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もしレイプ被害にあったら…伊藤詩織さんに聞く、せめて知っておきたいこと

2017年11月26日 08時45分

 もし、あなたや、家族・友人が性暴力の被害にあってしまったら?まずどこに行って、何をすればいいのかーー? 

 レイプ被害を受けたというジャーナリスト・伊藤詩織さん(28)も、ショックで途方に暮れ、どうすべきか誰も教えてくれなかったといいます。

 詩織さんは2015年4月3日、当時TBSワシントン局長だった山口敬之氏と会食。突然意識を失い、レイプ被害にあったとして、警察に届け出ます。捜査の結果、逮捕状が出されましたが、当日になって刑事部長(当時)の判断で執行停止に。

 山口氏は、一貫して「法に触れることはしていない」と主張しており、今年9月「嫌疑不十分」で不起訴が確定。詩織さんは、真相を明らかにするために民事訴訟を起こし、ノンフィクション『Black Box』を上梓しました。

 そこで、ジャーナリストの草薙厚子さんが詩織さんにインタビュー。詩織さんが告発した理由や山口氏からの反論について取り上げた前編に続き、後編をお届けします。

 

◆訴訟で明らかにしたいこととは

草薙:9月に民事訴訟を起こされましたね。山口氏に対する1000万円の損害賠償請求ということですが、何を明らかにしたいのでしょうか?

伊藤:刑事事件として「何がどうなって不起訴になったのか」について、検察から全く教えていただけないんです。嫌疑不十分ということしか聞いていないので、何が不十分で、何が問題だったのかを知りたくて。

 民事訴訟にすれば、少しはオープンに話し合うことができるのではないかと思います。

 

 あと、ホテルの防犯カメラの動画や、私がホテルの部屋のあちこちに「ゲロを吐いた」などと山口氏が指摘していることが事実かどうかなど、私がもっと取材をしたかったけれど回答が得られなかった部分について、裁判所命令としてオープンにできるのではないかと思っています。

草薙:山口氏本人は受けて出てくるのですかね。

伊藤:どうなんでしょうか。ご本人がいらっしゃらなくても、弁護士の方が代理できるので、それはわからないです。

◆スウェーデンの「レイプ緊急センター」のような駆け込み寺を

草薙:日本の制度とか警察の対応も含めて、性犯罪被害者に対して冷酷ですよね。まず、ここだけは早く改善して欲しい、という点は?

伊藤:まず、被害にあってしまったらどこに行けばいいか、ということを明確にしなければならないと思います。日本では、レイプキットで検査してくれるところって、病院の救急外来しかないんです。

(※編集部注:レイプキット=加害者の体液を採取してDNA検査をしたり、血液・尿検査で薬物を飲まされていないか調べるなど、証拠保全をする検査一式)

 とはいえ、実際に行って検査を受けるのはすごく勇気がいるし、私の場合は、どこに行って何をしたらいいのか、それすらわからなかったんですね。

 妊娠の恐怖から、翌日にモーニングアフターピルをもらうために産婦人科に行ってしまった。これは失敗でした。でも、本当は産婦人科にも簡単な問診票やレイプキットを置くべきだと思います。

 また、事件翌日に性暴力被害者を支援するNPOに電話をして、どの病院でどんな検査をすればいいか相談したんです。すると「面接に来てください、それからでないと情報提供はできない」と言われました。

 ひどくダメージを受けている時に、電車を使って1人で面接に行くことなんてできないし、その間でさえも、刻々と検査ができる限られた時間は過ぎて行ってしまうのです。

 スウェーデンには「レイプ緊急センター」があって、私も取材に行きました。日本では、そういうセンターが機能していないんです。まずはそういう検査や治療を受けられる病院の情報をきちんと流したり、ワンストップクライシスセンターを作っていかないといけないと思うんです。

草薙:警察とか病院って、男性社会ですからね。女性で専門の人は少ないと聞きますよね。

伊藤:知り合いや信頼している人にそういうことをされても、“急にあの人が犯罪者になるわけはない”と思ってすごく混乱するんですね。それは自然なことです。

 あのレディーガガさんでさえも、レイプされたことを7年間誰にも言えなかったと明かしていましたよね。性暴力がどれぐらい人を黙らせてしまうのかということです。

 被害にあったら「何も話さなくてもいいから、まずここにきて治療を受けてください」というところさえあれば、「あの時、検査もしなかったし、警察にすぐに行かなかったから」と、後になって自分を責めることもなくなると思います。

◆もし被害にあったら、すぐ病院の救急外来へ

草薙:もし今の日本でレイプ被害にあってしまったら、まず何をすべきでしょうか

伊藤:現状では、まずは病院の救急外来に行って、レイプキットで検査を受けることだと思います。

草薙:警察にすぐ駆け込んでも役に立たないっていうことでしょうかね。

伊藤:そういう場合もあります。

 15年前の話なんですが、オーストラリア人の女性が、日本で米軍兵士にレイプされたんですね。ところが日本の警察に行ったら、13時間ぐらい拘束されてしまった。

 彼女はレイプキットのことも知っていたし、飲み物に薬物が入っていたんじゃないかと疑って、病院で尿検査をしたいと言ったんです。でも、警察は彼女を病院に連れて行かなかった。

 やはり捜査員の方々は男性が多いので、どう対応したらいいのかわからず、病院や検査に繋げられないということもあると思います。

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 詩織さんも、お酒に何らかの薬物(デート・レイプ・ドラッグ)を入れられたことを疑いましたが、24時間以内に血液検査すべきという知識がなく、確証は得られませんでした。

 一方、山口氏は「薬物など入れてない、詩織さんが酒を飲みすぎただけの『アルコール性健忘』だ」と主張。我々には真相はわかりません。

 ただし、山口氏が言う「デート・レイプ・ドラッグという違法薬物はインターネットでしか買えない、買った証拠がない」というのは大間違い。デート・レイプ・ドラッグは“使い方”の総称にすぎず、「睡眠導入剤」など普通に手に入るものも含まれます。

 最近の事件報道を見ると、睡眠導入剤が使われるケースが増えているように思います。万が一、それを入れられて、意識がないままレイプされてしまった場合、結局は同意しなかったことを被害者が証明しなければならないのです。

 他人事ではない、性暴力の問題。今後、民事訴訟の動向をしっかりと見守っていきたいと思います。

<TEXT/ジャーナリスト・草薙厚子、女子SPA!編集部 Photo/我妻慶一

注: この記事は配信日から2週間以上経過した記事です。記事内容が現在の状況と異なる場合もありますのでご了承ください。

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