ともに90代と大変な高齢であったアメリカ合衆国第41代大統領ジョージ・H・W・ブッシュ氏夫妻。しかしバーバラ夫人が米国の4月17日に他界した。
「これ以上の医療はもう望まない。緩和ケアに集中する」と発表してわずか数日の逝去であった。
ファーストレディとして夫を支えるようになった1989年から、バーバラ夫人は「識字や教育の充実が貧困問題を解決する」とさまざまな活動を展開しており、この大統領夫妻を信頼し、愛してきた多くの米国民が深い悲しみに包まれている。そんななかで世界各地のメディアが報じ始めたのが、若き日のブッシュ氏が婚約したばかりのバーバラさんに愛情を込めて綴ったラブレターの話題。こちらの頬が紅潮してしまうほど情熱的なものであったようだ。

17歳(メディアにより18歳とも)の時のクリスマス・ダンスパーティで、バーバラ・ピアースさんという素敵な女性に出会った“パパ・ブッシュ”ことジョージ・H・W・ブッシュ氏
ワルツを一緒に踊ったことから彼女を強く意識するようになり、交際をスタートさせた。そして第二次世界大戦中、海軍で航空母艦サン・ジャシント(USS San Jacinto)の飛行部隊に属し、砲術将校副主任を任命された若きブッシュ氏は1943年12月12日、4か月ほど前に婚約したバーバラさんに狂おしいほどの強い想いでラブレターをしたためていたようだ。“‘My darling Bar,”という呼びかけで始まり、“All my love darling ―Poppy(ポピーは当時のブッシュ氏のニックネーム)”で終わるラブレターの特に情熱的な部分をご紹介してみたい。

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“僕の大切な人、僕はすべての心を込めてあなたを愛しています。そしてあなたも僕を愛してくれている、そう感じることが僕の人生に生きる意味を与えてくれています。あなたと一緒になれることに僕は計り知れない喜びを見出しています。
子供が生まれたら、その子たちはあなたのような素晴らしい女性を母親に持つのです。なんと幸運なことでしょう。僕はそんなことを度々考えてきました。”

“水曜日には航空母艦の就役式があります。あなたもどうかご出席下さい。明日には母にも電話で連絡するつもりですが、たくさんの同僚が両親や奥さんを呼んでいるし、欠席される方も多いようです。
ミセス・ブッシュと名乗って下さってもかまいません。招待状を失くしたと言って名前だけ告げれば、リストから探し出して中に通してくれるはずです。あなたが来てくれたら僕はどれほど誇らしいことか…。”

“日ごと僕たちの出港が近づいてきています。大きな目標に向かって出港する日を私は長いこと楽しみにしていました。でもBar、あなたはそんな私の心を変えてしまいました。
それでも「僕は海に出たくありません」と口にすることは許されません。しかもそれはきっと嘘にもなります。僕たちには倒すべき敵がおり、それに向かって長いこと訓練を続けてきたのです。大事な任務を背負って僕は海に出ますが、冒険心などはなく、任務が早く終わるようひたすら祈っています。”

“おやすみなさい、美しい人。何度でも言ってきましたが、あなたの美しさは僕を悩殺するほどです。
美しい人…そろそろこの言葉をあなたも受け入れてください。木曜日には休みが取れますように。まだチャンスはあるようです。”

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以上、抜粋でお伝えしてみた。2人が結婚したのは1945年のことで、ブッシュ氏が期待した通り夫妻はジョージ・W・ブッシュ(第43代大統領)、ポーリン・ロビンソン・ブッシュ、ジェブ・ブッシュ、ニール・ブッシュ、マーヴィン・P・ブッシュ、ドロシー・コックさんと多くの子に恵まれた。孫やひ孫をもそれは可愛がってきたバーバラさんについて、ファミリーの誰もが「これほど素晴らしい母、祖母を持った私たちは実に幸せです」と異口同音に語りながらその死を悼んでいる。
そんな素晴らしい妻を亡くしたブッシュ氏がどれほど気落ちしているかは想像に難くない。

「歯の浮くようなキザなセリフ」という言葉があるが、昔の男性はこんなにも熱心に、純粋に愛の言葉を伝えていたのかと驚くばかりである。テクノロジーが発展して男女間の電話やメッセージのやりとりはいつでも、どこでも、気軽に、簡単になり、手紙にロマンチックな感情や愛情を込める男女など滅多に出会えなくなった。しかし真に情熱的な気持ちや愛情を捧げたい相手がいるのなら、時にはきれいな便箋とペンを取るのも良いもの。このラブレターの話題には「感激で涙が出てしまった」「古典的で上品な愛の形に深く感動」といった声が続出しているようだ。

画像は『NCB 5 Dallas-Fort Worth 2017年2月15日付「Read George H.W. Bush’s 1943 Love Letter to ‘My Darling Bar’」(George H.W. Bush Library and Museum)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)