2014年2月からスタートしたテゴマスのライブツアー「テゴマスの青春」を収録したDVDが発売された。ライブを終えてから一年が経過。
待望の、待望のDVDリリース。この日を待ってたよ!
音程を探ることなく、迷わず声を発してハモる…感動。手越祐也と増田貴久「テゴマスの青春」レポ
トークもダンスも歌もできるテゴマス。手越は『世界の果てまでイッテQ!』(日テレ日曜よる7時58分~)に、増田は『水曜歌謡祭』(フジ水曜よる7時57分~)に出演中。
「ピアノピース904 青いベンチ by テゴマス」

テゴマスとは、ジャニーズのアイドルグループNEWSの派生ユニットで、メンバーは手越祐也と増田貴久。この二人、実はとても歌が上手い。

手越は伸びやかな高音で美しいビブラートをかける。増田は低すぎない低音で、甘くて優しい歌声が特徴だ。NEWSとの一番の違いは、ダンスパフォーマンスなどの演出を極力抑えていること。
歌に力を入れているのがテゴマスのスタイルだ。

歌手としてのテゴマス


特効と照明を使ってドカーン!と派手に登場するのがジャニーズのコンサートの特徴だが、テゴマスは違う。

『何年経っても色褪せないような大事な大事な一日にしよう』
『もう二度と同じ日はこないから』
ステージ上の巨大スクリーンに映し出された文字に、ナレーションが響き渡るオープニング。ファンの歓声が止まない中、ステージを青く照らす照明と共にピアノ演奏が始まった。

2006年の活動開始から「テゴマスのうた」、「テゴマスのあい」、「テゴマスのまほう」とライブを行ってきた。これまでは動物のキャラクターを立てて、ファンタジーな世界観を演出してきたが、「テゴマスの青春」は、歴代の中で最もシンプルな演出だった。
ステージにはピアノにギター、ドラム、トランペット、サックス、パーカッション……とバンドが生演奏を披露し、衣装もジャニーズ特有のギンギラギンスーツを封印。
手越はTシャツにスパンコールが光るベストと白デニム。増田も黒いパンツにスタッズがついた赤いチェックのシャツとスニーカー。
コンサートのお楽しみの一つであるファンサービスも、歌の合間に笑顔で手を振るくらい。天井から降ってくる銀テープもなかった。通常のコンサートのノリで行くと肩透かしをくらうほど、セットから演出まで驚くほど簡素だ。

二人で目を合わせて微笑みながら歌うときもあれば、血管が浮き出るほどに顔面に力を入れて、顔をくしゃくしゃにして歌う。
NEWSとして活動するときのザ・アイドルを封印して歌に集中する。カッコつけてる場合じゃない、表情からはそんな気迫が伝わってくる。

「テゴマスのみんなのダーリン、てごにゃんだよ~」
「テゴマスのイケメン担当、まっすーだよ」
相変わらずのギャグで笑いをとりつつも、2時間半ほどの中で短いMCを6回ほど挟み、曲や音にまつわるエピソードを披露した。これも通常のコンサートでは見られないところだ。

アリーナでマイクを使わずに歌う!


スタートから8曲を披露したところで二回目のMCへ。ここで着席を促した。
「起立!礼!着席!」と増田の号令にすんなり従うファン。「良い生徒をお持ちになりましたね~」と手越。笑いに包まれた会場だが、ここからがすごい。

テゴマスの二人も着席し、まずペンライトを消すように指示される。ステージにはテゴマスとギターとキーボードの4人だけ。「声を大切にしたい」と、音も最小限にとどめ、1万5千人が入る横浜アリーナでマイクなしで歌うことを告げた。

「ハートで届けます」と相変わらずの手越節に、増田も負けじと「俺は手越より声がでかい!」と直前までふざけあう二人。しかしギターのリードで『青いベンチ』がはじまると表情を引き締めた。音程を探ることなく、迷わず声を発してハモる。サビに入る直前で顔を見合わせたり、足でリズムをとったりしながらアカペラで歌い上げた。気の合う仲間同士だってこうはいかない。

しかもここはホールではなくアリーナ。
広い会場となれば声量だって必要だ。しかしコンサート直後のツイッターでは、「後ろの席でもちゃんと聞こえた!」というツイートがたくさん流れてきた。

ステージにジャニーズのアイドルがいるとは思えないほど、シンと静まり返った会場。二人が歌い終えると会場からはものすごい拍手の音。ファンも黄色い声援を封印して、感動を拍手で伝えた。歌詞の内容もさることながら、二人の声量や懸命に歌う姿に圧倒されて涙が出た。音楽ってこんなにシンプルに楽しめるものだったのか。

14曲目『innocence』では、テゴマスバンドのソロ演奏が披露された。感情を込めてギターをかき鳴らすギタリストに、鍵盤をなでるようにして弾くピアニストなど、素人目にみてもベテラン奏者たちが集まっていることがわかった。楽器一つ一つが奏でる音にテゴマスの歌声が重なって形になる。生演奏って贅沢なことなんだ!

猫をテーマにしたアップテンポの『猫中毒』では、テゴマスとバンドのメンバーが猫耳をつけて、ステップを踏みながら演奏したり、18曲目『キッス〜帰り道のラブソング〜』ではテゴマスの代わって観客が大合唱したり。2時間半ほどの中で泣いたり笑ったりと、音楽を通して色んな感情を味わった。

NEWSのメンバー、加藤シゲアキのインタビュー記事にこんなエピソードがある。当時NEWSのメンバーだった山下智久と錦戸亮の脱退が決まり、NEWS自体も存続の危機に晒された過去がある。加藤は4人でもやれると思いきや、事務所の判断は厳しかったという。
「テゴマスはひとつ世界が確立されてる。リスクを冒して柱が抜けたNEWSを続けるより、完成しているテゴマスだけ続けるほうが合理的だって」(Myojyo7月号/集英社より抜粋)
結果的に4人で再スタートを切ったNEWSは、東京ドーム公演を行うまでに人気を盛り返すのだが、逆に言えばテゴマスはそれほど確立しているユニットということでもある。

NEWSとしてソロとしての活動があるなかで、合間をぬうように活動を続けるテゴマス。頻繁にCDをリリースするわけではないからこそ、いつも新鮮に映る。
着席でも楽しめるジャニーズのコンサート。これから先、年齢を重ねてもずっと楽しむことができそうだ。
(柚月裕実)