本語らしい話し方がある』とか言い始めたのと、学生運動がしぼんだのが、同じ89年の駒場だったというのは、個人史的に意味がありますね」
ーー個人史だけでなく広く考えて意味があるような気がしてきます。
「フフフ。その後僕は政治的な活動にはだんだん興味が薄れていって宗教学を専攻し、更には93年、映画を志してニューヨークに渡った。だからアートに初めてきちんと触れたのは、ニューヨークに行ってからなんですね。そして2000年、ニューヨークで平田さんの演劇『東京ノート』と出会って衝撃を受けます。要するに10年越しで、駒場では出会えなかった平田オリザさんと、地球の裏側で出会う準備をしていたようなもので。でも実際に映画の企画が動きはじめたのは2008年で、出会いからまた8年くらい準備期間があった。要するに20年越しですね(笑)」

事実を撮るのにあらかじめ台本を作るってどういうこと?

ーー2008年から平田オリザさんを撮られて4年、ちょうど今、国から演劇の助成が減らされたり、橋下徹氏が文楽や小劇場を批判したり、まさに今、演劇頑張らなきゃっていう時の公開と絶妙なタイミングなんですが(インタビューは8月末だったが、その後、青山円形劇場、青山劇場が閉館というニュースも発表された)。
「でも、それは意図していなかったですよ。なにしろ撮りはじめたのは2008年ですから、今、こういうことになるとは全く予想していませんでした。まあ、いつもそうなのですが、僕の場合は映画を公開する頃に何か起きるんですよね」
ーー優れたクリエーターは未来を読みますからね。
「いえいえ(笑)」
ーー想田さんの撮り方はシナリオを作らないことが特徴とお聞きしましたが、逆にドキュメンタリーというフィクションではないものなのにシナリオを作るものなの?と不思議に思います。
「ああ、そうですよね。僕は93年にアメリカにいって、ニューヨークの美大の映画学科に入って、そこではフィクションの映画をずっと撮っていたんです。卒業後、就職先を探してたまたま見つかったのが、主にNHKのドキュメンタリー番組を作っているアメリカの小さな会社で。

ライター情報

木俣冬

『みんなの朝ドラ』5月17日発売。その他の著書『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、『ケイゾク、SPEC、カイドク』など。

URL:Twitter:@kamitonami

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