「イクメン」を死語にしよう!褒め言葉である限り男は最低限しか育児をしない
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子供ができ、育児をしているうちに強烈に違和感を覚え始めた言葉がある。それが「イクメン」だ。
育児するだけで「イクメン」。うちは共働きなのに、妻は「母親」、僕は「父親」ではなく「イクメン」らしい。時間の都合上、育児の負担は妻のほうが大きい。なのに、僕だけが褒められているのだ。

イクメンと呼ばれて調子に乗っていると…


「あら、休日なのに子供と遊ぶなんてイクメンですねぇ〜」

こんなことを妻と一緒にいる時に言われると本当に困る。

「なんで旦那ばっかり褒められてるの? 私なんて、早く起きて、ご飯作って、着替えさせて、洗濯して、保育園関係の雑務も全てこなしてるのに! たかが、風呂入れて遊んでるだけの奴が褒められて、私は当たり前のように扱われているのは絶対おかしい!」

妻が頭の中でこんな風に僕を罵倒していても全然おかしくない。というか、立場が逆だったら僕なら絶対そう思っている。
つまり、僕が「イクメン」と褒められるたびに、妻が少しずつ僕を嫌いになっていっていると言っても過言ではないのだ。イクメン、なんて怖い言葉なのだろう。

イクメンが育児を不平等にする


イクメンという言葉に“褒める”ニュアンスが含まれている限り、男は調子に乗ってしまう可能性を秘めている。当然やるべきことではなく、やったら褒められること。「風呂に入れてるんだから俺はイクメンだ」「休日子供の相手をしているのだからイクメンだ」こんな風に男が思ってしまったら……。

ちょっと奥さんに「テレビばっかり見てないで子供のオムツ替えてよ」なんて言われたら

「なにおう! こんなにイクメンな俺に何を言う! こっちは風呂に入れてやってるのにまだ足りないか!」

と、自らの正義を振りかざしてしまうかもしれない。ここまで思うのは極端だとしても、イクメンという錦の御旗はいつのまにか育児を奥さんのものにし、それを“手伝う”俺偉いという思考を形成してしまう。
奥さんが自分よりも育児をこなしているにもかかわらず、だ。上記のような言葉は、口にしなかったとしても必ずいつか態度に出してしまい、奥さんに嫌われてしまうだろう。「育児は平等」この言葉を、しっかり頭に叩き込んでおく必要がある。

イクメンを死語にしよう


そもそもイクメンとは、家事や育児を女性まかせにしていた社会にあぐらをかき、余りにも育児をしない日本男児に何とかして育児をさせようと生まれた言葉。共働き率が6割を越える現代で、いまだに育児は女性のものと思っている男には必要な言葉かもしれないが、これまで述べてきたように弊害も大きい。「イクメン」は死語にしてもいいのではないだろうか。


この言葉が褒め言葉である限り、男が女性と対等に育児に対して向き合う世の中は絶対にこない。「母親」という言葉には、「育児をする」という意味合いが含まれている。そろそろ「父親」という言葉にも、その意味が含まれても良い頃合いなのではないだろうか。

「うちは嫁が専業主婦だから、育児を手伝う俺はイクメンだぜ!」

と、思っている諸兄。すごく気持ちはわかるのだが、数ヶ月間専業主夫をやった僕から言わせてもらえると、家事をしながら家で小さい子供の面倒をずっと見ているのは、仕事なんかより何倍も辛いのだよ。僕はただ、それが伝えたいだけだ。


(沢野奈津夫@HEW)