今年こそ、史上初の4割打者誕生かーー?

日本ハム・近藤健介が、パ・リーグ打率部門のトップをまたも独走している。まだわずか16試合(4月18日時点、以下同)とはいえ、打率4割をキープ。
出塁率はなんと5割以上という驚異的な数字だ。

「またも」というのは、ヘルニアの手術のため6月下旬に離脱するまで打率4割をキープしていた昨季のことがあるから。規定打席不足で公式記録としてのシーズン打率4割は幻となったが、昨季からずっと打ちまくっているのだ。

だが、パ・リーグ某球団のスコアラーが言う。

「今季は決して状態がいいとは思えません。スイングのシャープさも力強さも昨季のほうが上だった」

つまり、絶好調じゃないのに打率4割超え!?

「調子が良くない分、丁寧に打席でボールを見極めている感じ。
ムリせず四球を選ぶという姿勢が結果につながっているんでしょう」(スコアラー)

そう、近藤の高打率を語る上で欠かせないのが、圧倒的な四球の多さなのだ。

近藤が昨季のペースのままフルシーズン出場したとすると、単純計算で安打は173本。西武・秋山翔吾の日本記録216本(2015年、打率.359)や、イチローの日本時代の最多安打210本(1994年、打率.385)には遠く及ばない。

では、なぜ近藤の打率が4割を超えていたかといえば、1試合1個を超えるペースで四球を選んでいたからだ。打率は「安打÷打数」で算出されるため、打数にカウントされない四球が増えれば、安打が少なくても打率は上がる。

ちなみに昨季の近藤の四球数をフルシーズンに換算すると150個で、1974年に巨人・王貞治(現ソフトバンク会長)が記録した158個に次ぐ歴代2位の数字。
勝負を避けられがちなホームラン打者ならまだしも、中距離ヒッターとしては異常なペースだ。



今季も16試合で16個の四球を選んでいる近藤。「ヒットを捨てていいと言われたら、いつでも四球を選ぶ自信がある」と言い切る選球眼の秘密はどこにあるのか?

名打撃コーチとして知られる野球評論家の伊勢孝夫氏はこう分析する。

「近藤は他の打者と比べ、ボールを手元まで引きつけてからでも、内角球にも詰まらず逆方向を含めて広角に打てる技術がある。だから高打率を残せるし、おのずとボールの見極めもできるんです」

その好例が4月5日の楽天戦。内野安打1本と四球4個(しかも、その4打席で一度もバットを振らず)で全打席出塁し、5回打席に立っても打率算出の分母となる打数は「1」しか増えなかった。


もし近藤がこのままケガなくプレーし続けたら、シーズン4割もありえるのか? 伊勢氏は「まだ10試合ちょっとだから」と苦笑しつつも、こう条件を挙げてくれた。

「オールスターの時期まで打率3割7分以上でいければ、シーズン打率4割も現実味を帯びる。そのためにはホームランを捨て、徹底して出塁に集中すること。強振して遠くに飛ばそうとするとボール球にも手を出すようになり、四球が減ります。

それとチーム状況も関係してくるでしょう。後ろを打つ中田翔やレアードが好調だと、相手投手は近藤と勝負してくるため打率を下げるリスクが増える。
一方、後ろの調子が悪ければ、自然と相手は近藤と無理して勝負しなくなりますから、四球が増えます」

チームの主軸の不調が4割への条件!? なんとも皮肉な話だが、ともあれ近藤の数字から日々、目が離せない。

(写真/時事通信社)

元の記事を読む