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ふすまサイズのド迫力「寺田克也ココ10年展」の衝撃

2013年4月2日 11時00分 ライター情報:とみさわ昭仁

「寺田克也ココ10年展」会期は2013年3月16日から6月30日まで、京都国際マンガミュージアムにて。入場料は、ミュージアムの入館料(大人800円、中高生300円、小学生100円)のみ。会場内は撮影禁止だけど、唯一このドラゴン画だけは撮影可能。

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少し自分の話をさせてほしい。中学校のときの記憶だ。

自分は子供の頃から絵を描くのが好きで、ろくに宿題もせずに好きな漫画の絵を模写してばかりいた。図画工作は何よりも得意で、いつも先生に褒められていた。当然、成績は5段階評価でずっと5だ。算数は1だったけど。

将来は漫画家になりたくて、でも、漫画家になるためには基礎が出来ていなければならない、ということぐらいは算数が1のアタマでもわかっていたので、中学に上がるとすぐに美術部に入った。部活では石膏像のデッサンや静物画を油彩で描いたりしつつ、家では相変わらず好きな漫画の模写に明け暮れていた。

自分は絵がうまいのだから、どんなものでも自在に描けるような気がしていた。

ところが、中学3年になったとき、それが大きな錯覚だと気づかされた。新入部員として入ってきた1年生に、ものすごく絵のうまいやつがいたからだ。

部室の壁に大きな模造紙を貼り、おのおのが好き勝手な絵を描こうということになった。自分は「馬が首を振り上げいなないている様子」の絵を描き、その出来映えに満足した。そりゃそうだ。なぜなら、その絵はずいぶん前に雑誌で見たもので、家で何度も模写してマスターしている構図だったのだから。

けれど、その新入部員は、いきなり見たこともないような絵を描きはじめた。鋭い鉤爪のある筋肉質の両腕を大きくひろげた異形の生物。背中には破れた羽根が生え、それを羽ばたかせて宙に浮いている。いわゆるファンタジーイラストに登場するようなモンスターの絵だ。

なんだこいつは? と思った。そういう絵を見るのが初めてだったわけではないけれど、その新入生が何の手本も横に置かずに、明らかに自分よりうまい絵をマジックペンでぐいぐいと描いていくことに驚かされた。「これ何の絵?」と訊いてみたが、誰かの作品の模写ではなく、いま自分で適当に考えながら描いたものだと言う。描くところを見ていたので、それが嘘ではないことはわかる。ただ驚くしかなかった。悔しいとか妬ましいとかそんな感情よりも、唖然とするだけだった。

結局、自分はそれからすぐに卒業してしまったので、その新入部員とはとくに交流を持つことのないまま別れた。もう顔も名前も覚えていない。だけど、この出来事だけはいまでもときどき思い出す。寺田克也の絵を見ると、あのときの衝撃を思い出すのだ──。

 ※  ※  ※

日本を代表するイラストレーターであり、漫画家としても様々な媒体で活躍する寺田克也の、国内初となる展覧会「寺田克也ココ10年展」を見に行ってきた。

ライター情報

とみさわ昭仁

1961年生まれ。ゲーム開発、映画評論、コレクター研究、古本屋店主、スカジャン制作、DJなど。神保町特殊古書店マニタ書房は、不定休で週のうち半分くらい営業。

URL:akihito tomisawa index

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