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どうして日本のマスコミは右傾化する相撲協会の女性差別に甘いのか?

2018年4月16日 13時30分

ライター情報:勝部元気

画像はイメージ

日馬富士による暴行事件、八百長問題、貴乃花親方の解任騒動等、不祥事だらけの日本相撲協会が、今後は女性差別問題で不祥事を連発していることが大きな話題になっているかと思います。

2018年4月4日に、大相撲春巡業「舞鶴場所」の土俵上で挨拶をしていた舞鶴市長がくも膜下出血で突然倒れた際、呆然と立ち尽くしていた男性の関係者を掻き分けて、応急処置を行っていた女性看護師に対して、相撲協会の行司が「女性の方は土俵から降りてください」とアナウンスしたことを世界中のメディアが報じ、大きな波紋を呼びました。

また、2017年10月12日に国技館で行われたイベントで、土俵に見立てたステージの上にフェラーリを展示していたことが発覚。「女性はダメで車はオーケーなのか」「相撲協会は女性を鉄の塊以下の存在と捉えているのか」と、インターネット上で大きな批判を呼びました。

さらに、 4月8日に行われた「富士山静岡場所」では、力士が土俵上で子どもの稽古を行う「ちびっこ相撲」に、前年まで参加を許可されていた小学生の女児が参加できなかったことが報じられ、再び大炎上しました。

報道によると、今年3月に巡業部長(春日野親方)名で「年齢にかかわらず女性を土俵に上げないように」との通達が出され、舞鶴の件が起こった4日にも協会の荒磯親方から静岡場所の実行委員会に電話があり、ちびっこ相撲に女児を参加させないよう要請されたとのことです。さらに静岡に限らず、女児の排除は各地で起こっており、全国規模で行われています。

ここにきて執拗に女性排除を始める方針を徹底し始めた日本相撲協会は、右傾化が進んでいるとしか思えません。

「伝統と人命」の優先順位の問題ではない


ところが、これらの問題に対して、海外のメディアは明確な女性差別だと指摘しているにもかかわらず、日本のテレビのコメンテーターたちの口からは、土俵に上げないことは女性差別で、女人禁制自体が問題だという指摘はほとんど聞こえてきません。女性キャスターですら、「伝統とのバランスは難しい問題ですね」のように、女性差別を行う相撲協会の肩を一部持つような発言すら多々見られます。

彼らは一様に「人命を守ることより伝統を守ることを優先させたことは問題だ」と、まるで優先順位の問題だという指摘をしていましたが、人命がかかっていなければ女人禁制という女性差別の因習を引き継いでも良いのでしょうか? 実に人権を理解していない人の発想かつ、人が死ぬようなトラブルさえ起こらなければ既存の価値観に踏み込むことには消極的という「事なかれ主義」だと思います。

仮に人命優先だとしても、それで全てがうまくいくはずがありません。たとえば、再発防止のために男性の医師を常駐させるという対策を考えているようですが、たまたまその場に観客として居合わせた女性医師のほうが常駐している男性医師よりもスペシャリストだった場合でも、女性は土俵に上がらないようにすべきなのでしょうか? 大規模な災害が発生した際、土俵の上から適切な陣頭指揮を行う能力に秀でた女性政治家がいたとしても、その能力に劣る男性が担うべきなのでしょうか?

結局、差別を残す限り、人命が脅かされるリスクは差別が無い状態よりも必ず高くなります。能力ではなく性別でルールを決めているのだから当然です。そもそも男性だけであらゆるトラブルや災害に対処できると思っている、その発想自体が傲慢な女性差別に他なりません。

差別の言葉を子供たちに向けられますか?


また、コメンテーターたちは、ちびっこ相撲の件に関しても、「たとえ伝統でも、子供たちの楽しみを奪うのはダメだ」と言っていました。でも女児を女人禁制の例外扱いにしても、結局大人になったら原則が適応されるわけで、子供たちに「幼い頃だけは認めてあげる理由」をどう説明するのでしょうか? 「なぜならあなたは女性だから」という差別の言葉の矛先を子供たちに向けられるのでしょうか?

「男性と女性では体格が違うから実力的に女性が入る余地は無い。だから女児の時だけ認めるのでも問題無い」という反論が聞こえてきそうですが、「相撲が大好きで、将来プレイヤーとしては難しくても、相撲に関わりたいから行司になりたい」という思いを掲げる女児がいて、「その職業に就くことは諦めろ、なぜならあなたは女性だから」と差別の言葉の矛先を子供たちに向けられるのでしょうか?

行司になれるほどの能力が無いのなら納得できるかもしれないですが、性別を理由にされて納得できるはずがありません。行司になりたい能力のある女性が実際にまだ出て来ていないだけで、女人禁制による女性行司の禁止は、憲法で保障された職業選択の自由を侵害するものであり、男女雇用機会均等法違反にするべき事案だと思います。

ライター情報: 勝部元気

株式会社リプロエージェント代表取締役社長。社会派コラムニスト。1983年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。専門はジェンダー論や現代社会論等。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。著書『恋愛氷河期』(扶桑社)。所有する資格数は66個。